見出し画像

ワイナリー訪問記 〜信州たかやまワイナリー〜

信州たかやまワイナリーさんのワインは元々凄く好きで、今回の訪問でも特に楽しみにしていた場所。
初めて信州たかやまワイナリーさんの造るソーヴィニョン・ブランを飲んだ時は無知ながらに「美味しかった!!」っていう余韻がすごくあって、その日はペアリングで10杯ものワインを飲んだのにこれだけは鮮明に覚えていた。
最近でも仕事でこのソーヴィニョンを扱ったことがあったが、やっぱり味わいや香りの”層”がしっかりしている印象があった。



そんな信州たかやまさんのレポートはつい気合が入って、かなりの長さになってしまった、、

●信州たかやまワイナリーさんの概略


元々は1996年に高山村に植えられたシャルドネを栽培したことが始まり。
ワイン用のブドウを栽培されていなかった地域で、20年以上に亘ってワイン造りのために葡萄が栽培され続けている。

2006年には高山村の荒廃農地問題や、農業者が高齢化が問題になっていた。
当時より、高山村は標高が高く冷涼な気候で年間降水量が少なく、砂礫質な土壌、長い日照時間など果樹栽培に適した地域として評価されていた。
その果樹の栽培に適した土地を生かすために、村内外問わずに、ワイン用ブドウの栽培者が中心に立ってできた「高山村ワインぶどう研究会」を中心にワイン用ブドウの栽培が拡大されていく。
当時では3名で3ha程度の土地だったのが、今では40haまで栽培面積を拡大しておりワイン用ブドウの生産地域として評価されるようになっていった。

●けいすけ主観の信州たかやまワイナリーさんの特徴

① 盆地に広がった、多様な契約農家が造るワイン用ブドウ


たかやまワイナリーさんは、ワイナリーとしての畑を持たない。
多く契約農家よりブドウを買い、80区画にもわたる畑で造られるブドウは、盆地特有の470〜830mの「標高差」でそれぞれの土地を生かした葡萄が栽培されている。
それらのブドウは単体でワインとして仕込みをした後にアッサンブラージュ(ブレンド)をすることによって単一品種のワインでも多様な香りを持つワインに仕上がる。

この説明を受けて、個人的にすごく腑に落ちた。
以前に飲んだソーヴィニョン・ブランからは、華やかな蜜の香り、アプリコットのような甘やかさ、コクのある口当たりが感じられながらも、
ソーヴィニョン特有のハーブ香であったり柑橘の香りにしっかりとした酸味が共存していることに驚きがあった。
こういった味わいになるのは、寒暖差によるものが大きかったのかなぁと。
理由がワインにありのまま現れていることがとても面白かった。


②「飲み手」を第一にしたワイン造り


今は「ナチュラルワイン」のブームが来ている中で、日本でのワイン造りでも、いわゆる”自然派”な造りをされているワイナリーさんも多い気がする。
ワインに魅了された方が造る、テロワールやブドウの良さを引き出した自然派のワインは本当に素晴らしいと思うし、
「ナチュラルワイン好き」のワイン愛好家も増えているからそう言ったワイン造りをするのも世の中には合っているのかなぁなんて思う。
とはいえ、造りの安定しづらい自然派ワインは「ナチュラルワインは苦手」っていうイメージを生み出してしまうのも事実で、ワインを飲み慣れていない人にとっては苦手意識を持ってワインに手を出しづらくなってしまう。

その中で、醸造統括の田口さんのお話を聞くと、”ワインを幅広い方に飲んでもらうこと”をとても大事にしているような印象を受けた。
信州たかやまさんのワイン造りは「この味にする」といった着地点は用意しておらず、あくまで「この年の、それぞれの畑のブドウの良さを引き出す」ようなワイン造りをしているそう。
その中で、アッサンブラージュによってバランスの良いワインを造り、多くの人に慣れ親しんでもらえるような味わいを心がけていることに素晴らしさを感じた。

色んな先輩方の話を聞くと、「昔の日本ワインは美味しくない」っていう話をよく聞く。
やっぱり湿度の高い国だし作物は豊作にはなるんだろうけど、ワインは「うすっぺらい」「香りがひかえめ」っていうのはよく聞くし、今でもそう感じるワインはある。
それでも信州たかやまさんのワインは凝縮感がしっかりとしているし、香りの厚みもあってワインとしてのクオリティーが本当に高いと思う。
そんなワインが万人に知ってもらえたらとても嬉しいと思う。

③ワイン造りの為に考えられた醸造設備


中の見学ができたわけではないけど、窓ガラス越しに醸造設備の見学をさせていただいた。
とても広く、天井の高い環境の中でステンレスタンクが並ぶ。
伺った時は曇っていたから比較的涼しかったけど、高地であるが故に夏場の日中は日差しが近く、30度を越える暑さになるらしい。
それだけの暑さになるのに、醸造施設内は基本的に空調を効かせてないと言う。
理由を聞くと、施設内の天井が高いことによって冷気は地表に下がるので、施設内は意外と涼しいとのこと。
この窓から覗いた設備内には温度管理が可能なステンレスタンクのみ入れている為、空調などエネルギーの使用は最小限で済んでいるそう。

それだけではなく、設備の高台になっている2階ではブドウを搬入し、そこで搾汁作業を行うとのこと。
2階でブドウジュースを絞ることで、自重で1階のタンクに果汁を下ろすことができる。
この作業でポンプを使うこともできるが、微量の振動や熱が伝わり、果汁に負担がかからないような工夫が行われているそうだ。


●まとめ

これまでは個人的にドメーヌとしてワイナリーをやっている所に多く訪問していたけど、醸造場として丁寧にワイン造りをされている信州たかやまさんのワインには改めてファンにさせられた。
直売限定で、「ラボシリーズ」という試験的なワインもあったが、研究を重ねてこの先でさらに美味しいワインを飲めるようになったらとても嬉しいと思う。

訪問した後には、車で10分ほど走った先にある長野ジビエのお店「朝日屋亭」さんへ。
そこでは訪問した余韻を感じながら、たかやまワイナリーのファミリーリザアーブシリーズ「Naćho 白 2021」とヴァラエタルシリーズ「メルロー&カベルネ・ソーヴィニョン2018」の2本をいただいた。
ワインの感想はまた別で語るとして、実際に作っている過程を聞いた後に飲むワインは格別だった。
店主の田中さんの作るジビエ料理も本当に美味しいし、祖母の田舎に帰ってきたような安心感を感じながら、鹿もも肉のカツレツと赤ワインのマリアージュを満喫させていただきました。

ありがたい事に、以前に取締役の鷹野さんとお話ししながらお酒を飲む機会があった。
そこで少しお話ししただけにも関わらず、ワイン造りの色々を教えて下さり、「ワインが生まれる地を楽しんで」とのメッセージもくださった。
訪問中にも、短い時間の中でたくさんのお話を聞かせてくださった、醸造統括の田口さんにも本当に感謝です。
1ファンとしてとても嬉しかったし、是非また訪問させていただきたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?