クソお世話になりました
2年前の冬、今までで1番肥えていた。
上京し働き出すも、環境が合わずすぐに地元に帰ってきた。当時、コロナ禍や上京のストレスから体重は激減し、50キロぐらいだった。身長は180cmである。
慣れない環境、労働から解放されて安心しきっていたが、次の仕事に一歩踏み出せず、不安から家に引き篭もるようになった。することもなく、家に引き篭もるとどうなるか。口が寂しくなったので、何かしら食べ物を口にしていた。食べると不安が紛れる気がした。
家から出る手段としてジムに通っていた。仲のいいトレーナーさんがいつも声をかけてくれていたのだが、ぶくぶく太っていく僕を見て一言。
「この肉、筋肉じゃないよね?」
就職活動を始めるもスーツがぴちぴち。パンツのチャックが閉まらなくなり、新しく買いなおすことにした。この時体重は70キロを超えていた。
なんとか林業の会社に採用された。新卒のレールを外れたこと、太ったことから自信をなくし、面接もかなり緊張した。それでも採用してくれた。今までで1番嬉しい、いや、ほっとした瞬間だったように思う。
仕事を始めると、山で自然と触れ合い、たくさんの作業班の方と話すことになる。体を動かすので必然的に痩せていった。
林業のおじさんたちはやたらとバイクが好きだ。僕も何回かツーリングに連れて行ってもらえた。
仕事だろうが遊びだろうが、人と何かをやり遂げるのはとても楽しいしやりがいがある。それを学生時代は当たり前にやっていたのだが、社会人になってからは意識するようになった。
声を出すのも大事だと気づいた。山に行けば作業班と張り合わなければいけない。声を出すと体が軽くなる。カラオケにも行くようになった。1人で行けば歌いたい歌を、人目を気にせず歌いまくれる。
林業の会社に入ってよかった。山に登ったおかげで痩せることができたし、自信を喪失した僕をたくさんの方が支えてくれた。休職してもボーナスをいただけた。
縁があり、来月から屋久島で農業をすることになった。環境が変わることに不安もあるが、自然が多い屋久島で働けることにワクワクしている。
2年前の太った自分では考えられない選択だ。そんな選択をできるように成長させてくれたのが、林業の会社であり、自然の力だと思っている。
「クソお世話になりました。」