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冬ピリカグランプリ入賞作品

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冬ピリカグランプリ入賞おめでとうございます。 シロクマ賞(1作品)・各審査員賞(5作品)・すまスパ賞(8作品)
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#冬ピリカグランプリ

「灯りの配達。」/#冬ピリカグランプリ  ショートストーリー

今日は大晦日。 私が待っているのは「灯りの配達」だ。 いつも12月26日から30日までの間に配達される。大晦日の配達は今までなかった。24日と25日は別の配達人たちが忙しくて、宇宙の交通が渋滞になるため「灯りの配達」は26日からという決まりになっている。そして大晦日には、配達人たちもお休みをとる。 だから、大晦日に普通「灯りの配達」はこない。もちろん大晦日に配達される場合もあるらしいので、私はそれに期待をしている。 不安に駆られる。やっぱり、私が原因かしら。 もしかしたら

切り取り線と糊代の相性【掌編小説】

僕は27歳の時、切り取り線を持つ君に出会った。 細い腕には、等間隔に配置された点線。きれいにカットできるミシン目も付いていた。  僕には糊代がある。  この国では「山折り」「谷折り」が多数を占め、次いで「糊代」、最も少数派なのが「切り取り線」だ。 これらは皮膚の一部であり、タイプの別は血液型の違いみたいなものだ。 世間では、タイプによって相性や性格の違いがあるといわれているが、科学的な根拠はない。  糊代は、僕の腕の場合、外側と胴体側の2箇所に付いている。1センチ幅

その灯りはピンク【ショートショート/冬ピリカグランプリ】

年末近いこの季節なら、出勤時刻の16時には間もなく夕闇のカーテンが下りてくる。 パート先は、県内では一番人気の地域密着型コンビニエンスストア。店内調理場で作ってすぐ並べる惣菜や弁当が、根強く支持されている。 バックヤードで着替えると、フライヤーとコンベクションオーブンの電源をオン。今日の製造数と種類を確認する。 商品は季節や天候から日毎に細かく算出され、指示される。調理場は朝昼夕の3交代制で、基本的にはそれぞれの担当が1人で仕切る。製造以外に洗浄や仕込みなど定時に終わらぬほ

明かりの灯る森

夜になると無数の明かりが灯る森があるという。 その森には沢山の生きものが住んでいた。 動物や植物…そして、こびと達。 それぞれがみな共に支え合い生きていた。 森に住むこびとには彼らにしかできない大切な役目があった。 夜になると森に明かりが灯る。 これはこびと達の大切な仕事だ。 毎晩こびと達は森のあちこちに小さな明かりを灯す。 それは外の世界に住む人間には見えない小さな優しい光。 こびとはこの森でこの大切な役目を担っていた。 夜に森を明るく照らしてしまっては ここに暮ら