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(1)「測る」という仕事がなかったら?/測量士・浦恒博の「基礎論」。

正しく測って、未来を計る!

ビジネスにおいてどんな事業でも計画でも、「基礎」を疎かにすると大変なことになります。

最初にきちんと取り決めておかなかった、最初にちゃんと肝の部分を固めておかなかった、初期にきちんと核の部分を作り上げていなかったことで、その後に積み上がっていく仕事がどんどんおかしな方向に進んでしまい、もうどうにもならなくなってしまった、という経験はありませんか?

測量や建築の世界では、そんなことがあったら大変です。たった1mの誤差、たった1cmの間違いで、その後に積み上がっていくものがどんどんズレてしまい、とんでもない事故に繋がってしまいます。

そこで今回は、ご自身も測量士であり、大型橋梁をはじめさまざまなシーンで測量業務を手がけてきた株式会社講和設計工務事務所の代表取締役でもある浦恒博社長に、測量事業の視点から見た「基礎」の重要性を連載していただきました。

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▼浦 恒博 (うら つねひろ)

測量士。石川県出身。平成15年に株式会社興和設計工務事務所に入社し、平成22年、同社の2代目代表取締役社長に就任。東京ゲートブリッジなどの橋梁をはじめ鉄道、高速道路、港湾、河川、公園など数多くの測量業務を手掛ける。

・株式会社興和設計工務事務所 公式サイト

・浦社長のブログ「きちんと、測る。はかりびと」

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『ビジネス発想源 Special』の「各界発想源」にて2013年2月に連載され大きな好評を頂いた『測量士・浦恒博の「基礎論」』全5回を、noteに再掲載することになりました。この連載から、会社やチームの取り組みの見直しや、生活の改善などに活かせる様々なヒントを見つけ出してみて下さい。

※ 連載当時の、読者の皆さんの質問に浦社長がお答えする「Q&A」も掲載致しました!

title_基礎論

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●測量士・浦恒博の「基礎論」

    ~正しく測って、未来を計る。~(全5回)

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【第1回】 「測る」という仕事がなかったら?

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◯【第1回】 「測る」という仕事がなかったら?
・【第2回】 測量は地球を表現する仕事
・【第3回】 測量はコミュニケーション
・【第4回】 測量士に向く人、向かない人
・【最終回】 きちんと、測る。



「ウサイン・ボルト」と「測量」。

この2つには、どのような関係性があるでしょうか?

はじめまして。測量士の浦恒博と申します。


私は3年前に、株式会社興和設計工務事務所という測量会社の2代目の代表取締役社長に就任しました。

社長としてはまだ三年生ですが、測量士としては約20年もの長い経験があります。


弊社は東京都墨田区、国技館でおなじみの両国にある測量会社です。

創業は昭和40年、今期で47年目になります。

・株式会社興和設計工務事務所


弊社は、官公庁の各種測量と民間の土木工事関連の測量を中心に、様々な仕事を手がけています。

特に、橋梁工事に関する測量は40年を超える実績もあり、弊社が一番得意としている分野です。

大きい橋では、横浜ベイブリッジ、レインボーブリッジ、東京ゲートブリッジなどで架設工事や維持点検に関する測量させていただきました。

また首都高速、各高速道路、新幹線を含む鉄道橋など様々な橋の測量をしております。


さて、測量士とは測量を仕事にする職業ですが、皆さんは「測量」という仕事をご存知でしょうか?

測量をしているところを実際に見たことがある、という人も多いかもしれませんが、あまり表だって目立つような仕事ではありません。

そんなに目立たない仕事なのであれば、測量の仕事とは、それほど重要ではない仕事なのでしょうか?

では、もしもこの世に「測量」という仕事がなかったとしたらどうなるでしょうか?


「測量」という仕事が、正確なものではなかったとしたら?

実際に考えていってみましょう。

道路を作るとします。

直線のはずの道路がカクカクと折れ曲がったり、直線は何とか保たれていても違う方向に作られていったら?

目的の場所まできちんと道路が作られませんよね。


では、橋を作るとします。

川の両側に「なんとなくこの辺かな?」という感じで作った橋脚に「まあ、これくらいの長さかな」と作ってきた橋桁を載せると、橋桁が届かなくて、架からない。あるいは長すぎて橋桁が余って飛び出している。

これでは橋は完成しないですよね。

たとえ何とか完成しても、両側の高さが違いすぎて急斜面な橋や。通行するとシーソーのようにグラグラしている橋ができてしまったら、安全に渡れません。


トンネルを掘ってみましょう。

通常、トンネルは両側から掘り出し、中間でつながるものです。

しかしどこまで掘ってもつながらない…。

地下鉄だったら、次の駅の到達するのは奇跡に近いでしょう。

もしかしたらすぐに地上に出てきちゃうかもしれません。

逆に地球の裏側まで、なんてもう漫画の世界ですね。


立体交差を作りましょう。

あっ、高架下を車が通れない…。なんていうことが起きます。

実はこれは、昨年ある場所で実際に問題になりました。

造ってみて、規定されている高さが確保できていないことが分かったのです。

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