スペイン巡礼16日目:ジョー爺の名言と壮絶なマメ治療
2018/9/5 Hornillos del camino-Castrojeriz(約20km)
今日も5時半起床。今朝はかなり冷えたのでmont-bellのストームクルーザーを着て出発した。外に出ると満天(とまではいかないかも)の星空が!小さい街で明かりも少ないからこその絶景だ。
ひっそりと静まり返った街を抜け、真っ暗闇の森へ突入する。前後に人もおらず、サインを見逃さないよう必死。ヘッドライトは巡礼の必需品だと改めて思い知る。迷わないか心配だし真っ暗なのも普通に怖いし、かなり心細かった。
しばらくすると、分かれ道に到着。少し先を歩く2人は何の迷いもなく颯爽と右へ歩いて行ったが、よく見るとサインはどう考えても左を指している。
仕方なく1人寂しく左の道を、真っ暗の中ひたすら進む。絶対合っているはずだが、なかなか次のサインが見えなくてまた不安になる。
ここ数日日の出が遅くなったのか、ただ天気が悪いだけだからなのか、7時を過ぎてもまだ暗い。感動のサンライズもないし、テンションはがた落ちのままとにかく前へ進む。
通常朝はやる気に満ちてポジティブな気持ちで歩けるが、今日は初めて空と同じようにどんよりした気持ちで歩いていた。
ここ数日誰かと話すといっても数分程度だったので、いくら1人が好きといえど、さすがに寂しくなってきた。とはいえ、なぜか積極的に誰かとおしゃべりを楽しむ気力もそこまでない。
巡礼も序盤の頃は、毎日世界中の人との出逢いが新鮮で、「どこから来たの?」「普段は何してるの?」「何でカミーノを歩くの?」と積極的に質問しては会話を楽しんでいた。
でも早2週間を過ぎた今は、正直疲れてしまった。相手がおしゃべりなら楽だが、こっちから会話を広げるほどの元気がない。しかもやっとニコニコした人を見つけたーと思っても、フランス語かスペイン語しか話せず会話にならないのが残念。
こんなことをくよくよ考えていると、昨日声をかけられた韓国人女子たちに再会。何と1人は日本語がペラペラ!日本の大学で勉強していたらしい。数週間ぶりに日本語を話したし、やっぱりアジア人同士は何となくノリも似ていて楽。
メンバーの韓国人男子が、宿に忘れたヘアバンドをわざわざ取りに戻っているのを待っているとのことだったので、私は先に進むことにした。
久々のひまわり畑。シーズン中なら感動すること間違いなしだ。今日はみんなうつ向き顔…w
今日の中間地点、Hontanasに到着。歩き始めてから2時間半、街がなかったのでようやく休憩。ずっと風が強く、ストームクルーザーを着ていても寒かったのでカフェコンレチェであったまる。
遅れて到着したフランス人のおばあちゃんずに日課の挨拶をし、先を急ぐ。
急に足取りが軽くなり、ガタガタ道も順調なペースで歩いて行く。相変わらず景色に変化がなくてつまらないけど。
この頃、今思えばかなり雑な歩き方をしてしまっていた。その代償が、ガタガタ道を終え舗装された一般道に入ってから一気にきた。
舗装されているからかなり歩きやすいはずなのに、足は疲れ物凄く重い。しかも、アキレス腱がまた少し痛み始めた。ほぼ完治したしサポーターの圧迫感が嫌で付けなかったのは大誤算。
長い一本道の先に、今日の目的地Castrojerizらしき街が見えてきた。北海道でのヒッチハイクを思い出すような道。今日はヒッチハイクしたい気持ちを抑え、ひたすら一歩一歩前へ進むしかない。
11:45頃Castrojerizの街の中に入った。宿の候補は2つ。1つは、パエリアが絶品と噂の宿。もう1つは、韓国人経営のビビンバが食べられる宿。判断基準が食なのはさておき、私は後者を選択。
理由は①現在地からの近さ②後にも先にも韓国料理が食べられるチャンスは今しかない③韓国人女子と再会できるかも
Albergue Orionはスペイン人と韓国人カップルが営む宿。設備はスーパー綺麗で、wifiもサクサク、2人とも優しくて、ベッドも選ばせてくれた。1泊11€と街で一番高いアルベルゲだが泊まる価値は十分ある。
飲み物が底をついていたので、スーパーに出かける。なんと歩くと20分くらいかかると聞いて絶望したのもつかの間、チャリを無料で貸してくれると聞いて安心。
5分ほどでスーパーに到着。ペットボトルはほとんど冷えてないし、フルーツもあまりないし、まさかの空振りw
ちなみに、パエリアが評判の宿はスーパーのすぐ近くらしい。通常アルベルゲは密集しているものだが、Castrojerizはやたら横に長い?街のよう。
足も痛いし肌寒いし外に出る気力がなく、夕飯まで部屋でぐーたら。16時過ぎ頃、猛烈に汗臭いおじいさんが到着。19時前にはもう1人初めて見る韓国人女子が来た。
ビビンバが最高にうまい!久々の白米にしょうゆやコチュジャンのアジアンテイストがたまらん。これだけでも結構ボリューム満点だが、デザートのアイスもついてくる。
夕飯のメンバーは私を含め3人。韓国人のスーは外資系ホテルで働いていただけあって英語も話せる。フランス人のジョージも教授だったからか、英語での会話も大体ok。
ジョージは、今日ブルゴスから40km歩いてきた強者。去年の夏もカミーノを歩き、毎日40kmのペースで踏破したにも関わらず、マメも足の痛みもなかったという…62歳とは思えない!
自分のためというより他の巡礼者を助けるために、手当てグッズや大量の水を持ち歩き、バックパックはなんと15kg!!スーと2人でびっくりしっぱなしw
スーは仕事を辞め時間があるからカミーノに来たらしい。でも私と同じく、ろくにトレーニングもせず来たため、アキレス腱の痛みと大量のマメに悩まされ、今日はブルゴスからバスで移動してきた。
なぜかスーは、ジョージではなくジョー爺のイントネーションで呼んでいるwなんかかわいいけど笑
しばらくすると、ジョー爺が突然深イイ話を始めた。
「今は歩くことが私たちの仕事。バックパックは家で、巡礼者は家族。」
「歩くことを楽しめなくなったらもうやめて、来年また挑戦しなさい。800kmを踏破することは誰にでも出来るわけじゃないからね。(体も心も)壊れてからじゃ遅い。普段の仕事も同じだよ」
スーも私も足の痛みのせいで、歩くことを全力で楽しむというより、正直目的地に着くことを第一に考え歩いていた。でもそれではいずれ限界がくる。だったら無理せずリタイアするか、バスカミーノにするか、臨機応変に無理せず行動してね、ということをジョー爺は伝えたかったらしい。
普段の仕事も同じこと、か。楽しめない状況でも我慢して続けたら、いつか限界がきて心身ともに壊れてしまう。まさに去年の私に必要だったメッセージだ。
日本だと根性論で、辛いこともともかく我慢。何事も継続していけば、成果が出るからがんばれって言われることが多い。でもその結果、過労死やうつ病などがあとをたたないわけで。
だったらカミーノと同じように、限界は越えないようマイペースにうまく自分をコントロールすることが大事なんだと、改めて考えさせられた。
部屋に戻ると、スーの巨大なマメの治療が始まった。かかと一帯に広がるマメは、数日前に自分で潰したが炎症を起こした状態で再製されてしまったようで、ちょっと触れるだけで激痛。
そんな状況でも、今すぐ針で水を抜くべきだと主張するジョー爺。針先をライターで熱し、これならバイ菌も入らないから大丈夫だ!と必死に説得してくる。
しかし私たちが心配しているのは、既に中にバイ菌が入り込んだ状況で安易に水を抜いていいのかということ。明日病院で診てもらうから、もう片方の足の小さめのマメだけでいいと主張するも、ジョー爺は表情や語り口は穏やかだが頑として譲らない。
まず小さいほうを治療。こちらはほとんど痛みもなく終了。続いて炎症を起こしている巨大なマメにも結局取りかかる。ジョー爺は、こっちも水を抜くだけだから痛くないよ、大丈夫!!と繰り返し言って私たちを落ち着かせようとする。
私がスーの手を握りながら、恐怖のマメ治療の始まり。
針を刺した瞬間、
「いったああああああいいい!!!!」
やっぱりね!!!
大体痛くないよって言う場合は痛いものだ。
私の手を全力で握りしがみつきながら、どうにか猛烈な痛みに耐えるスー。あまりに辛そうなので、背中を擦りながらなぜか私が半泣きに。
処置を終え「いやーモンスターだったね!!」と清々しく語るジョー爺。
同じ部屋だったオーストリア人カップルと一緒に「よく頑張ったね!!」とスーを労る。謎の一体感に包まれ、忘れられない夜となった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!サポートいただいたお金は、パリ生活を生き抜くために使わせていただきます。