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東京マラソン2020展望

明日はいよいよ、東京五輪選考会である東京マラソンが開催される。改めて今大会の位置づけをざっとおさらいすると共に、レースを簡単に展望しておく。

■ 今大会の位置づけ
●代表選手の枠は計3つ。選考プロセスは下記の通りだ。今大会は、下記選考プロセスStep2に記載しているMGCファイナルチャレンジに該当する重要なレースであり、最後の一枠を決める戦いとなる。
【選考プロセス】                         Step1:2019年9月に開催されたMGC※1に2位以内に入った選手は内定  (中村匠吾、服部勇馬が内定済み)
Step2: MGCファイナルチャレンジ※2において、「2時間5分49秒」※3以内で走破し、最もタイムの良い選手を選出
Step3:上記2の選手が現れなかった場合、上記1で記載したMGCに3位に入った選手(大迫傑)を選出
※1 MGC (Marathon Grand Championship)
下記の大会の指定順位・タイムをクリアした選手が出場できる選考レース。
・開催期間:2017年夏~2019年春(2017-2018シリーズ、2018-2019シリーズ)
・対象レース:国内の男子5大会(北海道マラソン、福岡国際マラソン、別府大分毎日マラソン、東京マラソン、びわ湖毎日マラソン)、
※2 MGC ファイナルチャレンジ
文字通り、残り1席を巡った最後のチャンスとして設定された大会群。
 ・福岡国際マラソン(2019年12月)
 ・東京マラソン(2020年3月)
 ・琵琶湖毎日マラソン(2020年3月)
※3 「2時間5分49秒」
大迫傑が保持している日本最高記録2時間50分50秒を一秒上回る記録。海外の選手の高速化が進む中で、それに対抗すべく日本記録よりも速い記録をバーとして設定し、日本人選手の高速化を企図。

●また、東京マラソンは、2013年大会より「ワールドマラソンメジャーズ」に加入しており、世界の主要なマラソンの一つに数えられている。ワールドクラスの選手達が賞金獲得のために集い、世界記録の更新を目のあたりにできる可能性だってある大会だ。

■ 今大会の展望
●五輪選考争いだが、大迫傑、設楽悠太、井上大仁がビッグ3と目されている。日本記録を更新しないと、代表の座は大迫に渡ってしまうため、設楽、井上は特に序盤から突っ込んだレースを展開するだろう。3人について、少しコメントしておこう。
 【大迫 傑】
MGCで3位に入った選手で、今最も五輪に近い位置にいるが、座して待つのではなく、もぎ取りにきた。実業団を飛び出し、プロランナーとして活動しており、書籍を出版したり、Twitterを駆使してメッセージ性の高い発信を行うなど、陸上競技のプレゼンス向上にも貢献している。現マラソン日本最高記録保持者であり、5000mの日本記録保持者でもある。大迫のエントリーは、他の選手に大きなプレッシャーを与えているだろう。大迫に勝たないと五輪はないのだから。
【設楽 悠太】
前日本記録保持者であり、2018年大会で16年ぶりに日本最高記録を更新し、マラソン界に活況をもたらした。MGCでは、開始早々集団を抜け出して「大逃げ」を図り、関係者、視聴者の視線を釘付けにした。惜しくも後半失速し、代表を射止めることはできなかったが、国内選考に汲汲とするのではなく、常に世界を見据えた走りをしたいという強烈なメッセージを残した。今回も「2時間4分台を目指す。5分台であれば五輪を辞退する。世界とは戦えないからだ。」とセンセーショナルなコメントも寄せた。目が離せない選手。
【井上 大仁】
東京マラソンでの経験も豊富なお馴染みの選手。2018アジア大会では、今大会もエントリーしているエルアバシ(バーレーン)をくだし、金メダルを獲得した。MGCでは、気迫が空回りしたのか、まさかの最下位に終わったが、元旦のニューイヤー駅伝では、設楽悠太を破って区間記録を更新し、完全復調した。いつも気合が漲っており、表情からも背中からも入れ込みようが伝わってくる選手。だが、今大会はやけに落ち着いて見える。一皮剥けたのだろうか。
【その他の選手】
この3人に比べると、他の選手は実績で劣るものの、思わぬ伏兵が現れる可能性もある。面白いのは、ヤクルト所属の小椋裕介。前月の丸亀ハーフマラソンで日本最高記録を更新する等、面白い存在だ。学生時代は青学大で主将を経験し、自身もまた学生界トップクラスの選手として箱根駅伝で優勝を経験した。ここにきて本物かどうか真価が問われるところだ。また、こちらも箱根駅伝のスター選手で10000mを3連覇している実績のある佐藤悠基にも期待したい。トラックレースとは勝手が違い、マラソンではなかなか実績を残せずにいたが、数回に一度成功レースを作れるようになってきた感がある。年齢的にも東京五輪が最後のチャンス。事前のインタビューでは終始落ち着いて見えた。この大一番に持ち前のスピードを発揮できるか。

●レース展開は、下記エントリー一覧を御覧頂くとお分かりの通り、海外招待勢のベストタイムが国内招待選手を大きく上回っており、2時間2分、3分を目指すかなりのハイペースでの推移が予想される。これに、国内招待選手がつく判断をするか否かが大きくレース展開を左右する。今大会は、2時間2・3分を目指すためのペースメーカー、第2組として2時間4・5分を刻むペースメーカーに引っ張らせるという話も出ている。強気の設楽は、第1組で試合を進める可能性があり、そのとき大迫や井上がどのように反応するか非常に興味深い。

【主な出場選手】

主な出場選手

■ 最後に
新型コロナウイルスの感染拡大のリスクを鑑み、一般の部の出場は不可となった。エリートランナー200名のみのレースとなる。いつもの賑やかなマラソン風景ではなく、選手達から火花が出るような厳しい雰囲気がそこにはあるだろう。 また、大会本部は沿道での応援も自粛して欲しいと要請した。あの割れんばかりの声援に、自分の名前を呼んでもらうことで、疲労を力に変えている選手達。今回は、「無音の声援」を感じて、悔いのないレースを展開して欲しい。

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