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支援の入り口はどこにある?

たまには自分の所属事業の話を書こうと思います。
 
 
ちょうど、ではないんだけど6月1日にスタートした生活訓練もひと月以上経ちました。
元々就労移行の多機能型として開設しているのでひとまずは10名の定員でスタートしていますが、ありがたいことにたくさんの方にお問い合わせいただいて利用をしてくださるようになった方がおられます。
思ったよりも早いペースで利用してくださる方が増えるのは嬉しくもありながら現場スタッフは対応に追われているという状況です。
 
 
まぁそれはさておき。
 
 
 
開設時からずっと考えていた事業所のコンセプトのようなものがいくつかあります。
 
 
①将来ひとり暮らしができるぐらいの生活能力を身につける支援のための家(HOME)
 
②集う装置としての家(HOME)

③支援の入り口になれる家(HOME)

 
です。
 
 
 
①については、就労移行単体で運営していたんですが、実際にうちの事業所から就労する方の中でも、将来ひとり暮らしをしたいと考えているが生活能力に自信がなくて、その部分の支援を必要とする方が今までも実際にいました。
まぁグループホームなどを使えばそれでもいいのかもしれないんですが、結局就労移行や定着支援の中でサポートをすることが結構多くて。
だったらきちんと生活の訓練をするための環境が要るよね、という思いはありました。
 
 
そんな中で、たまたま僕の地域の障害福祉とは違う分野の仲間達が「家」という空間を使った事業所づくりをしている場面をいくつか見させてもらうことがあって、そこから「あれ?生活能力を身につけるんだったら家という場所でそのままやれば自然に生活が身につくんじゃないか」ということがバチンと来ました。
家という空間で行う動作であれば、あらゆる活動が生活の訓練に繋がるので、理に適っています。
パクリと言えばパクリなんですが・・・笑。
 
 
そして家を活動場所にすると、僕らは思いきり住宅街の中で活動することになるわけなんですが、これは願ったり叶ったりです。
 
 
元々生活訓練だけをするつもりもなく、地域に知ってもらいながら次の動線に繋げるためのハブのような事業所にしていくつもりだったので、好都合だったんです。
それが②です。
 
 
コロナ禍ですぐには動けない部分もありますが、この場所を色んな人が「集う」ための場所として思いついてもらえるようにしておきたいな、と思っているんです。
 
 
地域の方の忘年会の会場になるのが目標です。
 
 
それくらい馴染めたら、普段は何やってんのか分からない福祉事業所、を脱却できるので。
 
 
この辺りはまた改めて触れようと思います。
 
 
 
問題は③です。
 
 
支援の入り口としてのHOME というコンセプト。
 
 
多分僕が住んでる地域だけではないと思うんですが、制度のスキマに落ち込んでいて、支援の手がなかなか届けられていない方って、結構な数いるんじゃないかと思うんです。
 
 
対応する福祉制度がなくて、誰を頼ったらいいか、どこに相談したらいいか分からないまま時間だけが過ぎたり、相談できても社会資源がない、が起きてるんです。
 
 
そんな地域課題に少しでもこのHOMEが応えられる場所になるんじゃないかと思ってこのコンセプトを掲げました。
 
 
具体的には緊急避難先としての受け入れなどの宿泊や滞在機能、そして、僕の地域では多分そこそこ大きめな課題になってる「成人期のひきこもり」の方の居場所機能です。
 
 
家という場所は本来、暮らしの舞台であり、居場所です。だったらこのHOMEは、暮らしを脅かされてる人や、居場所を失ってる方のための存在になれるはず。
 
 
ところが蓋を開けてみると、相談がある方のほとんどがその「ひきこもり」経験を持たれた方でした。いわゆる王道の生活訓練というニーズよりも圧倒的に。生活の訓練よりもまず、家から出るということから始める、通うことから始める支援を必要としている相談ばかりでした。
つまり、それだけどこにも支援と繋がっていなかった方がいた、という事です。
それまでどこにも行けず、家にこもっていたんです。
 
 
少しゾッとしました。
 
 
 
多分、どこにも相談に行っていなかったわけではないんだと思います。どこかしらには相談に行ったのかもしれません。どこかしらの機関には行ってみたのかもしれません。でも仮にそうだったとしても、彼らが外に出ていこうと思えるきっかけになり得なかったこと、それと「引きこもり」という問題だけではない何かもっと根本的な問題解決に繋がっていないのであろう事に、色々と考えさせられています。
 
 
相談に来るのを待っているだけじゃダメで、手帳の有無とかサービス種別がどうとかでなんでも棲み分けをくっきりと作ってしまえばいいものでもなくて、もっと僕らは能動的に課題に自分達から近寄りにいかないといけないし、全てを制度にアジャストして当て込んでいくんじゃなくて、受け止め方にも多様性を持たなければならないような気がしています。
コロナ禍だったこともあり、開設にあたってはいわゆるチラシを配り回ったりすることはあまりできていません。
SNSや人の繋がりからご相談に至ったものがほとんどです。
行政の窓口でも、公的な相談機関でもなく、いわゆる口コミです。
 
 
繋がることや、情報の届け方、届き方、考え直さないといけない時代になってきてるんじゃないかなぁ、とつくづく考えさせられてしまいます。
 

 
 
ありがたいことに、今のところご相談にいらしていただいた方は皆さん通い始めて、それぞれのペースでHOMEでの活動をし始められています。一応僕らは彼らにとって少しでもきっかけにはなれたのかも知れません。
それはすごく嬉しい事です。
 
 
たった1ヶ月のことではありますが、支援に携わっている者として、在り方を見つめ直す事になった1ヶ月でした。

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