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ディズニー映画「ムーラン」が開いたパンドラの箱

 ウォルト・ディズニー社が2億ドル(日本円で、約210億円)を投じて製作した大作、実写版「ムーラン」の製作において、新疆ウイグル自治区にある8つの政府機関や、中国共産党なども協力をしていたことが明らかとなり、欧米諸国を中心に批判にさらされている。

ディズニー映画「ムーラン」に批判 ウイグル当局協力
ディズニーの新作映画「ムーラン」をめぐり、中国の新疆ウイグル自治区の政府機関が協力していたことがわかった。欧米メディアが8日までに報じた。新疆では中国政府によるウイグル人の迫害が問題視される。SNS(交流サイト)では映画を見ないよう呼びかける声が広がっている。(日経新聞/2020年9月9日)

 新聞記事にあるとおり、この騒動の背景には、中国政府による新疆ウイグル人に対する人権侵害がある。新疆ウイグル自治区は、インドやパキスタン、ロシア、モンゴルなどとの国境に接し、様々な少数民族が住まう多民族地域である。中でもウイグル人は、これら少数民族の中で最大グループであり、新疆ウイグル自治区の約半分はウイグル族で占められている。中国政府が宗教統制をしていることは、以前も記事にしたとおりであるが、中国政府からしてみると、イスラム教を信仰するウイグル人もまた、「国家の安全を脅かす存在」とみているようだ。国連の報告によれば、「最大100万人にも上るウイグル人が(思想矯正の為の)強制収容所に送られている」という。

 この人権侵害について、欧米では何年も前から国際的な問題としてメディアはもちろん、国連などの国際機関でも大きなトピックスとして取り上げていた。しかし、驚くべきことに日本のマスメディアはこれまで、ほとんど報道をしてこなかった。そのため、今回の「ムーラン騒動」によって、初めてこの人権問題を知ったという人も多くいるのではないだろうか。その事情として、中国政府の日本メディアへの介入や、在日ウイグル人支援団体の問題など、真偽に関わらず、様々なことがまことしやかに囁かれているが、本当の所は一切明らかになっていない。ただ、そういったことも一因なのか、日本の報道の自由度は、一時、世界ランク72位まで順位を下げ、2020年現在でも、66位と先進国に比べて未だ低いままだ。

 しかしこの人権問題は今回、ディズニー作品への批判という間接的な形ではあるものの、多くの日本国民の間でも知ることとなった。ついに、パンドラの箱が開かれたと言える。これから、どのような動きを見せるのか注視をしていきたい。

(text しづかまさのり)

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