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春キャンがなくても、手の中にある楽しさ

「オッオッオッオオー!」

夜、つけっぱなしにしていたテレビから春キャンのCMが流れてきた。シャコシャコはみがきをしながら思わず見入ってしまって、泣けた。CMに映る彼ら・彼女らの青春の眩しさと、自分も春キャンに心を躍らせていた日があったという回想、そして実際に春キャンで子犬のようにキャンキャン楽しんでいたあの日、それら全部が走馬灯のように頭に流れて泣けた。

春キャンとは、ディズニーリゾートが「閑散期」と呼ばれる1月上旬から3月中旬にかけて発売される「春のキャンパスデーパスポート」通称春キャンのことだ。春のキャンパスデーパスポートは学生限定で購入できるパークチケットで、通常価格より安く購入することができる。しかも、ちょうどこの時期、3年生であればだんだんと進路が決まり、学校にも自由登校になる。「卒業」がちらついて思い出作りに必死になっているし、「最後」の文字が至るところで頭をのぞかせる。

学生が学生らしくディズニーで楽しむ姿は、いい。自分もそうだったけれど、制服でインパ ーインパークのこと、ディズニーに入園することを言うー すると、私がいるここが世界の中心のような気分になる。スカートはなるべく短く、顔は最大限可愛く、カチューシャはみんなとお揃いで! キラキラとピカピカが、私たちから放出される。ここが今、最大光力だ! という感じの気持ち。真っ青な空の下、ディズニーランドならシンデレラ城前で、ディズニーシーなら地球儀の前で、ジャンプ写真を撮るためにスマホで連写をかます。だって、春キャンだから。

思い出すのは、中学3年生のときに行った春キャン。初めて友達だけで行ったのだった。それまでディズニーといえば家族で行くのが当たり前で、お父さんお母さん抜きで行くなんて「なんと無謀な」と思っていた。だけど、私たちはもう中学3年生。交通手段やお金は、お父さんお母さんに相談しつつも、きっと自分たちだけで行ける。私の地元、山梨県にはかっこうのバススポット「富士急ハイランド」があって、富士急ハイランドからディズニーランドまで直通のバスが出ていた。交通手段はクリア。お金は、「まあ1万円ぐらいあればいいかな」とお母さんがくれた。当時は1万円あればディズニーランドは事足りていた、今はたぶんちょっとひもじいかもしれない。お金もクリア。

そんなふうにして中学3年生のときは行っていたのに、今はチケットもちょちょいとオンラインで買える。クレジットカードもあるからね。電車だって調べて、乗り換えていけるし、もし電車がしんどいならバスだって簡単に手配できる。春キャンは楽しめなくなったけど、春キャンを楽しめなくなった分の楽しさを私は持っている。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。