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SS アデルとドラゴン少女 1/4 アデルシリーズ

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あらすじ
転生者で無敵の魔王の俺は、同じ転生者の冒険者のアイラに負ける。彼女に復讐を誓うが、召使いとして暮らしている間に彼女を害する事が出来なくなる。召使いとして一緒に暮らす俺は子供の姿で周囲を騙している。

ナツキはガリガリに痩せていた「ご飯・・・」誰も居ない部屋でつぶやくが、この部屋には何も食べるものがない、起きる気力も無い。足は痩せ細り立つ事もできない。ぼんやりと汚い天井を見ている、「おなかいっぱい食べたいな」ナツキは目をつむるとおいしい食事の夢を見た。「ハンバーグと卵焼きとオムライスはおいしいね、おかあさん」母親の顔をもう忘れていた。薄らぐ意識のままナツキは眠る、そしてほこり臭い部屋の中で静かに息をしなくなる。

ナツキが気がつくと広い草原に居た体が軽い。体に違和感がある。手足が太いし、手足を地面につけている。無理にでも立つ事は出来るが、尻尾で体を支える事になる。尻尾?首を後ろに向けると、びっくりする位に背後が見えた。黒く太い尻尾が長く伸びている。手を見ると巨大なかぎ爪が生えている。爪が長くて汚いので爪切りで切りたくなる。「おかあさん?」つぶやくが誰も居ない。ナツキは体を水平に戻すと、背中にある翼を動かせる事に気がつく。翼で飛べるらしい。ナツキは空に向かって体を浮かせる。自由に飛べる感覚は最高だ。「おなかすいたな」ナツキは食べ物を探しに飛び立つ。全身が黒く巨大なドラゴンが王都に向かう。

「アデル、ちょっと付き合って」いつものように小間使いとして雑務をしているとアイラが呼んでいる。また買い物だろうか?王都の店で買うのはいいけど荷物を持たされる、まぁ力はあるから問題ないが、量が多い。「無駄遣いですか?」俺はつい父親みたいな感覚でアイラに接する。「貯金とかしましょう、老後どうするのですか」年金問題は大変だ、金がなくなればこの時代なら即座に飢えると思える。「王様から相談があるらしいの」ああ、あの腹が出ている小役人みたいな王様か。「それに私は、貴族だからずっとお金が貰えるわ」くそおおおお、上級国民はいいな、いや正真正銘の貴族だった、どうせこの館も提供されて無税だろ。どんだけ優遇されているのだ。勇者だから当然だ。どんな武器でも彼女は作り出すことができる。一人核兵器みたいなもんだ(不謹慎)。

俺は行きたくない、王様とは数回あったが無能なのか、仕事をアイラに丸投げしていた。どうせ今回も難題なのだろう。「ええ!アイラさんだけじゃだめなんですか?」アイラは俺の顔をじっと見ると「命令よ」何この娘、怖いんですが?俺が魔王なのを、もしかして王様に告げ口して退治するつもりじゃないのか?疑心暗鬼になる。「あ!はい……」アイラは満足そうに俺を見ると、手をつなぐ。逃がさないとばかりにきゅっと握ると引っ張り始めた。

俺はしぶしぶついていくと馬車に乗せられる。ガラガラと乗りごごちが悪い。道路の整備が適当なのか、がたんがたんと揺れる。俺は乗り物酔いがあるので、なるべく外を見るようにしている。アイラはずっと手を握ったままだ。そんな事をしなくても俺はアイラを裏切るつもりは無い。もしかしたらこの娘は心のどこかで信頼をしてないのか?とも思える。逃げてしまうと思ってるのかもしれない。俺が魔王に戻れば、また敵対関係だ。殺し合いになるだろう。実際は俺は前回は勝てなかった。アイラと今この瞬間で戦ったとしても、俺の勝率は三割も無い。「アデル」「なんですか」俺はアイラの顔を見る。「いつまで続くかな……」アイラは何を心配しているのかは俺には判らなかった。

「おお勇者よ、遅かったな、王都が危機だ」でっかい玉座に、ちんまりとした王様が座っている。雰囲気としては童話に出てくるような王様にも見える。顔は優しげだが村役人みたいな雰囲気もある。とにかく頼りない。アイラが「何がありましたか?」「どうも村が魔物に襲われているのだ」その話は聞いてない。魔物の残党がまた暴れているなら警備隊がまず対応して、それでもダメならアイラに助けを求めている。もちろん俺にも情報が来るので、アイラに代わって対応する場合もある。この世界の神様から「魔物との共存」を頼まれているので、魔王の俺も魔物が暴れる理由を聞いて無駄なら討伐しているが、金は貰ってない。手柄は全てアイラの手柄としてカウントされている。

アイラが「どのような魔物ですか?」王は恐ろしそうに両手を握ると「龍じゃ」と天を仰ぐ。ドラゴン族が暴れている?彼らはそんな事はするのか?、長命と知恵を持つ彼らは、よほどの事が無い限りは、人間と敵対はしない。戦っても利益もない。「判りました、まかせてください」アイラは大きな胸に手をあてると深々と頭を下げる、ついでに俺も下げる。王の城から出るとアイラが「ドラゴンってどんな感じ?」と聞いてくる。「うーん、どうなんだろ、基本は一匹ずつかなぁ、ドラゴン同士で干渉する事もないな」「群れないんだ?」アイラは不思議そうに聞いてくる。「そうだな、単体で力があるからな、群れるにしても統率力のあるボスが必要になるなぁ」アイラは考えながら「ボスのドラゴンとか居ないんだ」

「居ない事はないよ、古龍はいるから知恵が必要な時には、彼に話を聞く、くらいかな?」たしかまだ生きてるとか思う。歳食ってるのでかなり頑固だが、バランス感覚はあるので、極端な行動はしない。保守的なのは仕方が無い。「そのドラゴンに・・」アイラが話している最中に、なにか頭の上に影を感じる、旅客機?と思った瞬間に王の城に黒い巨大なドランゴンが降り立つ。轟音と共に城壁が崩れる。黒いドラゴンは俺たちを見ると咆哮する。アイラは手に巨大な筒のようなものを生み出す。「ザクバズーカ」アイラは叫ぶと発射をする。人間サイズじゃない武器を操るアイラは、重力すら制御しているのか、全ての弾を連続発射した。弾がドラゴンに命中するかと思ったら、ドラゴンの体に当たらない。すべてあさっての方向に飛ぶ。ドラゴンもバリア?を使うらしい。「おなかすいた!」ドラゴンが人間の言葉をしゃべると、王城の中で暴れ回り始めた。

続く


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