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誰かを応援するという行動の「無意識の効用」

昨日のラグビーW杯日本対南アフリカ戦。

残念ながら日本は力及ばず敗退しましたが、この試合に限らず、今大会通してたくさんの人たちに笑顔と勇気を与えてくれて、そして大切なことを教えてくれました。ありがとうございます。

それにしても、前半から南アフリカの当たりは強かった。一人多い時に1トライ決めてれば…とは思いますが、世界の4強の壁は次回に開く扉としましょう。

ところで、昨日の試合の平均視聴率は41.6%だったそうです。瞬間じゃなく平均でこの数字はすごいです。

ちなみに今大会での日本戦の視聴率推移はこちら。

9/20 ロシア戦18・3%、瞬間最高25・5%
9/28 アイルランド戦22・5%、瞬間最高28・9%
10/5 サモア戦32・8%、瞬間最高46・1%
10/13 スコットランド戦39・2%、瞬間最高53・7%
10/20 南アフリカ戦41・6%、瞬間最高49・1%

確実に平均視聴率があがっています。

今までの勝っている試合はまだしも、昨日のように後半点差が離れてもみんな最後まで応援していたってことです。


さて、今回の記事は何もラクビーについて語ろうというわけではありません。取り上げたいのは、この「応援の喜び」についてです。

試合後、日本のジョセフHCは「応援が力になった」と語っていました。確かに、ホームでの日本の応援が選手たちに力を与えたのは確かでしょう。どのスタジアムでも、レプリカユニフォームを着た日本を応援する人たちでいっぱい。日本のチャンスには、地鳴りのような歓声が沸き起こります。

でも、選手以上に喜びや幸せを感じたのは、応援している私たちの方だったのではないでしょうか?

実は、応援してもらえる喜び以上に、誰かを応援するってことや応援することのできる何かがあるってことは、何よりも幸せを感じられることだったりするんです。

応援とは、誰かや何かを支えることと言い換えてもいい。


未婚者は既婚者に比べて不幸度が高い。これはほぼ全世界共通です。幸福度と密接に関係があるものは、他に年収があるのですが、もし仮に年収だけが幸福度に影響するなら、未婚だろうと既婚だろうと同じ年収なら幸福度は同じになるはずです。

ところが調査してみると、同じ年収でも未既婚では幸福度(グラフは自己肯定感で比較していますが、自己肯定感と幸福度はきわめて強い正の相関があります)に一定の差、越えられない壁があります。女性の方は高年収になればなるほど未既婚の差がなくなるのに対して、男性はなかなかその差が縮まりません。詳細はこちらの記事を参照ください。

年収別自己肯定感

これは、既婚男性にあって、未婚男性にないものの違いです。

それは、自分以外の誰かを支えているという自負心です。既婚男性は、配偶者や子など、自分が働いて支えているという意識があります。それは、自己の社会的役割を得る上でとても重要なポイントです。未婚男性にはそれがありません。

既婚男性は、時間やお金を使う対象として、「今の生活を維持する」方向を重視する「現状維持消費」をします。それは裏返せば、現状を肯定しているということであり、それが幸福感や自己肯定感に大きく寄与します。一方で、未婚男性は、反対に「現状維持消費」ではなく「現状変革消費」をしがちです。ジムに通ったり、自己啓発セミナーや何か目新しいイベントに参加する等がそれに当たります。

いうなれば、既婚者が家族から得られる自己の社会的役割を、趣味や消費行動によって代替えしているとも言えるのです。彼らは、モノを所有したいというより、体験して思い出を作りたいというより、モノやコトを通じて、自己の精神的安定を得るという「エモ消費」をしているのです。

特に、アイドル消費などはその最たるものでしょう。

彼女たちを応援し、お金を使い、イベントに参加することは、支えるべき家族のいない彼らにとっては、誰かを支えているという実感による幸福を得る作業です。「アイドル消費は、擬似子育て行動である」と僕が提唱しているのはそういうことです。

アイドルを応援することで、既婚者と同じ自己の社会的役割を確認するこができる。それは、とりもなおさず、結果として自分の幸福につながる行動なのです。つまり、無名の新人のアイドルを応援することは、自分を応援していることに等しいのです。

だから、未婚者であっても、そういうアイドル応援活動をしていたりしている人の自己肯定感は既婚者並みに高かったりします。


今回のラクビーにしろ、野球にしろ、好きなスポーツチームを応援することも、果ては。クラウドファンディングで支援することも、誰かを応援することで自分の幸せを得る行動といっていいかもしれません。

応援される人も、応援する人も幸せになれる。応援っていいことだらけ。


「他人の応援なんかしたことない」という方がいらっしゃったら、騙されたと思って、なんのスポーツでもいいので、国際大会の観客席に行って応援してみてください。そして、周りの人と一緒に、腹の底から「がんばれー! 」と声援を送ってみてください。プレーのひとつひとつに一喜一憂してみてください。勝っても負けても、きっと言いようのない感覚の清々しさを体感することができると思います。

「どうせ誰も自分の事なんか応援してくれない」とネガティブに拗ねている暇があるなら、誰かのことを一回応援してみましょう! 

長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。