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寿司屋で突然キレだしたお客さんの真意



ある日、日頃からお世話になっているお客さんと同伴でお寿司を食べていたときのこと。
同伴のときは、8時30分までにご飯を済ませて、クラブに入っていないといけないのだけど、お寿司をまったり堪能しすぎて、すっかり入店時間に差し迫っていた。


お客さんの、仕事が最近佳境に入って〜うんたらかんたら話を聞きつつ、お店に遅刻してしまわないかと、そわそわ時計を気にしていると、突然、
「あ〜、ゆかといてもつまらないわ。帰る。」
と言い出したのだ。


失礼なことはしていないはずだし、つい先程まで穏やかに過ごしていたというのに、どう考えても急に湧いて出た怒りの原因がよく分からない、一体なに、どうした!

明らかに理不尽な態度にイライラしてしまいそうになるのを抑えて、どう対応しようか考えていた私は、お寿司を頬張る手を一旦休めて、ふと、ある日の光景を思い出していた。

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中学生のとき、わんぱく少年が授業中居眠りしてしまって「やる気がないなら出ていけ!」と先生に怒られたときのこと。


大抵は「すみません。集中します。」と、反省のポーズを見せて事なきを得るところなのに、先生の言葉を真に受けたわんぱく少年は、本当に教室を飛び出してしまった。
クラスメイト達は、みんな心の中でずっこけたはずだ。


「本当に出ていく馬鹿があるか」としっかり2度怒られていたが、先生は、本当に生徒を教室から追い出したくて「出ていけ」と言ったわけじゃなくて、一度突き放すことで、勉強への意欲を引き出したかっただけなのだ。

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さて、お客さんも、あのときの先生と一緒で、言葉とは裏腹に、本当に引き出したいものは別にあるように思う。


そのまま言葉を受け取ってしまえば
「私ってそんなにつまらないんだ。」
としょんぼりして、帰りのタクシーを用意してしまうところだが、
どうしてそういうことを言ったんだろう
どんな言葉を私から引き出したくてそう発言したんだろう
という観点で、お客さんの言葉を改めて受け取ってみると、そのまんまの意味とは違うメッセージがあることに気づく。


きっと、そのときお客さんが欲しかった言葉は、
「そんなにつまらないなら、居ても時間の無駄だよね。帰りのタクシー個人でもいい?日本交通がいい?」
ではくて
「私だけ楽しんで退屈させてごめんね。私は、楽しかったよ。私はまだ一緒にいたいから、まだ一緒にいてくれる?」
だったんだと思う。


「メンヘラ発動急すぎてびびるわ」と内心毒づきながらも、
「楽しい」「一緒にいたい」ということをきちんと伝えると、だんだん落ちついてきたのか、ちゃんと帰らずにお店に来ていただけた。

後日、何であんなに怒っていたのか聞いてみると、
「あのとき、ゆかが時計をチラチラ確認していたから、つまらないんだと思って。ごめん。」
と謝ってきた。

私も、つまらないから時計を見ていたわけじゃなくて、入店時間が迫っていて焦っていたので時間を気にしてしまったと謝り、仲直りした。
本当にお客さんはつまらなく感じたわけじゃなくて、私のふとした仕草で「好意」があるのか不安になり、怒るポーズを取ることで、私の「好意」を引き出して確認したかったらしい。
よしよし、メンヘラかわいい。

お客さんの発言に素直に反応するというより、
今、どんな言葉を私から引き出したくて、お客さんは発言したのか、ていう目を持つと、わんぱく少年のようなミスコミュニケーションは防げる。
「言葉の真意を想像する」とは、きっとそういうことだな〜と気づけたお寿司同伴だった。うに美味かった。


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