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モノノ怪-唐傘-には悪役がいない【モノノ怪考察】




劇場版モノノ怪-唐傘-を観ました。

TVシリーズとの大きな違いを感じたので、個人的に気づいた点をまとめます。

考察はもう溢れ出して止まらないので、別の記事で…。



アニメ「モノノ怪」との違い



17年の月日を経て、かなり大胆にアップグレードされていると感じました。

元の魅力はそのままに、豪華絢爛な大奥を描くにふさわしい極彩美。

映画館に来たのか美術館に来たのかわからなくなってしまう程のあまりの美しさに、「瞬きが惜しい」とはまさにこのことかと息を吞みました。



薬売りの性格



今回の映画にあたって大きく変化したものの代表として、やはり主人公「薬売り」の変化ではないでしょうか。

デザインや声も変わり、さらには「アニメ版とは別人である」という公式からの明言で、TVシリーズからのファンは大きく揺るがされたことでしょう。

見た目や声の変化は言わずもがなだと思いますので、今回は「性格」に着目して気になったシーンを一つ。

モノノ怪の魔の手が淡島に向けられる四日目のシーンです。

カメの悲鳴を聞いて駆け付けたアサに、「カメさんは土間側にいる。」と薬売りが居場所を教えます。

アニメ版の薬売りはしない行動だと思いませんか?


というのも、これはモノノ怪が現れた危機的状況の中で、咄嗟に「カメを心配するアサを安心させてあげる」という行動なんですよ。

アサのカメへ抱く想いを汲んでいるのが、他人への関心を持っている感じがして、今までの薬売りにはなかった部分のように見えました。


劇場版ということで「静」のアニメと「動」の映画という変化を強く感じて、縦横無尽に飛び回るアクティブな薬売りさんが見られたのも、今回のアニメ版との違いかもしれません。



退魔の剣のモデル



薬売りが変化したということはもちろん、もう一つの姿である「神儀」も大きく変わりました。

普段のアニメでは薬売り→神儀の変身ってとても淡泊だったイメージなのですが、今回は力の入った変身シーンが描かれていましたね。


神儀の変化で特に目に留まったのは、退魔の剣のデザイン
柄の部分のデザインが一新したのは皆さんお気づきでしょうが、私は特徴的な刃の形が気になりました。

これ、七支刀っぽくないですか??


刃先が枝分かれしているアレです。
アニメ版のシンプルな剣っぽい形とは全然変わっていますね。

実際には武器というより儀式に使われるものらしいんですが、それが今回の御水様のテーマや神儀の神様っぽい雰囲気にマッチしていました。



キャラクターの"個"



今回の映画、「キャラクター」がとても魅力的でした。


今までモノノ怪という作品では、事件自体や真となった人物の情念などは描かれるのですが、キャラクターのパーソナルな部分は判明しないまま終わってしまうことがほとんどでした。


ところが今回は、新人女中アサとカメを主軸にし、女中各々が持つ大奥への想いや女中同士の関係性までも描かれました。

映画を観ながらアサを応援したり、カメにイライラしたり、アサとカメの仲にドキドキした人も多いんじゃないでしょうか。

視聴者がキャラクター個人に魅力を見出したり感情移入するというのは、モノノ怪において初めてだったので、またひとつ作品としての強みを得たように感じました。


明確に悪い人がいない



私はこの映画のテーマが「唐傘」であると発表されたときに、唐傘という妖怪について調べました。

妖怪話によく出てくる傘に一つ目と一本足が生えている妖怪を頭に浮かべ、「なにか悪いことする妖怪だっけ?」と思ったのです。そんな印象なくないですか?

で、調べたところ、結局あまり悪い伝承が出てこなくて。

捨てられた傘がその恨みで妖怪になってしまっただけで、
悪い奴というよりは可哀想な奴」という印象を受けました。

その印象を持ったまま映画を見たところ、すごく今回の映画にぴったりなテーマだったと思いました。

今までのTVシリーズは悪意を持った明確な悪役がいて、その被害を受けた人がモノノ怪となってしまうものでした。

それと比べると今回は誰も悪い人がいないんです。


一見敵っぽい歌山様も淡島さんも麦谷さんも、各々が持つ想いがあって、大切なものを捨てて"渇いて"しまった被害者でもあって。


「唐傘はモノノ怪になりうる悪い奴なのか?」という疑問を持って観ただけに、アサの「北川様は誰も恨んでいない」という台詞にはハッとさせられ、私の胸の中にあったこの疑問が晴れた瞬間でした。

北川様はとてもお優しい方だったのでしょうね。


次回作以降はこの限りでない



私がこの記事を書きながらX(旧Twitter)を見ていると、こんなポストを発見いたしました。


モノノ怪の制作であるツインエンジンの山本幸治さんの発言です。

自身の感じた「悪い人がいない」という解釈に公式からの赤丸をつけてもらった感覚に喜びを覚えつつ、なんとも不穏な一文が添えられていることに恐怖しました。


「悪い人がいない、は唐傘にしかかけていない」
つまり

今後の展開で黒幕が判明する!

というわけです。


そりゃそうですよね。大奥を舞台にしておいて、あんな不気味な後味を残しておいて、怨情の一つもないなんてモノノ怪じゃありません。



公式からの不穏な明言により、期待と恐怖の入り混じる高揚が沸き上がってきますね。

高まりますッ!


まだまだこの映画を完全に消化できていないので、コツコツ考察記事をかきながら次回作を待ちたいと思います!


この記事を読んでいただいた方がいるのであればとても嬉しいです。
他人と考察を交わすことが魅力の作品だと思いますので、ぜひコメント等もお待ちしております。




今回話した「キャラクターの個」や「悪い人がいない」という話について、別の記事で詳しく書きました。

よければ読んでみてください♪




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