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マツと思ったらモクマオウ?

 沖縄の新聞「琉球新報」に毎週木曜日に折り込まれる副読紙「週刊レキオ」にて、連載「葉っぱで分かる木々明解」を書いています。今回は、2020年7月30日号に掲載された第2回の記事をアップします。沖縄でよく見かける外来種のモクマオウと、在来種のリュウキュウマツ。よく間違われる両者の見分け方を、あなたは知っていましたか?

木々明解02マツとモクマオウ

マツと思ったらモクマオウ? 

 「あれ何の木かわかる?」と、モクマオウを指差して尋ねると、「マツでしょ?」と返ってくることが多い。確かに両者の外見はよく似ている。けれども、分類も由来もまったく異なる木なので、沖縄県民ならぜひ違いを知っておいてほしい。

 まずはマツ。沖縄に分布するマツ科の木は、リュウキュウマツただ1種。山に生えるマツも、街中に植えられたマツも、ほぼすべてがリュウキュウマツと思っていい。沖縄の県木であり、在来種であり、奄美から与那国島まで、世界で琉球列島にのみ分布する固有種だ。

 内地のクロマツやアカマツと同様に、針状の葉が2本ずつつく針葉樹で、幹は網目状に裂ける。老木では木の上部が平たくなりやすい樹形が、一つの特徴といえるだろう。大正時代に沖縄を訪れた英国人プラントハンターのウィルソンは、リュウキュウマツを「アジアで最も美しいマツ」と称したという。今でも、今帰仁村・仲原馬場のマツ並木や、読谷村・座喜味城のマツ林など、昔を彷彿とさせるマツの風景が各地に残っている。

 一方のモクマオウは、オーストラリア原産のモクマオウ科の外来種。荒地や砂地によく育つため、昭和初期から海岸林や防風林に植えられ、今ではあちこち野生化している。

 針葉樹のように見えるが広葉樹の仲間で、細長い緑色の部分は枝で、本物の葉は小さく退化している。「メリケンマツ」「ベイマツ」など、アメリカを冠した呼び名もあるのは、外見がマツに似て、戦後に増えたためだろうか。その旺盛な繁殖力や降り積もる落ち葉が、在来の生態系に悪影響を与えるため、駆除の対象にもなるなど、厄介者の一面もある。

 そんなマツとモクマオウが、チャンプルーで生えているのが、今の沖縄の風景なのだ。
 
<写真キャプション>
●左はリュウキュウマツ(琉球松)、右はモクマオウ(木麻黄)。モクマオウはやや青白く見える。
●リュウキュウマツの葉。2本の葉が束になり、葉先はとがり、さわると痛い。
●モクマオウ(トクサバモクマオウ、トキワギョリュウ)の枝葉。枝は緑色で先はとがらない。葉は1㎜程度の大きさで、トクサやツクシのように節に7枚前後がつく。
●左がリュウキュウマツの松ぼっくり、右がモクマオウの実。実があれば簡単に見分けられる。

<プロフィール>
林 将之(はやし まさゆき)
樹木図鑑作家。1976年山口県生まれ。2012年に読谷村に移住し、沖縄の樹木全種を紹介した『琉球の樹木』(文一総合出版)を出版。現在は恩納村在住。葉を集めてスキャンしながら各地の森を巡る。

※沖縄の木ついてより詳しく知りたい方は、拙著『琉球の樹木』(文一総合出版、共著)をぜひご覧ください。

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