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メタバースを誤解していた

昨日(11/23)のNHK nw9でメタバースを取り上げていました。一部では次世代のインターネットと呼ばれている様です。番組中ではちょっと体験してみました的なものであまりメタバーストは何かみたいなことは説明がなかったので、いろいろ調べてみたのですが、正直、誤解していたところが大きいので、その辺りを個人的にまとめてみました。ただ、課題も多そうですね。

次世代インターネット?メタバース

まず、最大の誤解。メタバースはMeta社(旧Facebook社)が提供するサービスかと思っていました。ですので、一サービスに過ぎないメタバースがなんで「次世代インターネット」なんだろうと疑問に思っていました。

メタバースとは何かという部分はnw9でもあまり触れずに進んだので、自分と同様に誤解している人も多いように感じますが、NHKさんそれで良いのでしょうか?正直、いかにもWBS的な取り上げ方で、WBSだったらそれで良いと思うのですが、nw9というNHKの夜の看板ニュース番組での取り上げ方としては疑問も感じます。

メタバースとは

困った時のWikipedia頼み。まあ、信じ切るのは危険ですが、以下のように解説されています。

メタバースの本来の意味は、インターネット上に構築された仮想の三次元空間であり、利用者はアバターと呼ばれる自分の分身を介して仮想空間に入ることでその世界の探索・他の利用者とのコミュニケーションを図ることができ、その他にも仮想世界内の仮想通貨を用いた買い物や、サービス内で商品を制作して販売する経済活動ができたり、利用者自らが作ったゲームなどの、さまざまなコンテンツを楽しむこともできる。

太字はこちらでポイントと思われる部分を強調したものです。
なおこの記述は「要出典」マークが付いているので、個人の見解である可能性が高いことをご承知おきください。元々はSF作品に登場する仮想空間の名称だそうです。アラン・ケイの提唱するコンセプトのダイナブックと、実際のパソコン製品のダイナブックみたいに、名前を借りてきただけとも言えます。
逆に言えば、まだ確固とした誰もが納得する定義がないものと思います。

そんなわけで、自分が誤解していたような「メタバース」というサービスが存在するわけではありません。少なくとも現時点では。
数々存在し、これから生まれるであろうメタバースサービスの中のどれかが、今後は事実上の標準になることがあるかも知れませんが、その場合はメタバースではなくそのサービス名で呼ばれるでしょうから、メタバースというサービスは存在しないと言い切って構わないかと思います。

そんなわけで、メタバースが何か、何がメタバースなのかは、諸説ございます状態です。いくつかのサービスがメタバースであるとされていますが、解釈によってはMInecraftとかあつ森とかフォートナイトもメタバースとするものもあるようです。また、かって流行った?ハビタットとかセカンドライフ(まだ続いているらしい)も一種のメタバースであるとの捉え方もあるようです。

実際、nw9で取り上げていたのは、おそらくMetaのHorizon Workroomsかと思います。これだけがメタバースではないし、別にメタバースを代表しているものでもありません。

その他存在するメタバース的サービスやどういうものかについては、以下を参考にしてみてください。

メタバースは次世代インターネットなのか?

そんなメタバースが、なぜか一部で「次世代インターネット」と呼ばれています。正直、「次世代インターネット」とするのは技術的視点では明確に誤りだと考えています。その証拠というわけでもないですが、Wikipediaのメタバースの項にはそのような記述はありません。

インターネットとは「inter」と「net」の造語で、ネットとネットを繋ぐもの、という意味があります。インターネット以前、それぞれの企業、教育機関、政府機関が別々に持っていた自分達のネットワークを相互に接続し、お互いに自由にやり取りできるようにしたものがインターネットです。
それによって自由な情報の発信と交流が可能になったのが画期的なことだったのです。
それ以前にも草の根BBSとかパソコン通信といった同様な交流サービスはありましたが、それを駆逐したのは、そういう一サービスのクローズな世界ではなくて、大袈裟に言えば全世界がフラットにつながったことが革命だったためです。

現状、メタバースを謳うそれぞれのサービスはインターネット上で提供される一サービスに過ぎません。もちろん、VRを使ってその場にいるかのように交流できるというのはある意味画期的ではあります。
ただ、過去に似たようなサービスがいくつかあったことからもわかるように、それ自体は別に新しいサービスができたに過ぎません。セカンドライフも当時は散々持ち上げられましたが、結局は一過性のものでした。今となっては信じられないかもしれませんが、セカンドライフ上の土地の売買なんてことが行われていました。
まあ、今でも存続しているそうなので過去形にしてしまうのは問題かもしれませんが、少なくとも今はほとんどの人が知らないでしょう。

次世代インターネットと言うからには、それらメタバース的なサービスがインフラを介して相互に接続できなければ話になりません。共通プロトコルみたいなもので相互に接続できるメタバース的サービス群の総称として「メタバース」と言うのであれば、次世代インターネットと言えるかもしれません。そういう動きもある様ですが、そうではないものも多く、課題は多く先は長そうです。

そういうそれぞれのメタバース的サービスがどんなに画期的でも、別々のサービスで単にカテゴリとしてのメタバースという枠組みである限りは、次世代インターネットではなくて、次世代セカンドライフとか次世代Web会議とかに過ぎないと思います。

あるいは、どこかのサービスが覇権を握り、世界中のほとんどの人がそのサービスを利用しているという状況になれば事実上の次世代インターネットと呼べるかもしれませんが、正直、個人的にはそれでも次世代インターネットなどとは呼びたくないです。TwitterやFacebook、あるいはWeiboがどんなに流行っても、それらはインターネット上の一サービスであって、次世代インターネットとは呼ばれませんでした。それなのに、メタバース的サービスの何かが次世代インターネットと言うのは何か違うとしか思えません。

それに、結局は既存のインターネット上に構築されるサービスに過ぎず、また、メタバースを介さない従来のメールやチャットといった「インターネットサービス」が全てメタバース上に置き換わるとは考えにくいため、その意味でも次世代インターネットとは到底言えないと思います。

メタバースの問題点

nw9では番組ディレクターが3日間体験したようです。いろいろ楽しんではいたようですが、長時間利用していると「目がきつい」とこぼしていました。よくテレビは離れて見るように言われたものですが、目のすぐ近くに画面があるのですから、目に良くなさそうなのは確かです。特に暗い部屋で本とか読んだりテレビを見るのは問題とされていますが、実際のところどうなのでしょう?それが本当ならVRゴーグルなんて目に悪い最たるものになりそうです。

また、ネットをいろいろ見てみると、VRヘッドセットが重いので数時間使うと疲れるという話が出ていました。単に頭に乗せるだけならばともかく、目の部分に双眼鏡のようなものがついたものをベルドで止めて使うのですから、今のスマホ首なんてものでは済まないのが想像できます。

それに加え、一部サービスでは外の様子をヘッドセット内蔵のモノクロカメラで背景として表示できたりするようですが、周りが見えないと言うのは没入できる反面、危険でもあります。今の状態で普及するとメタバース空き巣とかメタバース強盗なんてものがすぐに出てきそうです。

正直、ゴーグルを使うような今のメタバースは過渡期のものに過ぎず、本番はメガネ型デバイスか、脳内に直接情報を反映するような仕組みでもできない限りは難しい気がします。
すでにそういうものは開発中とのことです。少なくとも今のVRヘッドセットにメタバース目当てで飛びつくのは待った方が良さそうです。別に没入型が悪いとは思わないし、それを使いたい時もあるとは思いますが、個人が家庭で使う際にはメガネ型とかのあまり没入しないタイプが良さそうに思います。

メタバースとNFT

メタバースはコミュニケーションだけではなくて、経済活動としても注目されています。その背景になるのがNFTとか暗号資産と呼ばれるものです。すでにNFTは注目されて一部決済手段としても使われ始めています。また、小学生の描いたNFTアートが高値で売れたなんていう話を聞いたこともあるかもしれません。

でもこれって、暴落したりして悪いイメージがついた仮想通貨を暗号資産とかNFTと言い換えて名称ロンダリングしたのと同様、メタバースという皮に包んで、またぞろ暗号資産で儲けようとしている輩が「次に来るぞ」と吹聴して回っているだけに見えます。

NFTも一時期持ち上げられましたが、早くも失速気味です。その再活性の為に目をつけられたのがメタバースに過ぎないように感じます。巻末にいくつかメタバースの参考記事URLリンクを貼りました。ただ、それらをみても多くの人がメタバースに注目しているのは、決してコミュニケーション手段ではなくて、金儲けであることがわかるかと思います。素人相手にこれが来るぞ、絶対儲かるぞと煽って一儲けしたい人たちが騒いでいるのがほとんどに見えます。

実際、経済活動的側面のないメタバース的サービスもありますが、そういうのはあまり一般的には取り上げられないあたりも、目的が見え透いている様に感じます。

メタバースは第二のセカンドライフか、桃源郷か

メタバースのいろいろな側面を見てきました。ただ、これもセカンドライフが辿った道です。当時はまだ暗号資産とかなかったと思いますが。

結局、メタバース的サービスがいくら乱立しても、それらが個々に散在している状況では一般化しないと思っています。今のTwitterとかFacebookとかInstagramとかTik Tokのようにそれなりに使われるサービスはいくつか出てくるかもしれません。でも、それだけです。

また、仮にどこかの一サービスが独占的な立場に近づいた時点で、おそらく当局から介入されます。国や国際機関が後ろ盾でもない限り、一企業の一サービスにそんな独占的な権限を与えたら国にとっても国民にとっても不幸ですから。GAFAMに対する各国当局の対応を見ればお分かりかと思います。

そして、一サービスである以上、栄枯盛衰があります。場合によってはサービス終了もあり得るし、そうなったらその世界で構築した資産もリソースも全て消えてなくなります。そうセカンドライフの様に(だから終わってませんって)。そこがインターネットとの違いです。

今でもスマホのソシャゲの課金や、電子書籍の購入、あるいは電子マネーや各企業のポイント制度に批判的な層が存在するように、実体のないもの、しかもそれが一企業の都合で消えてなくなるものに対しての一般での忌避感は強いです。まあ、株を暴落する前に売り切るように、潰れそうになったら現金化したりすれば良いのですけど、一般人がそう簡単に売り抜けできるとも思えません。実際に10月のとある調査でFacebookのメタバースへの取り組みへの関心を問うたところ、七割近くが興味がないとしています。そもそも、どういったものかを知らない人が多いのかと思います。

一方、インターネットのあるサービスプロバイダが潰れることがあっても、インターネットというものがなくなることは考えにくいです。そんな事態があるとしたら、世の中のインフラそのものが機能をはんば失っているような状況です。それはインターネットは一企業のサービスではなく、ある決まり(プロトコル)に従ったネットワークの集合体に過ぎないからです。

そんなわけで、メタバースを次世代インターネットとかいう人は、何も理解していないか騙す気満々であると思っています。

別にメタバースを否定しているわけではありません

散々、否定的なことを書いてきましたが、個々のメタバース的サービスを否定しているわけではありません。ツールとして、サービスとして、面白そうなものはあります。現実に興味深い取り組みとかもあります。VR会議はWeb会議と違って「目線」があるとかの興味深い話もあります。狭い画面に縛られたり、デイトレの人みたいにモニタをいっぱい並べる必要もなくなるかもしれません。
ただ、これからメタバースが来る!とか、メタバースは次世代のインターネットだ!とかいう人に対して疑問を呈しています。

いや、それって世間的合意もないただのコンセプトであって、実体ないでしょ。

参考


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