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研修医の日常の疑問を解消するためのマガジン

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病院の後輩研修医達に向けて、有用記事をまとめています。 「研修医一年目の、辛かったあの頃」 右も左も分からないまま、難解な医学書を買い漁るものの、 「研修が忙しすぎて読んでい… もっと読む
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2020年9月の記事一覧

急性期のvolume control

 急性期の輸液戦略の「難しさ」について、「ざっくり」話します。 急性期の輸液戦略は難しい 多くの場合、急性期患者さんは、相対的に血管内volumeが不足することによる循環不全を呈します。そのため輸液戦略が重要になりますが、これが難しい、「迷子」になりかねないんです。 循環管理が大事な理由は、「酸素」が絶えず必要だから 「循環管理」とは、組織の必要とする栄養や酸素を不足無く供給できるように、医療的に介入することです。栄養はともかくとして、特に酸素の供給が追いついていないと、

これだけ!非専門医のための不整脈薬物療法

不整脈初期対応は、誰もが避けられない! 「先生、●●さんのアラームが鳴ってます!タキってます!」 どんなドクターでも、  ① 不整脈で困っている患者に出会うこと、  ② 自分の患者のモニターで不整脈が出てしまうこと、 はあるでしょう。 病院勤務の若手医師が、そんな場面に直面したとき、 「とりあえず専門医に相談する時間がない、とりあえずなんとかしたい。」 という場面で役立つ内容をお届けしたいと思います。 「抗不整脈薬なんて勉強してないよ!」 抗生剤ならよく使うか

急性期のvolume control(前負荷のコントロール)

 前回の記事の続きになります(「前負荷」のコントロールの難しさについて解説しました)。 「前負荷」を上手にコントロールすることは必須なのに、難しい。  上手に、正確に、丁寧にコントロールしたい場合は、ICUに入室させ、こまめに各パラメータをみるしかありません。  だけど、あれやこれやのパラメータに踊らされては「木を見て森を見ず」な状態になりかねません。やはり「鷹の目」が必要です。  そのため、ここで前負荷のコントロールの鉄則を2つ述べます。 ①前負荷を増やすのは「細

急性期のvolume control(前負荷の増やし方)

では、 ①「前負荷を増やす」にはどうするか?・補液 ・血管収縮薬 のふたつでした。 ・補液について これは、血管内に直接水を入れるわけなので、イメージしやすいでしょう。そのまま心臓に流れていって、心臓の前負荷になる訳です。  ただ、血管内に残らず血管外に逃げ行く水もあります。出来るだけ多くを血管内にとどめる(きちんと前負荷として作用してもらう)には、浸透圧の高い「液体」を入れるしかありません。それで、生理食塩水やそれに近い浸透圧の晶質液を入れるわけです。代表選手は乳酸リ

呼吸・循環管理の「ざっくり」

 呼吸・循環管理というとICUを想像すると思います。  もちろん、これらの管理をしてあげなくても人体は健常時はこれらのことを「勝手にやってのける」わけです。これらに介入しないといけない病態というのはやはり「重症」というわけです。  でも、呼吸・循環管理についてのざっくりとした理解は、すべての医療従事者全員が知っておくべき、一つの「共通言語」になるような気がするので、それをなんとか言語化し、誰でも理解出来るように、改良を重ねながら発信していきたいなと考えています。今日は

全身管理における酸素の重要性

 集中治療室における呼吸・循環管理の重要性を代表するひとことは? 「酸素をいかに効率よく生命維持に必要な臓器に届けるか?」  なぜ、酸素が重要なのか?  それは、三大栄養素と異なり「体内に蓄えられない」からです。  さらに、酸素を使わずに栄養素を燃やすと、「超非効率」であり十分なエネルギーが得られないからです。  酸素は呼吸器系によって血液内に取り込まれ、血液・循環系に乗って全身に運ばれます。  全身の組織はそれを受け取り、「ミトコンドリア工場」で酸素を使って燃料を燃

非専門医のための不整脈薬物療法(続)

最初は「ざっくり」で良い 前回、これ以上簡単には言えないほどざっくり、抗不整脈薬について話しました。専門家には怒られるかもしれない。  でも、そういう「ざっくり」知識ほど、教科書や本からは学べません。批判を恐れず、「ぶっちゃけ」ていきます。  では、前回登場した薬について、追加の知識を確認しましょう! Ⅰ群:サンリズム 腎排泄が100%です。ですが、抗菌薬の初回投与時に腎機能を気にしなくて良いように、一発目の投与の時はなにも気にせず投与してもOKです!  連日使うような場