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007最新作ってどうなのよ-007カジノ・ロワイヤル-

「007」シリーズを知らない人はいないだろう。
1960年代から続くスパイ・アクション映画の代表的作品で、最新作「カジノ・ロワイヤル」で21作目を迎える。
大した長寿シリーズだ。

ショーン・コネリーが初代ジェームズ・ボンドを演じた初期の作品がいまだに時折地上波で放送されることがあるが、特撮やアクションのレベルは隔世の感があるものの、シナリオの面白さ、スケールの大きさ、登場人物の魅力といったものは決して色褪せることがない。
これぞ娯楽映画といった派手な楽しみがある。

最新作「カジノ・ロワイヤル」は、ポスターに「ジェームズ・ボンドが007になる前の物語」と書いてあり、この触れ込みは「アナキン・スカイウォーカーがダース・ベーダーになる前の物語」を連想させる。
私が注目したのもその一文だし、今回試写会の招待状が当たって足を運ぶにあたり、当然ながらそれを期待していた。
実際、コロンビア映画に勤める友人に「今度の007はボンドが007になる前の話なんだよ」と口コミされて、私の上司は随分と楽しみにしているのだ。

で、それなんですけれども。

確かに007が生まれる前のシーンがあります。
ただし最初の5分だけ。
007がひらりと翻って銃口を向けるお決まりのタイトルコールが出るまでの数分間だけが、正確に言うならばジェームズ・ボンドがまだ「00」の称号をもらう前にあたるわけだ。

ただ、もう少し解釈を広く取ると、皆が知っているジェームズ・ボンド、つまり常に冷静沈着で計画を確実に実行し、美女が好きだが決して情に流されず、殺人に無感動、死の恐怖からはとっくの昔に解脱しているといった超人的人物がどうやってできあがっていったかということを、そうなる前の彼を描くことによって語るのだと言えば、まさに今回はそういう映画に違いない。
無鉄砲でトラブルを招きがちで、うかつにも本気の恋にも落ちてしまう、そういうジェームズ・ボンドはこれまでなかった。
さらに言えば、ここまでマッチョで派手な肉体系アクションを繰り広げるジェームズ・ボンドも初めてだろう。
6代目ボンド役のダニエル・クレイグは、ものすごく動く。

さて、結局「カジノ・ロワイヤル」は面白かったのか。

もちろん007は面白い。
派手さや迫力、二転三転する展開など一通りの要素で一定のクオリティを超えているし、数あるアクション映画の中でも「007」か「ミッション・インポッシブル」かというワールドワイドなスケール感は特有のものだ。
それ以上の何があるかというと、まあ特にないけれど、でもアクション映画というのはそれだけあればもう十分だし、それ以外の何かを求めるなら別のジャンルの映画を観ればすむだけだと思う。

エンディングで例の007のテーマ曲が大音量で流れる。
そして、その曲が何一つ錆付かない、古臭くならない、むしろ無条件に心躍らせるものであることを知る。

今週末何を観ればいいかと訊かれたら、とりあえず「007」でいいんじゃないかと私は勧める。
そこには、ほとんど法則に近いものがあるからだ。


007 カジノ・ロワイヤル Casino Royle(2006年・米/英)
監督:マーティン・キャンベル
出演:ダニエル・クレイグ、マッツ・ミケルセン、エヴァ・グリーン他

■2006/12/1投稿の記事
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