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DJのヘアスタイルに不寛容の兆し?

昨年の12月からスタートした当WORKSHOP AIDのコラムも、早いもので連載開始から1年を迎えようとしている。
このコラムはイスラム教・仏教・キリスト教それぞれの宗教者がリレー形式で執筆をしていて、毎月、上旬(イスラム教)→中旬(仏教)→下旬(キリスト教)といった具合で、ほぼ10日に1回の更新となっている。執筆陣は三者三様でその時々のニュースや時事ネタを独自の目線で紹介しているので、バックナンバーもぜひご参照いただきたい。

さて、この1年の記事を振り返ってみると、筆者の担当する「仏教」の主題がいくつか存在していることに我ながら気づく。1つの大きなキーワードは【多様性】である。

初回のコラムでは『外国人材は、臨終期にお経を聞きたいだろうか』と題して、多宗教化している日本の足元を再確認した。
今年2月には『グラミーと、アリアナのタトゥーと、民族気質と。』とのタイトルで、多文化における「文化の盗用」について触れた。
先月10月には、『芸人さんの人権感覚』というエントリーで多様性の中でいかにコンセンサスが形成されるべきか書いた。

これら投稿の背景には、多様さがいかに担保されていくべきか?今後の日本/世界への危機感、そして宗教への不寛容に対する危惧がある。そんな中、先月また同じような炎上騒動があった。

ロシアの人気女性DJニーナ・クラヴィッツ(Nina Kraviz)が自身のヘアスタイルをコーンロウ(編み上げの一種)にしSNS上にアップしたところ、「文化の盗用である」と物議を醸し、その批判は人種差別問題にまで発展したのである。
事のあらましはライターのJun Fukunaga氏が書かれているこちらの記事で読むことができるので、詳しくはそちらを一読していただきたい。文末の

多様化する価値観と並行して進む不寛容さの拡大。そこから生まれる分断は現代社会における大きな課題だ。社会的なルールが変容していく中で、われわれの価値観もポリティカルコネクトレスに沿ってアップデートされていくべきだが、この問題に寄せられた様々な意見を見ていると今後は何が本当に正しくてどのようにアップデートしていくべきかをより議論していく必要があるのではと思わされる

という氏の言葉に共感できる。

何故この「多様性」の問題に、筆者が関心を示し続けているのか。それは裏を返すと「私自身の多様性を認めてほしい」という、ごくごく私的な望みがずっと横たわっているように思う。もっと言うならば、
「私が、あなた(あなた方)の望む僧侶の姿でなくとも、いわゆる男性らしく振舞えなくとも、父親の役割を全うできなくとも(等々)、それによってどうか糾弾しないで頂きたい、断罪しないで頂きたい。私もことさらにあなた(あなた方)を頭ごなしに否定しないから。」
という、すがるような気持ちが常につきまとっているからだと思う。

この一年を通していくつものトピックを扱っていながら、しかし実は限りなく私的な問題意識がずっと通底していたのだなと、あらためて思い返している。


Text by 中島光信(僧侶・ファシリテーター)


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