007/ユア・アイズ・オンリー

 えー、シリーズの中でもかなり私のお気に入りの007である「007/ユア・アイズ・オンリー」について、今日は書いてみたいと思います。これは前作の「007/ムーンレイカー」で戦いの舞台が宇宙にまで飛び出したのでいくら何でもやりすぎだろうという声が内外から上がったようで、その反動でシリーズの原点に立ち返った地味めの作品になっています。地味と言ってもロジャー・ムーアボンドの中ではという基準でお考え下さい。今の007映画と比べたらかなり派手ですし、ギャグもたっぷりあります。

 まずこの作品を観る前に、シーナ・イーストンさんの歌う主題歌が大ヒットしていましたので、それをよく聴いていたことを覚えています。確かドーナツ盤を買ったはずです。私でなく兄貴がですが。この歌が良かったですねえ。バラードがあまり好きでない当時の私が聴いてもいい歌だと思いました。シーナ・イーストンはボンドガールにも負けないほど美人だということで、なんと主題歌の歌い手としては初めてオープニングにも登場しています。

 思い出話はそのくらいにしまして、内容ですが、確か東西冷戦を背景に西側のミサイル誘導装置を巡って謎の組織とボンドが戦うみたいなお話でした。その装置を積んでいた船が冒頭で攻撃を受けて沈没し、その船の調査をしていた人が殺され、その娘が絡んできたような気がします(キャロル・ブーケさんです)。相変わらずうろ覚えですが、もう10年くらい観ていない映画なのですみません。

 この映画で特筆すべきことは音楽がロッキーシリーズでおなじみのビル・コンティさんであるということでしょうか。007シリーズの音楽と言えば、今はそうでもありませんが当時はジョン・バリーさんと相場が決まっていました。彼の音楽がかかると007を観ているなあという気がしたものです(余談ですが一番有名なジェームズ・ボンドのテーマを作曲したのは別の人でモンティ・ノーマンさん)。しかしこの作品ではホーンセクションを多用したディスコチックなノリのいい音楽が随所でかかりまくってちょっと面食らいます。しかし慣れてくるとこれがなかなかヒロイックな雰囲気を強調してカッコよくなってくるので面白いです。

 全体にやりすぎでないちょうどいいアクションが展開され、安心して観られる佳作と言えましょう。オープニングのブロフェルドとの対決もなかなか面白いです。これに限らずセルフパロディともとれるギャグが多く、例えばキャロル・ブーケと出会って逃げる最初のカーチェイスではボンドカーが活躍するかと思いきや、乗る間もなく爆発、仕方なしに小さなシトロエン(だったかな?)で逃げるという意表をついた展開もあります。ここのカーアクションは恐らく世界でも一番早い宮崎駿オマージュだったのではないかと個人的に思っていますが、有名な話だったらすみません。

 恒例のスキーアクションも凄いです。スタントマンとバレバレなんですが、それはもうどうでもいいのです。どんな凄いスタントマンの技が見られるか、というノリで当時も観ていたような気がします。だってボブスレーのコースにスキーで紛れ込んで、後ろからバイクで追いかけられたりするんですよ。あまりに命がけすぎます。

 今作はクライマックスがあまり派手でなくひたすら少人数で行われるんですが、手に汗握るサスペンスと命がけすぎる撮影のせいで物足りないという感じはしません。ロジャー・ムーア主演作の中では非常にバランスの良い、万人にお勧めできるボンド映画となっているのではないでしょうか。

よろしければサポートお願いいたします。