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むかし書いた韓国コラム #119

 鍋料理をするときに具を入れる順序やら火加減やらを取り仕切る「鍋奉行」なる人物がいる。韓国では「鍋奉行」に相当する言葉はなさそうだが、韓国生活も長くなり韓国の鍋料理の食べ方もわかってくると自然に自分が鍋奉行になっている。プデチゲを食べるときには食べやすいようにラーメンは4つに割って入れ、タッカンマリなら先に煮えたモチから食べろと指示を出す。店員は食べ頃になると教えてくれるくらいで調理にはあまり手を出さない。こうして鍋奉行の腕はどんどん磨かれていく。

 しかし鍋奉行が手を出せない料理もある。タッカルビだ。厳密には鍋料理ではないが、日本からの客にいいところを見せようとしゃもじに手をかけるとどこからともなく店員が現れしゃもじを奪い調理を始める。店員がいなくなった隙にしゃもじに手をかけるがすぐに店員に見つかり、しまいには「こちらでやりますから手を出さないで」と言われる始末。タッカルビ奉行になるには店員になるしかなさそうである。

【解説】
 タッカルビを作るのにそれほど特別な技能はいらないと思うのだが、店には店のこだわりがあるのだろうか。しゃもじに手をかけると店員がすっ飛んでくるということはそれだけ各テーブルの様子をチェックしているということで心強い存在なのかもしれないが、ときどきいつまで待っても店員が来ないときもありやきもきすることもあった。

(初出:The Daily Korea News 2013年2月6日号 note掲載に当たり解説を加筆しました。記事の内容は初出掲載当時のもので現在の状況とは異なる場合があります)

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