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胎児心拍の基線細変動は何を表すのか?

胎児心拍数モニタリングは母体や胎児の異常をスクリーニングする目的で用いられる。その際、特にチェックすべき項目は以下の3つと言われる。
  1. 基線の高さ
  2.基線細変動の有無
  3.一過性変動の有無及び波形
これらの項目をチェックしつつ、ストレスを加えずに胎児心拍を観察したり(ノン・ストレス・テスト; NST)、人工的に子宮収縮を起こして分娩陣痛を再現し胎児心拍を観察したり(コントラクション・ストレス・テスト; CST)する。


では、2つ目の基線細変動とは何なのか?

○基線細変動は、交感神経と副交感神経の綱引きを表す。
端的に言うと、基線細変動の大部分は交感神経と副交感神経の緊張度合いに左右される。例えば、交感神経が相対的に過緊張になれば胎児心拍が速くなり、その後反応性に副交感神経が過緊張になり交感神経が抑制されることで胎児心拍は遅くなる。このような交感神経と副交感神経のせめぎ合いが基線細変動として確認されるのである。ただし、自律神経の拮抗作用の影響は約2/3で、残りの1/3は心臓の自律性や液性調節因子によると言われている。

それでは、胎児心拍と交感神経、副交感神経の発達の関係を見てみよう。

○心臓の発達
胎児心臓が拍動を開始するのは胎齢22~23日とされており、心拍動は超音波検査にて妊娠6週頃から観察される。妊娠9週頃に胎児心拍は最速となり(170~180bpm)、その後徐々に遅くなって出生時には120bpmにまで低下する。

○交感神経、副交感神経の発達
心臓の交感神経、副交感神経は発達の過程が異なる。副交感神経は胎児早期に発生し妊娠中に徐々に発達する。つまり、ある程度完成した状態で生まれてくる。一方、交感神経は妊娠中期に遅れて発生し、出生前後に急速に発達する。

○まとめると
・胎児心拍の基線細再変動は交感神経と副交感神経の綱引きを表す。
・副交感神経は、胎児早期に発生し妊娠中に発達。
・交感神経は、遅れて発生し出生前後に急速に発達。
・胎児心拍が妊娠9週を最速として徐々に遅くなっていくのは副交感神経の発達が先行することを表している?

○残った疑問
・心臓の交感神経がある程度発達して初めて胎児心拍の基線細変動が見られるということ?
・副交感神経の発達が先行するのは他の臓器も一緒?
・もしそうなら、系統発生において副交感神経の進化が先行したということ?

(参考:胎児骨系統疾患フォーラムHP
https://plaza.umin.ac.jp/~fskel/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page=%C2%DB%BB%F9%BF%B4%C7%EF%C0%A9%B8%E6%B5%A1%B9%BD


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