俳句を詠んでみた(注連綯う)
眼裏に注連綯う父の若かりし
(まなうらに|しめなうちちの|わかかりし)
幼い頃、暮れになるとしめ縄を綯う父の手元が面白く
後をくっ付いて回っていた。
寒い戸外で、漁具の納屋やウィンチ小屋の入り口、
流氷を避けて高く巻き上げた船にも注連縄をはった。
私の名前を船の名に付けてくれていることが、なんだか誇らしかった。
戦争が終わってから生まれた私に父は、「日本の夜明けという意味があるんだよ」と名付けの由来を教えてくれた。
山に入ってクリスマスのツリーを伐ってくれた父、餅を搗く父、しめ縄を綯う父、若水を汲む父、本を読む父、書き物をする父。
流氷に閉ざされる漁閑期の、穏やかな父の横顔。
亡くなって四十八年になろうとするいま、なぜかしきりに思い出される。