生駒さん_名刺_TOP

華道家一族の4代目、フリーランス華道家が伝えたい思想とは

「名刺やカードには、人となりや想いが詰まっているはず」その考えのもと、whooのご注文の中から気になった方のお仕事や考え方について、インタビューしてみることにしました。小さな紙の中にも宿る想いや美学は誰かのクリエイティビティを刺激してくれるかもしれません。今回は華道家の生駒敦さんです。

生駒さん_プロフィール

生駒 敦(生駒瓢曄)|1986年生まれ。奈良県出身。
華道家。華道家生駒瓢香斎を曽祖父に持つ、奈良で100年続く華道家一族の4代目。Instagram

奈良で100年続く華道家一族の4代目、フリーランスの華道家として活動中

―どのような活動をされているのでしょうか?
今年の5月に独立して、フリーランスの華道家になりました。奈良に住んでいるので、関西中心に企業の事務所やホテルエントランスの生け込みをしたりワークショップをやったりしています。
曽祖父が「花方」という花をいける華道家として花に携わり始めてから、僕は4代目になります。祖父も父も生花教室をやっていたのですが、僕はその形を残しながらも外に出て華道を広める活動をしたいと考え、SNS等での発信もしています。

―どのような経緯で華道家になったのでしょうか?
社会人になって最初は普通の会社員をしていたのですが、26,7になったときに、自分はこれから何をやっていこうかと悩んだ時期があったんです。元々家業に興味はなかったのですが、そのときに自分の家系の伝統があるのに、それをやらないともったいないなと考えました。当時は花の名前や扱い方も全く分からなかったのですが、とりあえず花の勉強をしようと思い花屋に転職しました。朝5時から夜中1時くらいまで働いて、大変でしたけどとても勉強になりました。

―家で学ぶという選択肢はなかったのでしょうか?
華道だけだったら父に習えばできますが、花業界も色々あって。意外と、花屋で働いてる人は華道のことを分からなかったり、華道の先生が花屋の花がわからなかったりするんです。華道は日本の文化で、花屋やフラワーアレンジメントは西洋の、主にフランス流が多いんです。この二つは真逆なことが多いので、一方を経験したからこそもう一方のことがわかる、というのもあるので外での経験は必要だっと思います。

枝2本、花2本でつくるミニマルな表現

―華道の特徴は?
非常に少ない本数で生けることです。枝2本と花2本の4本でつくるので、他の流派と比べると質素というか地味に見えるかもしれません。でも良く言えば最小限に表現できるもの、繊細なもの、という感じです。例えば1本の枝が枝分かれしている場合、さらにどの枝を使うか選び抜き、これ以上省略できないところまで絞り込みます。

華道家として印象づけるためにどうするか

生駒さん_名刺

―名刺にはお花の写真ではなくハサミの写真を入れていただいています
名刺で印象付けたいという思いがありました。花屋だったら花を入れるで良いと思うんですけど、華道家というのを一瞬で覚えてもらうのはどうしたらいいかと考え、ハサミを入れました。花屋だと細い花用と太い枝用でハサミを分けていることが多いですが、華道の時はこれ一本です。一番の違いは値段が高いことですが(笑)

―whooを選んでいただいた理由は?
名刺にはあまりコストかけられないけれどデザインにはこだわりたいと思っていました。安い名刺サイトはデザインがよくなくて、良いものを作ろうと思うとデザイナーさんにロゴやデザインを作ってもらう必要があり価格が高くなってしまったり、質と価格のバランスが難しいと思っていました。whooさんは、安いサイトと比べたら価格は高いですけど、デザイン料込みと考えればちょうど良かったので決めました。
人に渡したときには「かっこいいですね」と言われるので、よかったなと思っています。

華道の思想を伝えたい

―今後やりたいことは?
先日東京の企業で華道の体験会を行ったところ、興味を持っていただける方がとても多かったんです。感覚が研ぎ澄まされた方や最先端の方に、華道の思想が刺さるのだなとわかりました。なので今後は東京での活動にも力を入れ、もっとたくさんの方々に華道を体験していただきたいですね。

―どのような部分が刺さったのでしょうか?
いくつかあるのですが、一つは決断力が磨かれるというところでしょうか。西洋のフラワーアレンジメントは足していく文化なので、綺麗な花をいっぱい足して華やかにします。一方で華道は引き算の美学と言われているんです。いかに少ない本数で綺麗に生けるか、という思想が、例えば選択肢がたくさんある中でどれを選ぶか、といった経営者の経営判断などにも生かされるようです。

生花とフラワーアレンジメント

他にも近年注目されているアート思考のように、自分で作品をつくることで美意識が磨かれたり、GoogleやAppleで行っているマインドフルネス的な考えにもつながります。

―それらは華道独特の考え方なのでしょうか
弓道や柔道など「道」がついているものには近い考え方がありますね。例えば弓道って的に当てるのが目的じゃないんですよ。的に向けて放つときの精神状態が重要なんです。ヨーロッパ発のアーチェリーと似ていますが、アーチチェリーはスポーツです。弓道のいかに無になって打つか、という精神的な部分を鍛えることが日本の「道」が持っている共通点なんです。
また「禅」と「道」も近しい考え方があります。スティーブジョブズが『弓と禅』という本の影響を受けたそうで、日本の伝統文化が持っている考え方は世界のトップリーダーを惹きつけるものがあるのかもしれません。

無駄なことにこそ価値がある

壺中天_表紙

―思想的なことで一番伝えたいことは?
色々とあるのですが、曽祖父の意思を伝える為祖父がまとめた書【壺中天】にも多くのことが記されています。これは祖父が和紙に手書きしていたものを父がパソコンで打ち直して製本したものです。

なぜ花を生けるのか?というページに書かれている「花を生けることは生活の中では無駄なことだが、その無駄なことが人間的には重要なことだ」という部分は今の世の中にも必要な考えではないでしょうか。

壺中天_本文

「壺中天」という名前にも意味があるんです。壺って口が狭くて下が大きいですよね。上から見たら底の方まではよく見えないですが、実は奥には大きな世界が広がっているという、「見た目だけで判断しない本質をみよう」という意味なんです。

僕たちにも代々「華名」という、芸名みたいなものがあるのですが、僕の家系はみんな「瓢」という名前が入っているんです。瓢箪の瓢なのですが、瓢箪も口が狭くて下が大きいので壺と同じ意味がるんです。

―すべてに意味があるんですね
そうですね。華道って「花を綺麗に生ける技術」と思われがちなんですけど、それは手段にすぎません。花を生けるときには花を一本ずつ見て、花の本質を見るんです。そして最終的には自分に落とし込むんです。そうすることで自分のことを考えたり、見えてくるものがあるんです。最初のハードルが高いかもしれませんが、やってみると楽しいですよ!

まとめ

部屋にお花を飾ったりプレゼントで花束を渡したり、お花って空間や場を彩るものだと思っていました。でも華道の目的はそうではなく、奥深い思想を学びながら精神を鍛えるものなんだというのが驚きでした。本を読んだりセミナーを受けたりするのではなく、このような新しいアプローチからでもビジネスや生活へのヒントが発見できるのかも。華道のこと、日本の伝統文化のこと、もっと知りたくなりました。


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