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研修医の日常の疑問を解消するためのマガジン

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病院の後輩研修医達に向けて、有用記事をまとめています。 「研修医一年目の、辛かったあの頃」 右も左も分からないまま、難解な医学書を買い漁るものの、 「研修が忙しすぎて読んでい… もっと読む
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#レジデント

不整脈の種類と重症度スペクトラム④

前回はスペクトラムの狭い2大疾患 スペクトラムの狭い2大疾患として、VFとPSVTを挙げました。この2疾患に「症状のスペクトラムが狭い」という共通点があったとは。そういう発想はなかったという方は多いでしょう。 今回はスペクトラムの広い2大疾患  今日のテーマは、スペクトラムが広いのに「頻度も」多い、AFとAFLです。これら2疾患は本当に多様な症候をきたし、病態も多様なので我々循環器の医師も日々苦労しているところです(なのに、頻度も多い)。まずは参考になる過去の記事を貼って

不整脈の種類と重症度スペクトラム③ 〜スペクトラムの狭い不整脈2種類〜

 前回までで、「おおまかな不整脈の分類」と、「それらが取りうる重症度のスペクトラム(幅)について説明してきました。  今日は個別具体について説明していきましょう。 図表の再確認 スペクトラムの狭い不整脈 もっとも重症度スペクトラムが狭い(疾患別の「色」枠が小さい)のはどれでしょうか? VF(心室細動) 左上を見てください。これは医療従事者みなさん、意義がないでしょう。VF(心室細動)という不整脈は、全例が「心肺停止」だからですね。モニターでVFをみたら確実にその患者は

不整脈の種類と重症度スペクトラム②

 前回、独断と偏見による、「モニターで不整脈出現時の考えかた」をざっくりお伝えしました。初学者に特におすすめの内容になっています。 前回の復習 実はまだ、この図の詳しい説明はしていません。縦軸が患者さんの重症度、横軸が不整脈の種類だよ、縦軸と横軸の「判断」はベテランになるほど正確になるし、初心者や新人は「ざっくり」でいいよということをお伝えしてきました。 不整脈の種類と、重症度スペクトラム では、この図の詳しい中身に入っていきましょう。不整脈の種類が、あちこちに書かれてい

不整脈の種類と重症度スペクトラム(独断と偏見)①

出ました、独断と偏見シリーズ!だけど現場で役立つ自信はメチャメチャありますので最後までお付き合いください! まずはこの図を「じっくり」見て解釈してみてください! ちゃんと「にらめっこ」できましたか? 2年目の研修医くらいであれば、自分で解釈して人に説明できるところまで読み込むことができると思います。「もう少し」この下の文章を読む前に、我慢してじっくり図とにらめっこしてほしいと思います。その方が、「絶対」タメになります! また循環器病棟に勤める3年目以上くらいの看護師

不整脈の種類と重症度スペクトラム

強心薬、DOBとMILどっちにしたら良い?

強心薬の使い方は難しいですよね。強心薬が必要な場面を判断し、「ちゃんと効いているか」を判断するのは経験を要すると思います。過去に記事を書いていますので、ぜひ参照していただければと思います。 では、強心薬が必要な場面が判断できたとします。 次に、強心薬のうち、β刺激薬(ドブタミン)を優先すべきか、PDE-3阻害薬(ミルリノンやオルプリノン)を優先すべきか、悩みますよね。 今日は、その話をします。 結論からいえば、まずドブタミン(DOB)を使い慣れろ いろいろ考える

利尿薬の種類 〜導入編〜

 前回の「降圧薬」に関係して利尿薬の話もしておきましょう。  教科書に載っているような厳密な分類はさておき、利尿薬を、臨床での役割を考えた上で分類します。 使用する「場面」ごとに整理された知識というのは臨床で「すぐ使える」知識になりますよ! WING先輩「流」、利尿薬の分類まず本記事では、分類の紹介をしましょう! 利尿薬グループ① 体液量のコントロール目的(いわゆる心不全・腎不全・肝不全による体液貯留に対して)① ループ利尿薬(体液コントロールの「主力」② トルバプ

はじめての降圧薬

「種類が多すぎる」ことが悩みのタネ 研修医で、外科や整形外科などをローテートしていると、入院患者さんの血圧管理を頼まれることもあるかもしれません。  また、症状はないものの「血圧が高い」というだけで救急外来を受診される患者さんを診ることもあるかもしれません。  でも、「降圧薬は種類が多すぎてお手上げ」になりやすいと思います。  この記事では特に「一年目」の研修医がおさえておくべき降圧薬の知識について「ざっくり」述べたいと思います。いつも通り結論からいきましょう! 結論

神経内科〜研修医から非専門医まで〜

 僕のブログほど(割り切りすぎて、怒られるレベル)ではないにせよ、かなり「初心者向けに割り切った」著書を見つけてしまいました!研修医でもすらすら読める、なのに「明日から即戦力間違いなしの一冊でした!フライングで紹介です! 神経内科専門医だけではカバーしきれないほどの「コモン」疾患〜脳梗塞〜 神経内科というと難病のイメージが強いですが、急性期市中病院にいると比較的多く出会うのが、「脳梗塞」。  生活習慣病の延長として発症する脳梗塞や、昨今高齢化とともに増えてきている「心房細

「前負荷」と「後負荷」を考えるときに、右心系と左心系を分けて考える必要はあるか?

 とても良いご質問をいただいたので、その内容をもとに、記事作成に至りました。みなさんのスキとコメントが僕のモチベーションにつながります! 上記タイトルの答えは 「右心系がよほど悪くない限り、右心系と左心系を分けて考える必要は、ない。そして『右心系だけが悪い』ことはめったにない。」 です。 右心系が先に悪くなることは結構レア先に後半について述べます。左心系よりも右心系が主に悪い患者さんというのは、多くの場合は重度の肺気腫(COPD)のような、肺疾患による肺高血圧が原因で

単一疾患として理解が困難な心房細動

 過去に心房細動について、コメディカル向けの内容で述べたことがあります。  心房細動には「切り口」によっていろいろと種類があります。 ですが、同じ「心房細動」でありながら「患者によって病像があまりにも異なり『過ぎ』る」ため、「心房細動」という単一疾患として理解するのが困難になったと思います。 そこで、「○○○な心房細動」のように、病態別の対応を考える必要性に迫られているなと感じていました。 患者と病態によって勧める治療すら異なる 実際に、患者さんに治療法につい

【診断】ER・初診で診断「名」を急がない

 診断にまつわる話をします。今回はERや、初診患者さんの診断についてです。 ERで診断「名」を急ぐ研修医と、患者・家族 みなさんは、ERで「診断名をつけること」にこだわり、苦労した経験はありませんか?  診断にこだわってしまい、どうしても患者さんあたりに費やす時間が長くなってしまう。診断「名」をつけることにこだわり、無駄に悩んでしまう。そして待ち時間の長さに患者さんからクレームを言われる。挙句の果てにコメディカルからも冷たい目で見られている。  そんな研修医のみなさんは

急性期のvolume control

 急性期の輸液戦略の「難しさ」について、「ざっくり」話します。 急性期の輸液戦略は難しい 多くの場合、急性期患者さんは、相対的に血管内volumeが不足することによる循環不全を呈します。そのため輸液戦略が重要になりますが、これが難しい、「迷子」になりかねないんです。 循環管理が大事な理由は、「酸素」が絶えず必要だから 「循環管理」とは、組織の必要とする栄養や酸素を不足無く供給できるように、医療的に介入することです。栄養はともかくとして、特に酸素の供給が追いついていないと、

BNPとの付き合い方

 みなさんは採血でBNPを測定する際、どのような意識で見ておられますか?  僕は、非常に重視しています。特に慢性心不全患者さんの「具合」が良いか悪いかを判断するのに非常に便利だと思っています。本記事ではBNPについて臨床医の立場からざっくり解説します。 BNPは心臓への負担を表す「バロメーター」 BNPをざっくり表すと、「心室筋の負担の程度を表すバロメーター」です。  もちろん入院中に毎日のようにBNPを測定するのは医療費節減の観点からは勧められません(治療がうまくいってい