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思春期にクリムトの絵画と出会って

私はクリムトという画家が大好きです。

出会いは14歳くらいのとき。
中学校の美術室に画集が置いてありました。
手にとった理由は謎ですが、授業開始より少し早めに美術室に到着してしまって暇だったのでしょう。

それまでのコンテンツ観賞経験は漫画・アニメ・映画くらいのものでしたので、幾何学模様や金箔に囲まれた女性像とそれを覆う生と死の雰囲気は、多感な時期の私に大きなインパクトを与えました。

子供の頃「死んだらどうなるんだろう」と考えては眠れなくなった経験がある方もいらっしゃると思いますが、そんな死生観や世界観がクリムトの世界で包まれました。

まぁ実際のところを言うと、「絵画鑑賞」という一般的な中学生がまずやらない行為にちょっとした高揚感を覚えていたのかもしれません。
他人と違うことをやりたくなる年齢です、中学生って。

ともあれ、それから今に至るまで約15年間ずっと好きです。
10代の頃に出会ってずっと好きなものなんて、クリムト以外にパっと思い浮かびません。

彼の最も有名な作品は「接吻」でしょうか。

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男女が接吻している絵画なのに、どこか不安感を抱く不思議な魅力を放っています。
崖っぷちというロケーションも、その演出に一役買っているのでしょう。
男女の境目もやや曖昧で、幻想的な描写に拍車を掛けています。
私のスマホケースは長らくこの絵画です。快適です。

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価値観への影響、と言えば「ヌーダ・ヴェリタス」が思い浮かびます。

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インパクトのある構図はもとより、画面上部の詩に着目します。

「汝の行いまたは汝が表現せしめるものにおいて、万人を幸福たらしむることの難きを思いたまえ。幾人かに喜びを与えんと欲せよ。如何なる人をも幸福たらしめることは、悪しき事と覚えよ。」

と書かれているらしいです。
私はこれを
「万人ウケより少数にウケる作品創ろうぜ。」
という主旨だと理解しています。
分離派を設立したクリムト本人の意思も相まって、中学生の私にはドストライク・オブ・ドストライクな価値観でした。
音楽・漫画・映画などのコンテンツに対する私のややマイナー寄りな嗜好は、振り返ってみるとこの価値観が根底にある気がします。


死生観という意味では「人生の三段階」という作品が挙げられます。

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赤子・母、老女を対比させ、ひとつの画面で生と死が渦巻いています。

この絵画に対して、母と赤子の背景には生き生きとした植物や細胞のような幾何学模様が、老女の背景には禍々しい色合いの細菌ような幾何学模様が描かれている、という見方が成されることがあります。

確かにクリムトの活躍した19世紀は、ルイ・パスツールらによって微生物学が飛躍した時代でもあります。
細胞や細菌のように、破壊と再生が繰り返されることによって循環して行く人生の有り様が読み取れますが、芸術家たちも顕微鏡を通して観測される新たな世界に興味を持っていたのかもしれません。
私は大学で微生物学を修めましたが、その時期に改めて強く思い返した絵画です。

クリムトの作品を挙げ始めたらキリが無いのでひとまずこの当たりにしておきます。


話は少し変わりまして2019年。
国立新美術館(六本木)と東京都美術館(上野)の2箇所でクリムトを中心に据えた展覧会が開催されました。
上述の「ヌーダ・ヴェリタス」や「人生の三段階」を肉眼で確認し、「エミーリエ・フレーゲの肖像」に圧倒され、「ユディトⅠ」の表情に吸い込まれました。
記事のヘッダーに掲げた「ベートーヴェン・フリーズ 歓喜の歌」は、「幸福への憧れ」「敵対する勢力」と連なる全長34mの壁画ですが、それらを忠実に再現した部屋も設置されていました。
その部屋にはBGMでベートーヴェンのいわゆる「第九」が流れていました。
年末にこの曲が流れると、私はこの壁画を思い出します。
展覧会の会期後も、永遠に残しておいてほしかった空間でした。

クリムトはもとより、ウィーンそのものを巡る展覧会であり、それはそれは夢の空間でした。
まさかの写真撮影OKだったエミーリエの肖像画は、今でも私のスマホに保存されています。

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帰り際に立ち寄った物販コーナーで、「売ってるポスター全種類ください」と言ったときの女性店員の表情は今でも覚えています。


つまり私はオーストリアを訪れるまで死ねない、ということです。
(ドイツ語全く分からないですが。)

我が家にはキュヴェ・クリムトというスパークリングワインが眠っていますが、いつか一緒に飲んでくれるような方とウィーンを巡れたら幸せですね。

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では。

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バイオ系の学部を卒業した筈なのに、紆余曲折を経てフリーの通信インフラ系エンジニアとして開業。 仕事、科学、芸術、読書など色々書けると楽しそう。 サイトマップはプロフィールからご確認ください。