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大石内蔵助も垂涎!討ち入りTKG

何やら物騒なタイトルで驚かせてしまっただろうか。安心してください、討ち入りの予定は今のところありません。


非常に個人的な事情ではあるけれど、今日はちょっとした記念日になった。ようし、刺身でも買ってきて今夜は祝杯じゃー!と思いながら大帝国ロピアに行ってみたところ、なんと、かねてよりネットリと憧れの視線を注いでいたあの食材に遭遇したのだ。しかもパッケージには、燦然と輝く『半額』の二文字(消費期限は本日)。


ついにこの時がやって来たか……



浪士たちは、諸方にわかれ、決められた時刻に合わせて、本所の道筋で合流したのだが、大石内蔵助・主税の父子は、泊っていた宿屋から近い、日本橋・矢ノ倉の堀部弥兵衛の浪宅へ行き、身支度をととのえた。
このとき、堀部家では、生卵を大量に鉢へ割り込み、味をつけ、別に煎りつけた鴨の肉を小さく切って混ぜ合わせ、炊きたての飯にかけ、膳に出したという。大石内蔵助は、大変によろこび、
「旨い。弥兵衛殿の御内儀は、気がきいたものを出してくれた」
と、いったそうな。私も、まねをしてやってみたが、ちょっと旨いものである。



敬愛する池波正太郎御大の著作『剣客商売 庖丁ごよみ』。私はこの本が大好きで大好きで、もう何千回読み返したか分からないほどだ。かの名作『剣客商売』に出てくるお料理の数々を、池波先生が懇意にしていた凄腕料理人・近藤文夫さんが実際に再現したものが収録されている。旬の食材を使用し、日本料理の名手が腕をふるったうつくしいお料理の数々がずらりと並ぶ本作は、幾度読み返しても飽きるということがない。池波先生自らが筆をとって描かれた挿絵も素晴らしく、正に我が人生のバイブル中のバイブル。私が死んだ時に棺桶に一冊だけ本を入れてよろしいと言われたら、おそらくこれを選ぶだろう。


今夜はこの本の中から、つねづねいつか作ってみたいと憧れていた、かの有名な赤穂浪士・大石内蔵助さんが討ち入り前に召しあがったと伝えられる、鴨肉を使ったたまごかけごはん―――討ち入りTKGを作ってみることにした。


お米を一合といで土鍋に移し、180ccの水を入れて1時間程度給水させる。給水後に土鍋を強火にかけ、沸騰してきたらごく弱火まで火加減を落とし、15分程度炊く。最後にまた火加減を強火に戻して、10秒程度加熱してから火を止めて、10分間蒸らす。

この間にフライパンを火にかけ、油を敷かずに鴨肉を両面しっかり焼きつける。恥ずかしながら、鴨などという貴族の食材を扱うのは生まれて初めてだったのだけれど、ものすごい脂が出ますわね!全盛期のワカナのデコ油だってここまでドバドバじゃなかった気がするな。潤沢な脂におののきつつも、焼き色がついたところで火から下ろし、小さめの一口大にカットしておく。

鴨の脂が残ったフライパンに、醤油と料理酒、みりんをほんの少し入れて加熱する。すぐにジルが泡立ってくるので、ここに鴨肉を戻し入れ、さっと煮含めてから火を止める。加熱しすぎるとせっかくのお肉が固くなってしまいそうなので、40秒くらいで火を止めた。

生たまご2個のうち、白身ふたつぶんと黄身ひとつぶんを割りほぐし、この中に鴨肉だけを投入して混ぜ合わせておく。

蒸らしタイムが終わったごはんをさっくりとひと混ぜしたら、鴨肉入り生たまごをかけ、鴨肉の煮汁も適当に回しかける。最後に取り分けておいたたまごの黄身と、紫蘇の実漬けをあしらったらできあがり。


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ウホホホホゥ……!憧れの討ち入りTKGだ……!(恍惚)


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ちょっとだけだけど、おこげもできてるゥ……!(悶絶)


炊きたてごはんにたまご、それだけでも充分に至高なのだけれど、今夜のTKGは至高にして究極と言っても差し支えないのでは?!ってくらい、もうもうもうどちゃくそめちゃんこおーいしーい!!!!!さっと火を通した鴨肉を噛みしめれば、驚くほどのやわらかさと共に、芳醇な肉のジルと旨みが口の中いっぱいに広がってゆく。決してしつこくはないのに、この香り高さといったらどうだろう!日頃食べつけている鶏肉では決して味わえない、独特のクセがたまらない!醤油と料理酒のみの味つけで、出汁的なものは何も入れていないというのに……なんて奥行きのある旨み。つい先ほど私をおののかせた脂力(アブラヂカラ)、伊達じゃあないな。お肉そのものはさっぱりとしているのに、そのさっぱり感の後から濃厚なコクがゆるやかに追いかけてきて、さらにたっぷり入れたたまごがまろやかにそれを包み込んで……なんといううつくしいハーモニー。ちょっとだけできたおこげが、その上品な旋律の中に香ばしさというパンチを効かせてくれているのも最高だ。ウウウ、おいしい、おいしいよう……。あれ……?これは、涙?私、泣いてるの……?

あまりのおいしさに冗談でなく涙ぐみつつ、気が付くと一合めしがきれいさっぱりなくなっていた。普段夜にあまりごはんを食べない民としては、かなり大量であったにも関わらず、不思議と嫌なもたれ感はない。残ったのは鴨肉の香りと、全身を満たすとてつもない満足感のみ……!ごちそうさまでした。


寒い寒い雪の夜、主君の仇を討つために極限まで緊張感と覚悟を高めているさなか、こんなごはんが出てきたらそりゃあ感激するだろうな。今のところ全く予定はないけれど、もし将来的に討ち入りしなきゃいけなくなったら、私もこれ食べて英気を養いたいわ。


で、冒頭に書いた記念日ってーのはコレ。


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いやあ、よく続いたもんだ。私がいちばんびっくりしております。


一年間連続更新については、noteを書き始めてからしばらくは全く意識していなかった。更新記録が半年を過ぎる頃になってからも、ひょっとしたらイケるかもしれないけれど、まあ続かないだろう、くらいの気持ちでいた。それがまあ、よもやよもや、一年間続くとはなあ。

一年続いたら、記念にあんなことやこんなことを書きたいな、と最近はぼんやり考えていたのだけれど、こうしてその日を迎えてみると、なんだかうまく言葉をまとめられずにいます。いや普段からうまいことまとまった記事なんて書けておりませんけれども、ともかく……そのうち筆が乗ったら(なんて言い方もおこがましいですが)、あんなことやこんなことを綴ってみたいと思います。

この一年間、ずいぶん大勢の方々に拙宅へとお運びいただきましたし、私自身もたくさんの魅力的なクリエイターさんとのご縁に恵まれました。実際お会いしたことはないけれど、まるで同じ街に暮らすご近所さんのような感覚で、勝手ながら親しみを抱いております。すてきな方々の暮らすこの街で、毎日ワクワクしたりドキドキしたりきゅんきゅんしたりグルグルしたり(腹の虫が)、そんな一年間を過ごさせていただきました。本当にありがとうございました!そして、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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