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日本神話を元にモノノ怪-唐傘-を考える②【モノノ怪考察】



前回、モノノ怪-唐傘-のストーリーと関連深い伝承を持つ「日本神話」について紹介しました。

まだまだ描ききれないので今回は第二弾。

↓ 第一弾はこちら





天子様の妻「幸子様」



作中、会話内に「幸子様」という名前が挙がりました。
二ヵ月前に天子様とのお子様を授かったという女性の名です。

作中では一度名前が挙がるのみですが、公式Xにて天子様の正室(妻)であることが明かされています。

実際の大奥では将軍の子を産むのは側室(御中臈)の場合が主なため、幸子様もフキ様らと同じく御中臈様なのかと思っていたので意外でした。
正室との子を持った将軍は二人くらいしかいなかったはず…

公式Xより


大奥の最大権力「御台所」



実際の大奥は、将軍のための機関でありながら、大奥を統括する最も強い権力を持つのは将軍の正室である御台所であったと言われています。

大奥を描く上で欠かせない存在だと思うのですが、今作では御台所である幸子様についてはほとんど明かされませんでした。

次回作以降で大きく関わってくるのは確実でしょう。


幸子様は不遇の妻?



天子様の子を授かった幸子様ですが、女中たちの会話で「お子様は姫様だったから…」とある通り、産まれた子供は女児だったようです。

大奥は世継ぎを産むための機関ですから、将軍になり得ない女児の誕生が歓迎されないというのは想像に容易いでしょう。

幸子様らしき人物が映るのは、部屋でひとり我が子を抱える一カットのみで、天子の隣に幸子様の姿はありません。
一方で天子様は、御中臈であるフキ様に夢中のご様子。

実際の大奥でも、世継ぎにならない子は居ないものとして扱われると言った話も聞きますので、産まれたばかりの子と幸子様に興味を示さない天子様の様子は当然なのかもしれません。


幸子様のお子様の誕生を祝うはずの大餅曳にも出席しておらず、どうしても幸子様は大奥内で冷遇されているように見えてしまいました。

(隣の白髪の女性は生母様?)



また、詳細は分かりませんが「幸子様は出産にご苦労なされた」と三郎丸の言及もありました。

「苦労して産んだ子が望まれず、自分はひどい扱いを受ける」

どうでしょう、いかにもモノノ怪らしい不遇な女性の情念の香りがプンプンしてきませんか…。

アニメ版の座敷童子にも似ている気がしますね。



二人の神「イザナギとイザナミ」



今回はこの二人の神様を軸にモノノ怪-唐傘-を考えてみましょう。

伊邪那岐命(イザナギノミコト)
伊邪那美命(イザナミノミコト)

この二人は夫婦で、有名な神話「国生み」では多くの神様や国土を生みました。


捨てられた子「淡島」



この映画を見る前、キャラクターの名称に何か意味はあるのかと片っ端から検索していたのですが、日本神話の中に「淡島」という名前があることを知りました。

イザナギとイザナミの神話「国生み」で、二人は国土や神様を生み出していきます。

そこで最初に産まれたのが「ヒルコ」という子でした。
ヒルコは、姿が醜く手足の立たない不具の子だったため、海に流され捨てられてしまったのです。

次に産まれた「アハシマ」も同じく不具のため捨てられ、最初の二人は子として数えないという扱いを受けてしまいました。

・高天原に産まれ神の子として育てられる → 大奥に従事し女中として育てられる
・神の子として成熟する → 女中として出世する

という表現であるならば、このアハシマはやはりこの神話に出てくる淡島をモデルとしているのかもしれません。



モノノ怪を生んだのは天子様?



高天原で妻と共に神々を産むイザナギ、
大奥で女中と共に世継ぎを産む天子様。

非常によく似た構造で、天子様はイザナギがモデルであると考えています。

先程ご紹介した「不具であったイザナミの子が捨てられ数えられない」という神話と、「世継ぎにならない天子様の子は冷遇される」という点もよく似ていますね。


さて、前回の記事で「三貴子」という三人の神様を紹介しました。

アマテラス・ツクヨミ・スサノオという三人の神で、エンドロールの柱にそれぞれ神の姿が描かれていることから、
三貴子が三部作における三体のモノノ怪にあたるという話をしました。


そしてこの三貴子、イザナギから産まれたのです。

つまり、上記二点の説を合わせると、「モノノ怪は天子様が生んだ」という説が浮かび上がってきます。


三部作にわたり三体のモノノ怪をすべて倒し、三つそれぞれの”理”が明かされたとき、一見別々であったモノノ怪たちが一つの大きな事件や情念に集約する。という可能性も大いにあるでしょう。

つまりは三作全ての原因となる黒幕がいるというわけです。

謎が多すぎる上、この情念渦巻く大奥の頂点に君臨する人物ですから、とにかく怪しさ全開ですね。
はたして天子様は黒幕なのか。はたまた他の人物なのか。


イザナギの神話「黄泉の国」



イザナギとイザナミの神話に「黄泉の国」というものがあります。

黄泉(よみ)の国とはいわゆるあの世。


太陽の神アマテラスなどを産んだイザナミは、火の神を産むと全身を火傷し亡くなってしまいました。

イザナミを恋しく思ったイザナギは黄泉の国へと会いに行くのですが、そこで目にしたイザナミは、もう既に黄泉の者となってしまっていました。

かつて創世母神であったイザナミの姿は禍々しい姿へと変貌し、「黄泉津大神」と呼ばれる死を司る黄泉国の神となってしまったというお話です。


情念によってモノノ怪へと姿を変えてしまう本作品の女性たちによく似ていますね。

天子様がイザナギとするとイザナミにあたるのは幸子様なので、幸子様がこのような悲しいことになってしまわないといいのですが…


神の家族と大奥の対比



これまた前回の記事を前提とした考察になってしまい申し訳ないのですが。

前回、「アマテラス=北川」という話をしました。

アマテラスもアハシマも、イザナギとイザナミによって生まれました。


大奥の頂点に位置する天子様と幸子様を「親」だとすると、大奥の女中たちは「子」に位置します。

つまりこの大奥全体を、イザナギとイザナミをはじめとする神の家族に当てはめているのではないでしょうか。


三貴子と三体のモノノ怪が対比になっていることは確実なので、残る敵となる二体のモノノ怪も、北川と同じく女中の誰かなのではないでしょうか。



多くの共通点を持ち、確実にこの映画との関連を持つイザナギとイザナミや、三貴子を始めとした神々のお話。

日本神話について知ると多くのことが見えてくるので、ぜひ調べてみてください。


読んでいただきありがとうございます。

他にも関連するお話やご自身の考察などありましたらぜひお気軽にコメントしてほしいです!

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