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伊豆急下田駅と共に60年、人と人を繋ぐお店「下田時計台フロント」

伊豆急下田駅前に建つ「下田時計台フロント(以下、フロント)」。下田駅開通と共に開業したお店は、今年で60周年を迎えます。懐かしさを残しつつもモダンな店舗で、現在はお土産屋と飲食店の2業態で営業されています。「単なる品物を提供する場ではなく、人と人を繋ぐ場を作っていきたい」と語る代表の長池茂さん。お店作りにとてもこだわりを持っており、定期的にイベントを開催するなど、地域の賑わいづくりにも貢献されています。この場所でお店をやっていることで繋がる人のご縁、長池さんの考える下田の町への関わり方について聞いてみました。


――下田時計台フロントの歴史を教えてください。

元々は母方の祖父を含めた3名で昭和36年に「普論洞(ふろんと)」としてお店を始めました。当時、伊豆急下田駅の開通をきっかけに下田への観光客がたくさん押し寄せる中、観光産業の一員として奮闘してきました。バブル崩壊後、下田の観光業が衰退する中で経営が傾くなど、紆余曲折を経て現在に至ります。私は2012年から代表を務めています。そして当社も下田駅の開業と同じく今年で60周年を迎えます。

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――駅前の店舗ということで、多くの利用者がいらっしゃると思いますが、心がけていることはなんですか?

駅前という立地から下田へ来たお客様をお迎えし、下田を楽しんだお客様を最後に送り出すお店だと考えています。勝手ながら下田の玄関口としての使命も感じ、お客様に対しての対応をとても大切にしています。私が代表になった当時は経営が悪化していた時期でしたので、まずは当社の使命感を認識してもらい「接客面」から改善していきました。

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――店舗は古民家のイメージを残し、とても雰囲気が良い空間となっています。長池さんのお店作りのこだわりについて教えてください。

当時はよくある一般的な「お土産屋」だったので、「どのようなお店だったらお客様が喜んでくれるか、楽しんでくれるか、心地よくいられるか?」ということを自分なりに研究しました。雑貨店やカフェ、アパレルショップなども参考にし、女性目線なども取り入れ、気持ちよく買い物ができるお土産物屋さんを目指しました。もちろんBGMやライディングにもこだわったお店作りをしています。


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店頭に立っている時も、どんなお客様がどんなものを買っていくのか、どのあたりを見ているかなどをノートに書きとめたり、改善の方法を常に考えていました。「○○な人だったらどのように感じるか?」なども想像しながらです。そういう思いで商品レイアウトを行なっています。

まだまだ改善点はあるものの、少しずつですが理想的なお店作りに近づけています。

――地場の商品の見せ方などもとてもこだわられていますね。
〜 フロントセレクトのIPPINコーナーの展開 〜

今ある商品をどのようにクローズアップしたら良いのかを考え、フロント独自のセレクト商品を集めた「IPPIN(イッピン)」コーナーを作りました。初めてロゴマークを作り、オリジナルのブラントとして展開しています。

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今は結構な商品量になってきましたが、始めた当時は、「地域に眠っているものをもっと良くしていこう」という思いで探し回っていました。その頃に出会った1人に高橋養蜂さんがいます。当時は蜂蜜を使ったお土産も少なく、「知ってもらいたい、絶対人気になる」と思い、置かせていただきました。IPPINの中でも人気のロングセラー商品です。

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デザイナーさんとの繋がりもでき、パッケージや見せ方を工夫し付加価値をつけることで、単純に安売りしない売り方にこだわっています。買っていただくお客様の満足だけでなく、仕入れ業者さんや生産業者さんにも喜んでもらえる展開をしていきたいと思っています。

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――IPPINはお土産ものとしてだけでなくギフトやプレゼントにも使いやすい展開だと思います。ちなみに一番おすすめの商品はなんですか?

下田ミルクもちです。

フロントのオリジナル商品で、見た目からは想像がつかない「モチモチ」っとした食感に中の大納言あずきがアクセントとなっています。下田の歴史物語、ハリス・牛乳・お吉をモチーフに、開国の街にふさわしい和洋折衷のお菓子に仕上げました。

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下田らしいお土産はいくつかありますが、下田ミルクもちができるまでは、「フロント独自の下田名物」というものがありませんでした。それを作ることがきっかけで生まれた商品です。製造は下田の洋菓子店「ケークスカノン(以下、カノン)」につくっていただいてます。カノンの代表は私の同級生で、他の業者さんともいくつかのコラボ商品づくりをやっていました。地元で頑張る同業者として、また同級生としてのつながりからお願いしました。メディアでも取り上げられたこともあり今ではフロントの一番人気商品です!

下田ミルクもちはオンラインショップでも購入でき、ふるさと納税の商品にもなっています。


――飲食店の方はどのようなこだわりがありますか?

飲食店の方では駅前ということで待ち時間で使われる方も多いため、お食事だけでなく甘味・カフェなども提供しています。 お食事の方では調理長の同級生や仲間が漁師やっていることから、地元の食材を利用したメニューに力を入れています。金目鯛の炙り寿司下田カレーうどんは特に人気です。

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甘味やカフェでは下田の洋菓子店「ケセラセラ」に作っていただいている究極の紅茶のシフォンケーキが人気です。

――お土産屋・飲食店、どちらも人の繋がりを活かされているんですね!


――地域に開かれたイベントなども行っていますが、きっかけは?

2階に元々寄席(よせ)で使っていたスペースがあるんですが、当時はあまり利用されていませんでした。そこを活かせないかと思い、イベントを開催している知り合いとクラフトマーケットのような「手作り市」を開催したのがきっかけです。開催してみると予想以上に盛り上がり、駅前の立地ということもあって、多くの観光客や地元の方に来ていただけました。お店を知っていただく良いきっかけとなり、それ以降定期的にイベントを開催するようになりました。

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他にも音楽ライブイベントやリーディングカフェ、写真イベントなども開催しています。

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イベントを通じて、参加者同士のつながりが生まれたり、ビジネスに繋がったりと「人と人を繋ぐ場」というコセンプトにもあった使い方ができています。

※現在はコロナ禍もあり、イベントは開催を見合わせています。


――駅前という立地でとてもよい交流の場となっていますね。

そうですね、イベントを開催した時に、地元の人同士が交流するだけでなく、観光客も巻き込んで集客できるというのが駅前立地のメリットです。イベントを開催することで新しいつながりができるなど良い循環が生まれています。

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――ワーケーションや関係人口の創出という点でも繋がりを生みやすそうですね。

最近は観光だけでなく仕事で来られているようなお客様も多くなったと感じています。そのようなお客様は公共交通機関を利用される方も多いと思いますので、駅前のお店がお客様と地元を繋ぐ場にもなれると思います。

――最後に下田の町に対しての思いなどはありますか?

私が代表になった時に、ある人から「物を作るのも人、売るのも人、お客様も人、みんな大切にしろ」と言われてきました。自分自身も今までの人生の中で多くの人に助けられての「今」だと思っていますので、とにかく人を大切にしたいと考えています。

下田の町に対しても何をしていけるのか?と考えていますが、最終的には会社をよくしていくことが町のためになると思っています。会社をよくすることで、雇用が生まれたり、サービスが充実します。また、仕事を通じて、仕事から学ぶことで私や働く人たち、みんなが育ち、それが結果的に町おこしにも繋がるのではないかと私は思っています。

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駅前というたくさんの人が往来する場所で営業さていることに対する使命感、そしてお店作りや人づくりへのこだわりや意識の高さを感じました。今年で60周年を迎える下田時計台フロントですが、長池さんが代表となられてからは来年で10年となります。この10年でお店としてもたくさんの変化があり、長池さん自身もたくさんの良い繋がりを作られています。「人と人を繋ぐお店」、そしてお客様だけでなく、仕入れ業者さんや生産者さんにも喜んでもらえるお店作りは、今もまだ進化し続けています。

WITH SHIMODA ライター:温泉民宿 勝五郎 土屋尊司
写真提供:下田時計台フロント、土屋尊司

下田時計台フロント
〒415-0035 静岡県下田市東本郷1-5-2
営業時間:9:00~17:00
TEL:0558-22-1256 FAX:0558-23-3256
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