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やまがたワーママ図鑑033

子どもがいるからと言って、仕事やこれからのことをあきらめたくない

中山夏美さん(37歳)山形市在住
職業:フリーランス編集者・ライター
お子さん:0歳女の子

<これまでの経歴>
山形市出身。高校を卒業後、株式会社蔵王ロープウェイにガイドとして就職。4年勤めた後、同社を退職して東京のアウトドア雑誌の編集プロダクションに転職。1年後、フリーランスのライターとして独立。アウトドア関係の雑誌のライティングを中心に活動。その後、小学館の常駐編集者として勤め、2019年に山形市に住む夫と結婚。東京と山形の2拠点生活をしていたが2020年、妊娠を機に前職を辞め、山形市にUターン。現在はフリーランスの編集者・ライターとして、都内や山形の雑誌、Webメディアなどの仕事に携わる

会社を辞めて飛び込んだ東京。人生を変えた雑誌のライターとして、編集の道へ

-今の仕事に就いた経緯を教えてください
高校を卒業後、地元の会社に就職しましたが、幼いころから漫画やドラマが大好きで、そういうものって東京が舞台のものが多くて、いつか都会に行きたいという気持ちをずっと持っていました。勤めていた蔵王ロープウェイには、冬は東北や北海道、夏は海外のスキー場でアルバイトをするような、リゾートバイトと呼ばれる人たちがたくさん来るんですが、そういう人たちを見て、すごく自由で好きなことをしているのがうらやましかったんです。四季の移り変わりはあるものの、同じ景色に飽き飽きしていて…。

そんなころ、アウトドア雑誌『b*p』の「今しかできない旅。ジンセイを変える旅」というタイトルを目にして。これだ!今いる状況を変えたい!と思い立って、1人旅を始めたんです。そしてある年、フジロックに行きました。キャンプよろず相談所というのがあって、テントの立て方を聞きに駆け込んだんですが、そこに私の人生を変えた『b*p』がおいてあったんです。なんでここにこれがあるのかと聞くと、なんと相談所を運営している人たちが作っていると。そこには編集長もいて、すごく興奮しながら、『b*p』との出会いが私の人生を変えたと熱く語りました(笑)。

当時、『b*p』で「旅賞」という、自分の旅のレポートを送る企画をやっていて、それに応募したいなとも思っていて、そのことも伝えると「ぜひ応募してね」と言ってくれて。ライティングなんてやったことがなかったけど、見様見真似で、旅のルポと履歴書を5回ぐらい送りました。でもなかなか返事がこなくて…。「もし私を雇っていただけるなら、今の会社を辞めて東京に行きます」という手紙も送りました。

何度送っても返事がこない状況。ふと、「雇ってくれるなら行く」なんて都合がいい話だなと思い、あらためて「会社を辞めて上京します」と手紙を書いて退職しました。そして上京して数日後、編集プロダクションから電話をもらい、なんと雇ってもらえることになったんです。

それから見習いのような形で雑誌作りにかかわらせてもらいました。そして1年半後に独立。最初は先輩のアシスタントも多く、自分が書く仕事は時々、という感じでしたが、ちょうど「山ガール」ブームがきて、女性のアウトドアライターの需要が高まり、徐々にライターとしての仕事が増えてきました。そして31歳の時、『b*p』発行元の小学館の常駐編集者にならないかと声をかけてもらい、5年ほど勤務しました。

アウトドアだけでなく、ファッションカルチャー誌の立ち上げなど、ほかの分野の雑誌にも携わらせてもらい、やりたい企画をやらせてもらい、会いたい人にも会わせてもらい、編集者としての仕事を知ることができ、とても充実した日々でした。2019年、それまで5年間、遠距離恋愛をしていた夫と結婚。夫は上山市の果樹園に勤めていたので、結婚後は東京と山形の2拠点の生活を続けました。

そして2020年に妊娠。このままずっと常駐の編集者として仕事を続けていくのか、少しモヤモヤしていた時期でもあり、子どもを産むことでいろんなことをリセットできるんじゃないかという気持ちもあったので、私が仕事を辞めて山形に戻ることにしました。でも一方で、東京に行きたいと思い続け、20代のほとんどを過ごした東京を離れることへの寂しさもわいてきて。前向きにがんばろうという気落ちと、不安な気持ちと、半々という感じでしたね。


人の人生を、文章を通して伝える仕事がしたい

-今の仕事のやりがいを教えてください
東京を離れたので、常駐の編集者の仕事は難しい状況ですが、今までかかわってきた雑誌のライターとしての仕事をもらったり、コロナの影響で東京のライターが地方に行けない時は私が東北地方の取材をしたり、また山形のWebメディアの仕事もしています。

1番やりがいを感じるのは、インタビューの仕事。ライターになりたいと思い始めたころは自分のことが書きたかったんです。でも東京に行って、自分よりずっとおもしろい人生を生きている人にたくさん出会って、人の人生に興味が出てきて。それを誰かに伝える仕事がしたいなと思うようになりました。その人が言葉で伝えられないことを自分が伝えたい。それを通して、いい文章だったねと言ってもらえたり、たとえばお店が繁盛したり、そんな時にやりがいを感じます。

仕事をしているのは、生きていくために必要なことというのももちろんありますが、記事や雑誌が完成した時の達成感はやっぱりすごくうれしいですね。これからも興味があることを突き詰めていきたいです。


子どもにもちょっと自慢できるような仕事をしていきたい

-仕事と育児の両立で大変なことはありますか
正直、山形に戻ってからは結構つらかった。産後ということもあったと思いますが、育児はもちろん、夫と生活することも初めてで、周りの環境も一気に変わり、発散する場所もなく、泣きわめいていたこともありました。

自分のキャパが分かっていなかったんですね。妊娠前と同じ調子で仕事を受けると、できないことがあるんだと分かりました。私は基本的に家で仕事をしているので、子どもが熱を出したりした時は、なんとなく私が休むのが当たり前だと思っていましたが、私も夫も仕事をしているのは同じこと。素直に、夫にも休んでほしいと伝えたら快諾してくれました。1人で抱え込んじゃいけない。会社にも相談しないといけないし、夫にも相談しないといけないと感じましたね。

-これからの夢を教えてください
子どもがもう少し大きくなったら、東京と山形の2拠点生活がしたいと思っています。インタビューが好きなので、たとえば1週間は東京で取材をして、残りは山形で過ごして。山形でも今クリエーターの人たちと一緒にフリーペーパーを作ろうという話をしていたりするので、これからもおもしろいことをやっていきたいです。

雑誌の編集をやっているママって少ないと思うので、かかわった雑誌を見せて「お母さんこんな仕事やってるんだよ」と、子どもにもちょっと自慢できるような仕事をしていきたいと思っています。

-同じワーキングママのみなさんにメッセージをお願いします
私は、子どもがいるからと言って自分の仕事やこれからのことをあきらめたくないと思っています。妊娠した時に、これまでの仕事は1度リセットして、まったく違う仕事をするのもいいかなと思ったこともあるんですが、やっぱり編集やライティングの仕事が好きで、この仕事をやっていきたいと思いました。やりたいことはあきらめずにいてほしいなと思います。


<中山さんの1日のタイムスケジュール>
5:30 起床
6:30 朝食
8:30 保育園送り
9:00 家事
10:00 始業
15:30 終業
16:00 保育園迎え
18:30 子ども夕飯
19:00 お風呂
20:00 寝かしつけ
20:30 夫婦夕飯
23:00 就寝

                                                                                                               文/ayuko

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