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研修医の日常の疑問を解消するためのマガジン

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病院の後輩研修医達に向けて、有用記事をまとめています。 「研修医一年目の、辛かったあの頃」 右も左も分からないまま、難解な医学書を買い漁るものの、 「研修が忙しすぎて読んでい… もっと読む
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2020年10月の記事一覧

循環管理のうち「心臓」の部分

 実は、既に「急性期のvolume control」のところで述べたことですので、一部は復習になります。  ここでは、心拍出量(CO)の調整を行います。 心拍出量(CO) = 心拍数(HR) × 一回拍出量(SV)  なので、①レートの調整と、②一回拍出量の調整の2点になります。  ①レートの調整について。  特に不整脈がなければ普通、「必要なだけのレートになるように自動で調整される」はずです。ですが、その心拍数が100bpm. とかになるようであれば、それはさすがに「

虚血性心疾患は全例「大急ぎ」か?

 みなさんは虚血性心疾患というとどんなイメージをお持ちでしょうか?  典型的な病気は「急性心筋梗塞」ですよね。  そのイメージのせいか、「虚血性心疾患は全例緊急性が高くて、大慌てで心臓の専門科にコンサルト!」って感じですか?  でも、心臓(心筋)の虚血といっても、全例が緊急な訳ではありません! 「急ぐ虚血」と「急がない虚血」 まず、虚血性心疾患をざっくり理解する上で大事なのは、「急ぐ心筋虚血」を見抜くことです。介入が遅れると、患者さんにすごく大きなデメリットが生じる様

「急性疾患」と「慢性疾患」の違い

「急性疾患」と「慢性疾患」の違い これ、一言でいえますか?  僕なりに言うと、 ① 急性疾患は、失われた機能そのものによる症状・所見が主に出てくる。 ② 慢性疾患は、徐々に失われつつある機能を「代償」しようとして出現してきた症状・所見が主に出てくる。 となります。要は、メインになる症状・所見が違う、ということです。  もちろん個別具体の話をすれば当てはまらないケースももちろんあります。ですが、ざっくり「抽象的に」、急性疾患と慢性疾患の違いとしてこういうイメージを持ってお

上室頻拍の鑑別について

 教科書に載っていないことを「ざっくり」書きます。 上室頻拍を見たらまず、 ①年齢層と②HRでだいたいアタリをつけよう  高齢で初めて指摘される上室頻拍は、かなりの確率で 「心房細動」か「心房粗動」 です。  RRが不整ならすぐ心房細動と分かります(PACが頻発している、ということもあるので、P波はちゃんと確認してください)が、RRが整の場合は心房粗動のことが多いです。  RRが整の上室頻拍の場合、PSVTの可能性が否定しきれないのですが、次にレートでアタリをつ

心房細動(超コモン疾患)の「ざっくり」

 すでに超コモン疾患となった心房細動(AF)について。  まずは非専門医やコメディカルが「ざっくり」病態を理解するための記事です。  なぜコモンか?というと、「加齢により徐々に出現してくる(80歳代なら10人に1人が心房細動)」からです。  早く発症する人は、それなりに原因はあります。が、まずはみんな「加齢に伴う心臓への負担により発症してくる病」と思ってくれたらOKです。 心房がけいれんする病気  心房が細動(けいれん)するために、心室の脈がおかしく(不整)なり、心機能が

「循環管理」のうち、「血液」の部分

 さて、何度か「volume control」として述べてきたことですが、循環管理についての話になります。  全身の組織が求めている酸素を不足なく届けるために循環管理が重要です。ワッサーマンの歯車でいうところの「心臓・血液」にあたります。 血液(ヘモグロビンが大事)  酸素を運ぶのは血液中のヘモグロビン(Hb)であることはほとんどの方がご存じと思います。  ややこしいのですが、酸素などの気体は「血液のような液体」にも一定量溶けることができます。しかし、その総量があまりに