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早瀬浦 浦底 純米 本生滓酒R3BY「冬の海への畏怖と好意」

モノとして、トータル的にスマートだなぁ、美しいなぁと思うものが稀にあります。SAKEにおいては、銘柄名(ブランドネーミング)、フォント、ラベルデザイン、サブタイトル(肩貼り副題であるのが多々)、スペック、ボトルデザイン、そして品質などなど。皆様もありませんか???〇〇男山という銘柄名で古風なのにスゴく可愛いらしい動物のラベルデザインで純米吟醸なんだけども吟醸香もなくシャープでキレ味が鋭い、というモヤモヤ(笑)。これは酒蔵さんサイドで、銘柄を単に銘柄名と捉えるかブランドネーミングと捉えるか、で大きく変わってきます。例えば、某大手菓子メーカーさんでキノコとかタケノコというブランドのチョコ菓子がありまして、それらはちゃんとそのネーミングの通り、ユーザーがイメージ出来る形状をしています。それは当然ターゲット層も想定されていてトータル的にメーカーとして考えたモノであるはずです。
さてこの上述のお話も掘り下げるともっともっと出来るのですけども今回の本題とは異なるので別の機会にするとして、今回紹介したいSAKEは実にスマートで、しかも奇跡的だと偏愛するアイテムであります。この酒蔵は、福井県は若狭湾に面する、本当に海まで50mほどの距離にあるところでして、その名も美浜町という素敵な地名をもつ環境にあります。創業1718年で江戸時代から漁港のお酒として船乗りさん達に愛されたようでそれは今でも続いているようです。このアイテムは浦底というサブタイトルが付いていて、言えば滓酒、うすにごりタイプですので海の底がイメージされていて綺麗な海水と白い砂の海底なんですね、それでスカイブルーのボトルカラー。SAKEにおいては青瓶問題というのもあるのですけどもそれもまた別の機会に掘り下げるとしまして、季節限定、このアイテムは冬季(晩冬)限定の短期間流通なのでこのボトルも品質面をクリアして採用されていると理解しています。そしてスペックは純米、、、しかしながら中で絡んでいる滓は純米のみならず蔵の中での純米吟醸、そして純米大吟醸の滓もブレンドされている意欲作なのです。それでいて純米らしく、というかクラシカルなアイテムとしてアルコール度数が18度もあって時代が令和初期にあってレアな印象を受けます。


ユニークなアロマだと感じます。白玉団子のようでありつつ、同様にピーナッツなど生酒特有のアロマがあるのですけども滓(にごり)があるSAKEは一定のアロマをマスキングする作用があります。且つ滓そのもののアロマとして酒粕やサワークリームなども、このSAKEに感じられそうですけども純米の海の底には純米大吟醸の滓も含まれているので、アタックからイメージする滓のニュアンスはないです。上質な生クリームがほのかに薫るイメージです。味わいは生酒と比較的高めのアルコール度数が織り成すトロッとした質感がエロい甘さを演出しています。ただ実際は甘さが優先的ではないです。フローは口に含むと演出された甘さの後にすぐに気品あるコクを感じて、そして早めに後味のステージに来て綺麗な滓のビターさと高めのアル度もサポートする強いキレ味が素晴らしいシナジーを生んでいます。例えるなら冬の海で見かける白い泡が飛び散る岩しぶきのような心象があります。このSAKEのラベルデザインそのものですね。


よって、やっぱり魚介類とのペアリングは必至ですね。そんな中でも取り立てて、白身でも旨味が多い刺身や、焼き魚(関西圏では甘鯛の焼きが人気があるようです)、白子など。ホタテ貝も良さそうです。また鶏肉のクリーム煮、牛肉だとソース軽めでローストビーフなども。一つ、気品ある風合いを楽しみたい場合はリリースから2~3週間ほど、上質なふくよかさを楽しみたい場合はリリースから1ヶ月経ってから3か月以内、それくらいが品質のピークかと。冷蔵推奨。3か月以上経ったら、おそらくその味わい自体はこのSAKEではなくとも体感できるものになるでしょう。

8+/10p


≪早瀬浦 浦底 純米 本生滓酒R3BY≫
三宅彦右衛門酒造有限会社 福井県美浜町早瀬


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