花衣ぬぐ

杉田久女

花衣ぬぐやまつはる紐いろ/\
 (はなごろも ぬぐやまつわる ひもいろいろ)

じょうずな遊び人の男性なら「女性の幸せを知りたければ帯締め(おびじめ)の一本もプレゼントすることだよ」と言えた良い時代の俳句かも。だまりんのカミさんは桜餅(さくらもち)の2個も手土産にしたら喜んでくれるから女性にも色々いらっしゃるワケだけど、この杉田久女さんの場合は着飾ってお出掛けするのが大好きだったのでしょうね。

女性の着物にはトンと知識のないだまりんですが、私の母が着物を脱ぐのを何べんもみた体験を言うと、1本だけでなくて何本もの紐を巻いていた。それが足下にズルズルズルと足腰に纏(まつ)わり・絡みながら落ちてくる。それが幼かった私にはナントも不思議で引張ってみたりしてて、邪魔だって叱られて、今ではとってもなつかしい思い出。

今の私なら、張り詰めた空気のなかを過ごして無事に家に帰ってきた久女さんを想像する。花衣をとめる紐は久女の聖剣だったのかも知れない。男は飲めや唄えのドンチャン騒ぎでも女性にとっては花舞台に立つ真剣勝負の舞台かもしれない桜の下。そう考えると紐いろいろは多くのライバルの紐のソレゾレにも女性の思い・決意が秘められていそう。

いやいや、女性ってナンテ有難い存在だろう。見知らぬ通行人(だまりん他、世の男ども)の眼や心を只(ロハ)で楽しませ慰めてくれるやさしい人間。久女は日々を平穏に平和に過ごしたいというささやかな望みを持って暮してたのを私は感じる。どんな人の一生もこの紐みたいな様ざまな想い・幸せ・悲しみがいっぱい纏わっているのだろうな。(´ー`)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?