ゴチになりました
「今日は私がご馳走するからね」
妹が、狛江の寿司屋を予約してくれて大盤振る舞いの宣言。ここのところ、株でだいぶもうけたらしい。私の地元の寿司屋でありながら、店の前は何度も通るけれど中に入ったことはない。そういえば、長男の小学校の時の同級生がこの寿司屋の娘だったのでは・・・、記憶がかすかに蘇ってくる。2代目が引き継いでリニューアルオープンしたと、ホームページにあった。口コミの評判もわりといい。
まずは冷酒で、刺し身をつまむ。お通しに、大きなブリカマの焼き物が大皿でひとつ、ドーンと出た。これはうれしい。真っ先に、パリッと焦げたヒレをつつく。粗塩がうまい。
酒好きの姉妹ではあるが、妹は飲むよりも先に、焼き魚の身を全部ほぐして骨をとりわけ、皿に魚の身の山を作る。食べやすいように、いつも旦那にこうしてあげているのだろう。そんなことしなくてもいいのに・・・、自分で魚を少しずつほぐしながら、酒と肴を交互に口の中に運んでいきたい。すでにそぼろ状態になったブリの身は、ご飯のおかずだ。もちろん、そんなことは口に出さなかったけれど・・・。
2合、3合と進むにつれ、店員さんが日本酒の銘柄をあれこれ説明してくれるが、頭に入ってこない。私の口に合えば、何だっていい。
そろそろ握りを・・・、妹は特上のお任せ握りを頼むつもりだったようだが、私は席を立って直接カウンターの中に声を掛けた。「今日の青魚はなにがありますか?」、カウンター席を予約しておいてくれたらよかったのに・・・、ということも口にはしない。
「イワシ、さば、コハダ・・・、サンマも入ったよ」と、大将の声。青魚三昧の握り、切り身は2枚ずつ、少なめのシャリを包むように軽く握って・・・、この上もなく美味しかった。お酒も進むし、会話も進んだ。でも、何を話したのかは覚えていない・・・。
笑いながら、飲んで、喋りながら、また飲んで・・・そして、激しくむせかえった。あー、やってしまった。誤嚥。息ができない、セキすらでない。目の前の妹は、笑うばかり。「だいじょうぶですか?」、店員さんが水を持ってすっ飛んできたが、その時には何とか呼吸を取り戻した。ほんの数秒の出来事だったのだろうが、死ぬかと思った。最後に何かの天罰が下ったのだろうか・・・。次の日は一日食べる気がしなかったけれど、やっと気管支の奥からセキをすることができるようになって、復活。
「驚いた。安いよ~」、支払いは現金のみと明示されているこの寿司屋、「予想の半分だったよ~」と妹はにんまり。いい店見つけた。
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