下呂一人旅(1)

今年の一月は研究でほぼ一カ月海外にいた。
日本に帰ってきた後、周りからしきりに言われたのが、

「久しぶりに日本に帰ってきたんだし、温泉とか行かないの?」

という文言である。
日本で長旅の疲れをいやしてゆっくりするといえば温泉なのだろう。
斜に構えてると思われるかもしれないが、一カ月くらいだと正直そこまで日本のことが恋しくならなかった。

「ご飯が恋しかったでしょ?」

という文言も日本ではもちろん、海外にいるときすでに向こうの人に言われた。
ご飯はないならないで普通に過ごせるし、疲れた時は温泉に行くより家で寝てた方がいい。道中で疲れるからプラマイゼロだろと。

でも、そこまで言うなら行ってやろうと
ある金曜日ににわかに決意した僕はそのまま次の日の宿をネットで予約し、一泊二日下呂一人旅に出かけた。


なぜ下呂なのか特に深い理由はない。思い付きで決めた。
強いて言うなら学部時代の友達が下呂の旅館で働いているので、どんな所か少し気になってたからぐらいの理由である。
ただ、そいつと会うと絡みがめんどくさいのと、一人で旅したい気分だったので、行くとは連絡せず、見つかるかどうかひやひやしながらその旅館を覗きに行った。(幸いにも見つからずに済んだ)


1日目朝:岐阜駅→下呂駅

まず下呂温泉までのルートを決めなければならない。
たぶん特急ひだを使うのが一番早いが、値段はそこそこするし、そんなに急いで行っても下呂で時間を持て余したら地獄である。
さらに最近はちょくちょくドラクエウォークをやっているのだが、その中で日本中の有名スポットをまわるとアイテムが手に入るお土産というシステムがある。
岐阜県内のスポットには下呂温泉と岐阜駅も含まれている。(他にもあるがそこへはかなり寄り道しないといけなかった)
せっかくなので岐阜駅を経由して鈍行でのんびり道中を楽しみながら、アイテムを二つゲットできるというルートにした。

土曜日、時差ボケのせいで早朝に目が覚めてしまった僕はそのまま適当に荷物をリュックに詰め込んで、岐阜駅へと向かった。
岐阜駅でアイテムをゲットした僕は、特に岐阜でやることもないなと思い、JR高山本線に乗って下呂温泉に向かった。
到着まで二時間くらいあるので、一応本を持ってきていた。

ユヴァル・ノア・ハラリ著、「ホモ・デウス」
面白そうだと思い買ったのはいいが忙しくて読めてなかったので、いい機会だと思い読むことにした。
道中を楽しむと言いながら、結局ずっと本を読んでいただけで景色は全く見てない。家で本読んでるのとほとんど変わらない。
一瞬、隣に座ってた女の子が居眠りをしている時、僕の肩に寄っかかってきて、カップルで旅行に来てる感を味わえたが、もちろんその子は目的地に着くと何事もなかったかのようにすぐ電車を出て行った。

1日目昼:下呂駅→下呂温泉到着

画像1

そんなこんなで下呂駅に着いた。
この日は2月にしてはそこまで寒くなかった。
旅日和だなと思いつつ、マップ代わりにドラクエウォークを起動し、線路を挟んで逆側の温泉街の方へ向かった。

線路を越えると、沢山の登りが立ち並ぶthe温泉街という光景が目に入ってきた。
さらに進むと飛騨川に差し掛かり、橋を渡って向かい側にも温泉街が見えた。橋下の河川敷には噴泉池と呼ばれる有名な混浴温泉があるという情報をネットで目にしていたが、あまりにもむき出しで驚いた。
本当に川辺に何の仕切りもなく温泉があるだけである。
水着を着用すれば入れるらしいが、いったいどこで着替えるんだろう。

下呂についてから何をするかは全く決めていなかったが、昼時だったため、とりあえず昼飯を食べることにした。
この旅、最初の難関である。
僕はいつも一人でテーブル席を占領するのが申し訳なくて、一人外食を躊躇することが多い。
幸い橋を渡って温泉街を歩き始めてすぐラーメン屋を見つけた。
ラーメン屋といえば、カウンター席。
安心しきってドアを開けた自分を、店員さんの「こいつ一人で来たんだ」という一瞬こぼれた訝しげな表情が僕を突き刺した。
でもさすがプロである。
その一瞬以外は自然に対応してくれた。
店はカウンター席が8席程度あり、左からカップル、カップル、うちら花の女子大生最強みたいな女性三人組、端にちぢ困った僕の並びである。
途中で三人組が出ていき、年配の夫婦がかわりに座った。
他に特筆すべきことはなかった気がする。
ラーメンの味は普通でした。

1日目午後:また下呂駅へ

次の行先についてラーメンを待ってる最中スマホでリサーチした。
どうせ一泊するし、下呂探索は明日に回して、もう少し電車で先に行ってみてもいいかもしれない。
ちょうど良さそうな目的地として厳立峡という場所を見つけた。
御岳山の噴火による溶岩が固まってできた岩壁らしい。
写真からでもその迫力が伝わってきたので、今日の午後はその付近を探索することに決めた。
どうやら下呂駅から数駅離れた飛騨小坂駅からさらにバスに乗っていくことができるらしい。
僕はとりあえず下呂駅に戻ることにした。
駅で切符を購入後、時刻表を見て驚いた。

一日に三本しか電車が走ってない!

出身は田舎だが、今は都会に染まりきっている僕は反省した。
電車をオンタイムの移動手段として使えるという都会の感覚がどうかしてたんだなと。
しかもバスの時刻表を調べているとさらに驚愕した。
全然電車の到着時間とリンクしてない。
待ち時間が余裕で1時間くらいある。
というか午後出発だと飛騨小坂に着くのが3時過ぎ、その時点で厳立峡行きのバスはもうない。
本当の片道切符である。
電車に乗る前に確認して良かった。
おそらく何もないであろう飛騨小坂駅で謎に時間を潰し、ただ下呂に戻ってくるという謎の反復横跳びをすることになるところだった。

ただ切符はもう買ってしまっている。
払い戻しも考えたが、切符の有効期限は一週間ある。
厳立峡は次の日に行くことに決めた。
となれば今日下呂温泉周辺を探索せねばならない。
また僕は駅から温泉街を目指し歩き始めた。
結局、謎の下呂駅下呂温泉館で謎の反復横跳びをしている。


本格的な旅が始まる前に書き疲れてしまった。
一旦ここで区切って、後の話はまた今度にしよう。



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