Wish of Books

本の願いとは何でしょう。本を出版する事には、その本の出版に関わるあらゆる人々、著者をは…

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本の願いとは何でしょう。本を出版する事には、その本の出版に関わるあらゆる人々、著者をはじめ、編集者/装丁のデザイナー、書店の願いが込められています。新たな本との出会い、その本に込められた願いや出会いをお届けする古書店でありたいと想っています。

記事一覧

プリンセス・トヨトミ 文春文庫

 ちょっと掟破りだが、まずは「プリンセス・トヨトミ」の映画の感想から。 == 以下・映画版感想 ==  ごぞんじ万城目学の「関西にはけったいな人がいます」シリー…

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2年前

ジェノサイド 上 ・下 高野和明 角川文庫

 かなり前に読了したが、未だに「ふっ」と思い出してしまう、熱狂しつつ一気呵成にて読み通した一冊。  イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。…

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2年前

私の名は赤 オルハン・パムク ハヤカワepi文庫(上・下)

 知る人ぞ知るトルコのノーベル文学賞作家、オルハン・パムクの名作。東西の融合と衝突をテーマに創作活動を行う事も多い方のようですが、本作もその中核にはその想いはあ…

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2年前
2

銀二貫 高田郁 幻冬舎時代小説文庫

 NHKでドラマにもなった時代小説。高田節が心地よく、ページをめくるペースも早い。  大坂天満の寒天問屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。大…

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2年前
1

亜ノ国へ 柏葉幸子 角川書店

 柏葉幸子さんの、初一般向けファンタジー。  主人公の朴木塔子は、妊活中にもかかわらず浮気をした夫が不倫相手を妊娠させたと聞き、離婚し故郷に帰ってきた。彼女の叔…

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2年前

ツバキ文具店 小川糸 幻冬舎

 恒例、本屋大賞候補作という事でもなく、発表前に読んでいたこの本。  雨宮鳩子は、海外放浪生活を経て鎌倉に帰ってきた。先代=祖母の営んでいた代筆屋を継ぐために。…

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2年前

図書館の魔女 烏の伝言 高田大介 講談社

 2017年のベスト3冊のうちの1冊(というか、4冊がセット)の続編。  道案内の剛力たちに導かれ、山の尾根を行く逃避行の果てに、目指す港町に辿り着いたニザマ高級官…

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2年前
1

図書館の魔女 1~4 高田 大介 講談社文庫

 かのメフィスト賞受賞作。分厚い文庫本が四冊。恐れをなすか、にやりと笑って読み始めるかは、アナタ次第。  とある国々が接する海峡の帝国。そこには世界でも有名な図…

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2年前

フランケンシュタイン メアリー・シェリー (光文社古典新訳文庫)

 有名だけれども、あまり読まれない本の代表格というか。かの有名な「ディオダディ荘の怪奇談義」にて着想され執筆されたホラーSFという事になっている。SFというよりも、…

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2年前
4

熱帯 森見登美彦  文藝春秋

 やっぱり森見節、全開の一冊。没入できる語り口と謎の提示が好き。物語はこうでなくてはダメだという見本を提示してくれた。魅力的な話中話と、視点の移ろいが読者の想い…

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2年前
2

このあと どうしちゃおう ヨシタケシンスケ ブロンズ新社

 このシリーズ面白い。というか、ヨシタケシンスケさん、面白い。  そもそも、「死」をテーマにすること自体、珍しい絵本の世界。亡くなったおじいさんの残したノートを…

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2年前

ねじまき少女 パオロ・バチガルピ ハヤカワSF文庫

 上下巻のうち上巻は、ほぼ世界設定に費やしている。環境が崩壊したあとのタイが舞台。熱気と混沌の世界観が素晴らしい。交互に登場するキャラクタが見事に立ち上がってく…

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2年前

横溝正史

 映画「犬神家の一族」は、日本のマルチメディア戦略の元祖といえるだろう。角川が、角川春樹さんが生み出した「本とその他のメディアの一体化」によるコンテンツの売り方…

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2年前
1

屍人荘の殺人 今村昌弘 東京創元社

 第27回鮎川哲也賞受賞作。選評はなかなか素晴らしい。実績もこれまた素晴らしい。 『このミステリーがすごい!2018年版』第1位 『週刊文春』ミステリーベスト第1位 『201…

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2年前

ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎 新潮文庫

 2008年本屋大賞受賞作品。候補作の常連でありながら、なかなか大賞に届かなかった伊坂作品だが、この年にこの作品で受賞しました。 山本周五郎賞も受賞しているスリリン…

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2年前
2

盤上の向日葵 柚月 裕子 中央公論新社

 本屋大賞候補作きっかけで読んだ作品。将棋は、ミステリ系文学と、ほどよくマッチするようだ。  埼玉県の山中で身元不明の白骨死体が発見された。不可解なことに、一緒…

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2年前

プリンセス・トヨトミ 文春文庫

 ちょっと掟破りだが、まずは「プリンセス・トヨトミ」の映画の感想から。

== 以下・映画版感想 ==

 ごぞんじ万城目学の「関西にはけったいな人がいます」シリーズ大阪編が原作。天然大爆発の綾瀬はるかを見に行ったというのは公然の秘密である。やっぱり映画は原作と同一ではなく、身長180cmの超美形ハーフの旭ゲーンズグールを岡田将生が熱演。中年の変なおっさんの鳥居を綾瀬はるかが怪演?していた。原作

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ジェノサイド 上 ・下 高野和明 角川文庫

 かなり前に読了したが、未だに「ふっ」と思い出してしまう、熱狂しつつ一気呵成にて読み通した一冊。

 イラクで戦うアメリカ人傭兵と、日本で薬学を専攻する大学院生。、まったく無関係だった二人の運命が交錯する時、何かが始まる。そしてアメリカの情報機関が探ったある事実と動き出す人々。複数の糸が絡み合い、紡がれた結果はいかなる文様を描くのか。

 ノンストップのエンターテイメント。フィクションでありながら

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私の名は赤 オルハン・パムク ハヤカワepi文庫(上・下)

 知る人ぞ知るトルコのノーベル文学賞作家、オルハン・パムクの名作。東西の融合と衝突をテーマに創作活動を行う事も多い方のようですが、本作もその中核にはその想いはあるものの、殺人から始まるミステリーを軸に十二年ぶりに再開した男女の情を横軸にエンターテイメントな味付けもある長編小説である。

 叔父からイスタンブールに呼び戻されたカラは、十二年ぶりに従姉妹のシェキュレと再会する。彼女は二人の男の子の母親

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銀二貫 高田郁 幻冬舎時代小説文庫

 NHKでドラマにもなった時代小説。高田節が心地よく、ページをめくるペースも早い。

 大坂天満の寒天問屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。大火で焼失した天満宮再建のための大金だった。引きとられ松吉と改めた少年は、商人の厳しい躾と生活に耐えていく。料理人嘉平と愛娘真帆ら情深い人々に支えられ、松吉は新たな寒天作りを志すが、またもや大火が町を襲い、真帆は顔半面に火傷を負い姿を消す

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亜ノ国へ 柏葉幸子 角川書店

 柏葉幸子さんの、初一般向けファンタジー。

 主人公の朴木塔子は、妊活中にもかかわらず浮気をした夫が不倫相手を妊娠させたと聞き、離婚し故郷に帰ってきた。彼女の叔母が100歳で逝った時、彼女に遺産として祖父の家を残した。その家で、祖父のトランクを見つけて開けてみると、それは異世界への扉だった。異世界では、「まれ石=他の世界から来た者」として扱われ、その国の六祝様を選ぶ儀式に参加する幼いムリュの乳母

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ツバキ文具店 小川糸 幻冬舎

 恒例、本屋大賞候補作という事でもなく、発表前に読んでいたこの本。

 雨宮鳩子は、海外放浪生活を経て鎌倉に帰ってきた。先代=祖母の営んでいた代筆屋を継ぐために。文具屋を表の仕事として営みつつ、代筆屋として様々な依頼を受ける。絶縁状、借金のお断り、亡くなった父親に変わっての恋文等々・・・ 鎌倉の街並みに過ぎゆく季節とともに鳩子=ポッポちゃんは代筆屋として歩み始める。

 大きな事件は起こらない。淡

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図書館の魔女 烏の伝言 高田大介 講談社

 2017年のベスト3冊のうちの1冊(というか、4冊がセット)の続編。

 道案内の剛力たちに導かれ、山の尾根を行く逃避行の果てに、目指す港町に辿り着いたニザマ高級官僚の姫君と近衛兵の一行。しかし、休息の地と頼ったそこは、陰謀渦巻き、売国奴の跋扈する裏切り者の街と化していた。姫は廓に囚われ、兵士たちの半数以上が得体の知れない暗殺者に命を落とす……。

 まったく前作と繋がらない登場人物だが、中盤す

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図書館の魔女 1~4 高田 大介 講談社文庫

 かのメフィスト賞受賞作。分厚い文庫本が四冊。恐れをなすか、にやりと笑って読み始めるかは、アナタ次第。

 とある国々が接する海峡の帝国。そこには世界でも有名な図書館がある。その図書館よりも、その館長が歴代に渡り政治を操ってきたことは誰しも知るとおりだった。そして今。かの図書館には魔女が住むという。その魔女と送り込まれた男の子、キリヒトが出会ってから、時代は容赦なく回り始める。彼女と彼の行く手には

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フランケンシュタイン メアリー・シェリー (光文社古典新訳文庫)

 有名だけれども、あまり読まれない本の代表格というか。かの有名な「ディオダディ荘の怪奇談義」にて着想され執筆されたホラーSFという事になっている。SFというよりも、ファンタジックな設定に隠された人間の苦悩の話という方向が正しい。

 フランケンシュタインは怪物の名前ではなく、怪物を創出した科学者の名前である。話の大枠を作る冒険家とフランケンシュタインの回想と、怪物の苦悩の独白で構成される話は、幸せ

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熱帯 森見登美彦  文藝春秋

 やっぱり森見節、全開の一冊。没入できる語り口と謎の提示が好き。物語はこうでなくてはダメだという見本を提示してくれた。魅力的な話中話と、視点の移ろいが読者の想いを揺さぶってくれる。

 作家の森見登美彦は、スランプの中、不思議な古書店で「熱帯」という本を買う。夢中になって読む彼だが、読みかけの本は枕元から消えていた。その本の話を知り合いに話すと、「沈黙読書会」なる会に誘われ、「熱帯」を知る人に遭遇

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このあと どうしちゃおう ヨシタケシンスケ ブロンズ新社

 このシリーズ面白い。というか、ヨシタケシンスケさん、面白い。

 そもそも、「死」をテーマにすること自体、珍しい絵本の世界。亡くなったおじいさんの残したノートを紹介するという内容だけど、「絵本でこの発想!?」という第一印象が強烈すぎる。

・こんなかみさまにいてほしい
・てんごくってきっとこんなところ
・いじわるなアイツはきっとこんなじごくへいく
等々、発想が豊かすぎる(まあ、過去の本も同パター

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ねじまき少女 パオロ・バチガルピ ハヤカワSF文庫

 上下巻のうち上巻は、ほぼ世界設定に費やしている。環境が崩壊したあとのタイが舞台。熱気と混沌の世界観が素晴らしい。交互に登場するキャラクタが見事に立ち上がってくる前半は後半への期待感を盛り上げてくれる。
前半最後は、重要キャラクターの戦いでクローズされ、見事に後半へ。

 前半の最後から急激に展開が急になる。ねじまき少女・エミコは北にあるというねじまきの村に想いを馳せるが・・・

 遺伝子組み換え

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横溝正史

 映画「犬神家の一族」は、日本のマルチメディア戦略の元祖といえるだろう。角川が、角川春樹さんが生み出した「本とその他のメディアの一体化」によるコンテンツの売り方は、今でいうマルチメディア戦略だった。当時の勢いは凄かった。映画は石坂浩二さん、TVは古谷一行さんが金田一耕助を演じ一世を風靡した。角川文庫の横溝正史シリーズも本屋では平積みされて売られていた。その印象的な表紙は、すべて杉本一文さんが描かれ

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屍人荘の殺人 今村昌弘 東京創元社

 第27回鮎川哲也賞受賞作。選評はなかなか素晴らしい。実績もこれまた素晴らしい。
『このミステリーがすごい!2018年版』第1位
『週刊文春』ミステリーベスト第1位
『2018本格ミステリ・ベスト10』第1位

 神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、曰くつきの映画研究部の夏合宿に加わるため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねる。そこは、想像を絶する体験の場所だ

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ゴールデンスランバー 伊坂幸太郎 新潮文庫

 2008年本屋大賞受賞作品。候補作の常連でありながら、なかなか大賞に届かなかった伊坂作品だが、この年にこの作品で受賞しました。
山本周五郎賞も受賞しているスリリング・エンターテイメントの傑作と言えるでしょう。

 青柳雅春は、困惑していた。仙台にやってきた若き首相が暗殺され、その犯人が自分だと報道されている。直前にあった学生時代の友人、森田は「逃げろ」と言っていた・・・。事件の直前の描写から始ま

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盤上の向日葵 柚月 裕子 中央公論新社

 本屋大賞候補作きっかけで読んだ作品。将棋は、ミステリ系文学と、ほどよくマッチするようだ。

 埼玉県の山中で身元不明の白骨死体が発見された。不可解なことに、一緒に埋められていたのは名匠作の伝説の将棋駒。高額な将棋の駒を、なぜ一緒に埋めたのか・・。プロになれず、奨励会を去った佐野巡査と、県警捜査一課のベテラン刑事、石破は、手掛かりを求めて、駒の持ち主を探るが・・・

 典型的な警察小説。現在の刑事

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