4DXという『マトリックス』

2019年9月20日金曜日

私は、午前中から友達とショッピングモールを歩いていた。広告で何度も見た最新の大型ショッピングモールだった。ショッピングモール内は、各所にサインが配置され、案内されるように全体を見て回っていた。歩き回っていると、ショッピングモールの一番端に映画館が見えてきた。この映画館には、4DXなど最新の映画設備が入っていた。これも以前から出ていた広告で知っていた。私は、4DXの映画館で『マトリックス』がやっていることを知った。これは映画館内に提示された時刻表を見て知った。私たちは、『マトリックス』を見ることを決めた。

『マトリックス』は、AIに支配されている現実世界と、仮想世界を行き来することで、自らの世界を取り戻そうとする話だ。主人公は、NEOという少年である。今までの現実が情報世界であり、現実世界は、人間をエネルギーとしてAIが支配する場所となっていた。

これは、情報化社会により作られた仮想世界と現実世界を転覆させるような画期的な映画だった。

作品内の人間は、電脳で繋がれ脳内に作られた仮想世界に自己を投影する。しかし、現実の身体は、電脳に繋がれたまま動くことはないのだ。この現実と仮想の関係が、情報化社会と現実世界の転覆を生んでいるのだ。

『マトリックス』を見ながら、私は自分の今の状況に意識がいった。今の私は、4DXという映画システムの中で、映画を体験していることに気づいた。

そして私は、映画の中でNEOが頭に繋がれたプラグを抜かれた時のような強い衝撃を受けた。

この4DX内での私は、作品の中で展開されるストーリーを、映像、振動する椅子、水しぶき、風、触覚など感覚器官への操作によって、仮想の現実を体験させられているのだった。

身体は、環境を捉え、それらを体感して現実として受け止める。4DXでは、その環境が操作され、仮想的現実を作り出しているのだ。

ここでは、映画館内の空間が一つの現実として鑑賞者へ受け止められ、彼らは画面の中へ自己を投入している。

これはもう、どちらが仮想で現実なのか、両方の世界が判別できない、曖昧な感覚となる。自分は今、何を現実として捉えているのだろうか。自分が感じている感覚が、本物なのか作られたものなのか、全くわからない。

これは、『マトリックス』で提示された仮想世界と現実世界の転覆が始まっている証と言えるのではないか。今見ている現実は、本当に現実なのだろうか。誰かに操作された仮想世界ではないだろうか。

私は、『マトリックス』の社会がそう遠くないことを実感した。

最後に、『マトリックス』の世界では、人間は養分として吸い取られるだけの存在として表現されている。気づけない人は、一生をそこで終える存在となる。今の私たちが、既にそうなっていないことを願うばかりである。

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