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牽牛花

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長谷川かな女

かな女生涯の影ある秌の天地かな  長谷川かな女
(しょうがいのかげ あるあきのてんちかな)

私は「生涯の影 / ある秌の天地かな」と分けて読ませて貰いました。

これは偶然に見つけた長谷川かな女の句でナニか分らないけど好きだなあ。関心はなかった筈なのにコノ句を知って「いいなあ💑」と想ってしまった。かな女の生涯は苦労苦労の連続だったように述べてある記事が幾つもある。苦労は当人の心深くに刻み込まれ

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雛祭りde句⓹

雛祭りde句⓹

橋本多佳子🎎古雛をみなの道ぞいつくしき 橋本多佳子
 (ふるひいな おんなのみちぞ いつくしき)

ゆとりが出来たら娘のために雛飾りを用意してあげたいと想っていた母親・家庭は多かったと思う。大切に育てられた娘は嫁いでいくとき当然の事として・その雛飾りを嫁入り道具に加えて持っていった。母親が幼い時分から大切にしてきた雛飾りは古びて後も大切に扱われ・子孫へと伝えられていく。その大事な大事な古雛を想い

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雛祭りde句⓸

雛祭りde句⓸

久女でようらく揺れて雛顔暗し蔵座敷 杉田久女
(ようらくゆれて ひなかおくらし くらざしき)

杉田久女にも雛祭りの句の多さが感じられる。ようらく(瓔珞)と云うのはジャラジャラしたロングネックレスみたいな飾りでしょうね。天蓋(てんがい)の周囲に沢山ぶら下ってる感じ。奥座敷は気軽に誰でも入れる部屋と違って大事なお客様だけが通されるお座敷を想像したら大体合ってると思う。そこは大切な部屋だから光も入らな

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雛祭りde句⓷

長谷川櫂氏で🎎目を入るるとき痛からん雛の顔 長谷川櫂
(めにいるるとき いたからん ひなのかお)

愛らしい雛人形に感動している父親が私のなかに浮かぶ。この長谷川櫂氏には雛(ひいな)すなわち血が通ったお嬢さまなのですね。他所のお嬢さまであれば可愛いだの上品だのと評価できるけれど‥ですよね。桃の節句を幸せの中で過ごせる家族がいる。私も素敵な雛祭りを願う一人なのです。

雛祭りde句⓶

雛祭りde句⓶

子規で🎎小き雛の小き大皷など敲く 正岡子規
 (ちさきひいなの ちいさきたいこ などたたく)

正岡子規も桃の節句に惹かれた一人だったようです。父親の心は娘の健やかな成長や幸せを想うだけで精一杯。いっぽう、妹の手厚い看病を受けるなかで亡くなった子規は己の娘との縁に恵まれることはなかった。優秀な才能を以って社会へ巣立った子規であっても、己のなかに具わった(娘を想う人間の)遺伝子から解き放されること

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雛祭りde句⓵

雛祭りde句⓵

虚子で🎎天井にとどけ雛の高御座  高濱虚子
(てんじょうにとどけ ひいなのたかみくら)

もうすぐ桃の節句ですから有名人の句を捜してきました。そのままの句だから解説する迄もありませんね。だけどそんなに高い天井の家に住んでたの?天皇・皇后の高御座は普通の家に収まらないよね?それで調査しましたよ。なんやあ~って 笑ってしまったゾ。(*´з`)

🎎雛より小さき嫁を貰ひけり  虚子
(ひいなより ち

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尾崎放哉&鐘⓹

尾崎放哉&鐘⓹

余韻(よいん)尾崎放哉が詠んだ鐘の句はもっと沢山見つかると思っていたが青空文庫に載った須磨寺時代の4句で終わらせていただきます。放哉を俳人と見做すのは其々の思いであれば私がとやかく申しあげることはない。私の思いを述べるなら「詩心は懸命に生きようとする人の心に具わる希望・勇気」に尽きる。

誰かの詩心を特別視する視点は私のなかに無い。誰かの詩を優秀だとか立派だとか評価する視点は私のなかに無い。そうは

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尾崎放哉&鐘⓸

尾崎放哉&鐘⓸

父よ虫夕の鐘つき切つたぞみのむし 尾崎放哉
(ゆうべのかねつききつたぞ みのむし)

蓑虫ってダレだよぉ? コレ、お勤めを終えた報告だろ?そりゃあ鬼の親は無責任だ。その鬼親を非難したい鬼の捨て子の声が聞こえた気がした。父よ、あなたは無責任だという悲痛な記憶が子鬼から滲み出たか‥。泣いている子に大勢の命が共鳴する。『可哀そう・気の毒に・親はナニやってんだ』と観衆は一様に優しい思いを抱く。仕方ないよね

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尾崎放哉&鐘⓷

尾崎放哉&鐘⓷

須磨寺時代
師走の夜の釣鐘ならす身となりて
(しわすのよるのつりがねならすみとなりて)

次男の放哉は長男としての責任を負わせられたようだが、彼の心は誰かに甘えたかったように思われる。現実には社会人が甘えられる場所も人も少ない。そんな放哉であれば職場でも社会でも安住することは難しい。生涯を転々として暮らしても・然もありなんとなる。一高入学した翌年の18歳か、先輩・荻原井泉水に出会って以来、師匠とし

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尾崎放哉&鐘⓶

釣鐘重たしねむの花の昼すぎの釣鐘重たし 放哉
(ねむのはなのひるすぎの つりがねおもたし)

長閑だなあ‥そんな声が放哉から漏れてきそうに想えた。
ねむの花は「ねむの木の花」で、上皇后の詩「ねむの木の子守歌」や去年亡くなった宮城まり子の「ねむのき学園」で知られるが、共に悦びたいという想いに由来するようだ。因みに放哉が亡くなった翌年が宮城まり子の出生。

今日の朝ドラおちょやん姉弟も母親を偲んだよう

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尾崎放哉&鐘⓵

尾崎放哉&鐘⓵

閑居して鐘ついて去る鐘の余韻の中 尾崎放哉
(かねついてさる かねのよいんのなか)

尾崎放哉は人気者だし、あなたもファンかも知れませんね。それでどんな傾向が彼の句に顕れているのかと思って一っ跳びしてきた。

この句を読んで有名な格言「小人閑居して不善をなす」を想ったのはナンデかしらん? 中国故事では「小人閒居(間居)して不善をなす」だそうな。閑居のほうだと「暇(ひま)を持て余して碌(ろく)なこと

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葛飾柴又と

葛飾柴又と

小林一茶?これがまあ終の栖か雪五尺 小林一茶

(聞いたところでは)遺産相続で自分の家屋を手に入れたらしい。それまでの人生は転々として過ごしていたことになる。それで私のなかで葛飾柴又の寅さんと一茶が被ってしまった。寅さんも妹・さくらと離れて暮らすことが多かったんだ。愛するさくらの足手まといになっちゃいけないってんで全国の夜店やなんかに稼ぎに出てたんだっけ。そんな寅さんならさくらのいなくなった家にな

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ひさ女のひの字しの字

ひさ女のひの字しの字

紙魚(しみ)紙魚のあとひさしのひの字しの字かな 高濱虚子
 (しみのあと ひさしのひのじ しのじかな)

こんな一面を虚子に知って以来、彼の人間的な面が好きになった。
普段から開けっぴろげなまゝ暮していたら気楽だったのだろうな。

虚子と云えども久女に言葉で勝てるものではなかった
 ‥だからって苛めず優しくしてあげたらもっと好きになった。

柿くへば

柿くへば

東大寺柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺 正岡子規

(かきくえばかねがなるなりほうりゅうじ)

東大寺を眺めて柿を食べていた子規がいる。
その子規の耳に入ってきた法隆寺の鐘の音。
この時すでに、子規は不治の病を得ていた。
それだけですがナニか深く考えされられる。