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目に入れたら痛い。

今日の午前中、目に土が入った。


山の苗木畑で働いている。

今、冬に備えての準備をしている。雪が積もって仕事が終わる11月の末まで、この仕事が延々と続く。

短く説明すると、雪の重さと冷たい風から守るために、苗木をくっつけて植え直す。ついでに長さと太さで選別して本数を数え、出荷に備えておく。

で、一度苗木の根から土をほろう必要がある。……あれ?「ほろう」って標準語?時々わかんない。

…なるほど「払う」の北海道弁だった。「ほろう」。「ホロー」じゃないよ。「ホロ・ウ」ね。

でも「肩の雪を払う」とか、そんな優しいもんじゃない。苗木を両手に持って苗木同士をぶつけ、長靴に叩きつけて土を落とす。その場で選別して、持てるだけ抱えて運ぶから、できるだけ軽いほうがいい。ただ、一度土から出すので、根が乾かないようにしなければならない。だから、暑かった今年は作業が2週間も遅れている。

この仕事、もともとがソーシャルディスタンス。広い畑、みんな2mは離れている。なのに土を「ほろう」とあちこちから飛んでくる。じぶんで「ほろった」土さえ直撃する。自分に。

…で、目に土が入った。いつものことだ。たいてい後から、かってに出てくる。いつだったか、帰ったあとシャワーを浴びて歯医者に行って、また帰って来て手を洗いながら、ふと鏡を見たら、真っ黒い目ヤニがついていたことがある。頼む、治療後であってください。お願いします。


お昼まで我慢した。目がゴロゴロする。痛い。涙が止まらない。1時間弱の昼休みも、目薬さしたり、鏡を覗いたり、休んだ気がしない。我慢して午後からも頑張ったが、ゴロゴロよりも、痛さよりも、涙と鼻水に難儀した。一服まで2時間頑張った。

誰にも言ってないから、きっと気づいた人はいない。だけど、もう無理だ。前が見えないので仕事にならない。訳を話して帰って来た。

すぐに眼科に行った。「ゴロゴロするなら、普通何か入ってるんですけどねー」とお医者さんが言う。何もないらしい。畑で働いていること、目に土が入る仕事(!)をしていることを告げると「土はもう出てますね。入った時のまばたきで、目が傷ついています」とのこと。よかった。目に何か刺さってんじゃね?ってぐらいの痛さだったもん。よくないけど。

目薬2本もらってきた。左目が腫れてていつもの半分しか開かない。帰って来た娘に「いつもの3倍、不細工だね」と言われた。なんでよ。2倍だろ。そもそも、どうしてこんな小さい目に、土なんか入るんだろ。


思い出すと、おかしくてしょうがない。「目に土が入る仕事をしています」って!お医者さん、一瞬固まってた。そうですよ。目だけじゃない。鼻にも耳にも、パンツのゴムのとこまでも、土が入る仕事をしてるんです。

やりたくてやってるんですよ。前の仕事は好きでやってると思っていたけど、ストレスばっかりだったから。もう一度働くことにした時、本当に好きなことしようと思ったんだもん。


木が好き。土が好き。青い空が好き。

鳥が好き。虫が好き。草花が好き。

草刈りが好き。草取りが好き。外で働くのが好き。

本当の自分でいることができる。

…わたしって幸せなんだなぁ。


目に入れても痛くないのは孫だったかな?子供は目に入れると痛いです。(個人的見解です)土も入れると痛いです。土の上で働くみなさん、くれぐれもお気をつけて。いやいや、わたしぐらいかな。

という訳で、今日はもう寝ます。

それでは、おやすみなさい。





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