見出し画像

ATRI -My Dear Moments- 読了

夏休み一発目、ノベルゲレビューのお時間でございます。
つい一ヵ月前くらいに発売した出来立てほやほやゲーム。
アニプレックスが立ち上げた新ノベルゲームブランドとして立ち上げられたANIPLEX.EXEより、処女作として送り出された二作のうちの片方です。
全年齢向けで、スタッフにはグリザイアシリーズやジブリールシリーズのFrontWingと、素晴らしき日々やサクラノ詩(オットセイ4大エロゲの一つ)のケロQ/枕とかいうトンデモつよつよタッグで製作されております。
シナリオに紺野アスタ氏、原画とキャラデザに基4氏、アートディレクターにSCA-自氏、音楽に松本文紀氏と錚々たるメンツです。
もうこの時点で業界ファンなら注目しない理由がない。

それでも抜け目ないオタクが私オットセイ。
HPとPVの時点でキャラデザバッカよくて雰囲気の良さがバチバチに伝わってきても、インターネッツに評価が出回るまではまさに地蔵の如し。
発売直後に飛びついて買ったりはしません。
が。
このゲーム2000円なんですって…
買いました。
まさかこれだけの制作陣を構えてロープライスとはね。

画像1

あとこの発売記念イラストのアトリに完全に心持ってしまったので。
最高に美しいですこのイラスト。CGにも同じことが言えますが塗りが凄く好き。
何かしら商品化してくださいお願いします買いますんで。飾りたい。


てことであらすじをドン。

原因不明の海面上昇によって、地表の多くが海に沈んだ近未来。 幼い頃の事故によって片足を失った少年・斑鳩夏生は、都市での暮らしに見切りを付け、海辺の田舎町へと移り住んだ。
身よりのない彼に遺されたのは、海洋地質学者だった祖母の船と潜水艇、そして借金。夏生は“失った未来”を取り戻すため、謎の借金取り・キャサリンと共に、祖母の遺産が眠るという海底の倉庫を目指して潜る。
そこで見つけたのは、棺のような装置の中で眠る不思議な少女――アトリ。彼女は、人間と見紛うほどに精巧で感情豊かなロボットだった。海底からサルベージされたアトリは言う。
「マスターが残した最後の命令を果たしたいんです。それまで、わたしが夏生さんの足になります!」海に沈みゆく穏やかな町で、少年とロボットの少女の、忘れられない夏が始まる――。

海面上昇によって滅茶苦茶になった世界で、義足の少年とヒューマノイドが恋する物語でごぜーます。
世界観が世界観なだけに、海や空や水の描写が多く、一面の青・青・青です。
それとパンクまではいきませんが荒廃した世界観なので、廃墟っぽい建物もよく見受けられます。
ロープライスのボリュームでどんな夏を楽しませてくれるのでしょうか。
以下感想ネタバレ注意です。













このゲームの感想を一言で表しますと。
「超ハイクオリティのお手軽雰囲気ゲー」です。
立ち絵、CG、音楽、声優、どれをとっても1級品の素材。
それらの最高の素材たちを更に昇華させるような激熱な展開だったり泣けるようなシナリオの厚みはロープライスなのでありませんが、最高の素材の味を消さず残したまま調和させるようなお話だったと思います。
特にCGとキャラクターには目立つ良さがあって、美しい景観の中魅力的なキャラがクラスその世界は輝いて見えます。

海面上昇により荒廃が進んでいく地球と言いう設定でありながら、今すぐ隕石が落ちるとか地面が割れるとかではなくて。
町には諦めながらも極端に陰鬱な感情はなく、老人が余生をゆっくり過ごしているかのような世界。
海面上昇という人間ではどうにもできないゆるかな滅亡ですから、未来の話でありながら文明も少し後退して田舎の平成初期の雰囲気を感じます。

孤島にある美しく表現された青い空と青い海、そしてその二つに囲まれた廃墟。
そんな環境で育った子供たちは朗らかでまっすぐで悪意がなくて、そこに混ざる片足を失った主人公と近未来の象徴である美少女ヒューマノイドというギャップもまたヨシ。
とにかく優しさに溢れた美しい田舎の雰囲気に心を洗われました。
プレイ時、サマポケの鳥白島の美しさと優しい島の雰囲気をどこか感じましたが。
あちらの日常シーンは結構テンション高めで、友達同士の青春や島民の明るさが大きかったのに対し、ATRIの日常シーンはは閉ざされたコミュニティの静かな会話って感じ。
別に暗い日常シーンだったわけではないですよ。


キャラクターはサブからメインから誰もが良いキャラをしていまして。
主人公とアトリ以外の掘り下げがほぼ皆無であったにも関わらず、作品に欠かせない人たちでした。
正直サブキャラの掘り下げももっと欲しいなって思いましたがそこはロープライス作品。
捨て置くところはきっぱりかっちり切り捨てて、主人公とアトリの話だけに焦点を合わせてきました。ロープラとしては間違いなく正解です。

画像2

水菜萌ちゃんはとにかく真っすぐで良い娘すぎてたまらないし(どういう形であれ最後報われてよかった)

画像3

オルg…竜司も分かりやすく憎めなくて分かりやすくいいヤツ。
冗談抜きで細谷佳正さんの声がどのキャラを通しても、「オルガじゃねぇか…」となってしまって笑いが止まらん時期があったんですけど。
いろいろな作品で声を聞いているたびにこの人声質は同じでも演技の幅がすげー広いなってことに気づきました。
オルガを中間とするならば、一番若くしたのが竜司で一番大人に寄せたのがBNAの士郎さんってところでしょうか。
今では好きな男性声優の一人です。


画像4

そしてなによりこの女ですよホンマ。
タイトルにある通りこの物語はアトリと主人公のために存在しています。
アトリと主人公が町の人達と関わり、アトリと主人公の関係も発展していく。町の人々もそれを応援してくれる。
話の八割はアトリと主人公、CGの八割もアトリです。

もうね!このポンコツが愛おしすぎる!いやそういう作品なんだけどさ!まんまと策にハマってますよ!ええ!
だってもうキャラデザが最高じゃん?これ。顔面の暴力だが。
淡く綺麗な髪色、赤く透き通る瞳、小さな体にダボダボのセーラー。何?
それがヒューマノイドのやり方かおい。一生笑顔見させ続けろや。

画像5

その見た目で愛嬌の塊みたいなお転婆な性格てお前な。
ワイがオタクやからってやっていいことと悪いことがあるじゃろて。

画像6

怒った顔も。

画像7

ジト目も。

可愛いねんてェ!!!!!!!!!!!!!!!!!


ハァ…ハァ…

可愛いねんてェ!!!!!!!!!!!!!!!!!


正直買う前から予感はしてました。純粋にキャラデザが僕に刺さりすぎていると。
頭の先のアホ毛から足元のローファーまで全部が大好きぶっ刺さりですよええ。
キャラデザのお二人とアートディレクターのSCA-自先生様様でございます。この子を生み出してくれて本当にありがとう。

画像8

でも一番好きなCGはBADのこの一枚っていうね。パソコンの背景にしてます。
まさかこんなに血が似合うなんて...
元のアトリが大好きなのはもちろんですが、性格も実は感情を認める前の素アトリちゃんの方が好きだったり。


紺野アスタ氏のシナリオには初めて触れる機会でしたが、本当に世界観とキャラの邪魔をしない、読み手に違和感を抱かせないお話を書くなあという印象です。
いうなれば、美しいシナリオといいますか。
雰囲気ゲーのシナリオを書かせれば間違いないとよく言われているのを理解することができました。
特段盛り上がるような展開や構成はなくて、シナリオ単体で見れば魅力は正直そこまで感じません。
が、とにかく世界を壊さない。流れが自然で読んでいて頭に疑問符が浮かばない。そんなシナリオ。
終わり方もありきたりでありながら綺麗ですし。
今年の夏のために温めておいたエロゲも紺野アスタ氏がシナリオを担当されていますので、もっと楽しみになってきました。

以上感想でした。
最高のスタッフ陣にアニプレックスマネーが加わり、2人だけの関係に全力が注ぎ込まれた間違いなく最高のロープライス作品でした。
HPやPVを見て雰囲気に少しでも引き込まれた人は、買う価値アリです。
だって2000円ですから。コロナ禍で陰鬱としたこの夏を、透明感ある世界と物語が彩ってくれるはず。




オットセイに課金してもガチャは回せません。