カプリコン・1

 私がまだ子供だった頃に劇場で観てかなり鮮烈な印象が残っている「カプリコン・1」について今日は書いてみたいと思います。SFサスペンス映画なのですが、厳密にはちょっとSFというカテゴリからは外れるかもしれません。この映画はアメリカの宇宙開発にまつわる陰謀をテーマにした作品なのです。

 人類初の有人火星飛行がトラブルのため中止の危機が訪れます。しかしメンツを失いたくないNASAは、無人のままロケットを打ち上げ、火星の探査の様子は地球のスタジオで撮影して中継するという壮大な「ヤラセ」を計画するのです。アポロの月面着陸がヤラセではないかという説から着想を得たのだと思うのですが、実に見事なプロットとサスペンスフルな展開です。昔も今もアメリカという国は本当に信用されていないのですね。

 実際のパイロットはその計画の間監禁され、口止めを強いられるわけですが、さらに面白くなってくるのは地球に帰還するロケットが手違いで爆発してからです。つまりパイロットが死んだことにならなければ都合が悪くなってしまうわけです。これにより身の危険を感じた三人のパイロットは脱出。飛行機を奪って逃走します。

 一方、別ルートから陰謀を嗅ぎ付けた新聞記者(エリオット・グールド)が命を狙われながらもこのパイロットたちを探します。パイロットたちは砂漠に着陸。ここで一人でも生き残ろうということで三方に分かれて歩きます。追跡するのは真っ黒なヘリコプター。このデザインが秀逸です。ここまで真っ黒なヘリコプターは見たことありません。怖いです。このヘリに一人一人捕まり、その度に照明弾が上がります。この辺りはサスペンス映画史上に残る名シーンだと思います。最後の一人になったパイロットはようやくガスステーションまで逃げます。そこへグールドもセスナ機パイロット(テリー・サバラス)を雇って駆けつけます。この飛行機に救出されるシーンのカタルシスといったら凄いです。しかし映画はまだ緊張感を維持して、セスナ機とヘリのチェイスというこれまた映画史上に残るアクションシークエンスを見せます。セスナ機にサバラスとグールドが乗っているわけですから、救出するパイロットの乗る席はありません。ですからこのシーンではずっと翼に捕まっているのです。そこへヘリがセスナ機に上から体当たりしてきます。CGも何も使っていません。ガチのスタントでここまでやっているのです。空中撮影ですからその様子をもう一機の飛行機かヘリから撮影しているわけで、当時こんなことができたのは職人監督ピーター・ハイアムズならではというところでしょう。

 ラストは感動的ではあるものの、その後も見せてくれよと言いたくなるほどあっさり終わりすぎていて物足りませんが、間違いなく名作と言っていい映画です。あまりに有名すぎる映画と思っていたら案外一般的知名度は低いようです。最近テレビ放送もしませんし、ひょっとしたら若い世代には知らない方も多いかもしれませんので、ぜひもっと観られて再評価されてほしいものです。

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