(連載小説)秘密の女子化社員養成所㉜~女子化研修終盤の一大事・その3~
純子の逃亡から一夜明けた翌日の午後、小瀬戸島にいる社員全員が研修所棟内にある大ホールに集められていた。
純子が逃亡して捕まり、島に連れ戻された事は既にここの社員全員が知っており、逃亡した事に対して何らかの処罰が下されるのでそれを発表するために集められたのだろう等と察する不穏な空気がこの場に充満していた。
「それにしても森野純子ってバカよね。」
「ほんとそうよ。島外研修に連れて行って貰えたって事はあと数日で研修も終わるって事でしょ?。それなのになんでこのタイミングで逃亡なんかするのかしらね?。おとなしくしてたらいいのにバッカじゃないの?。」
などと何も知らない一般の社員達は純子が逃亡した事だけをかいつまんで好き勝手な事を言い、蔑んでいた。
「何よ、あなたたちお姉様に純子ちゃんの何が分かるって言うの?。」
「純子ちゃんはね、この島に来てすっごく頑張って女になったのよ。その純子ちゃんがここまでするって事は何かあったって事が分かんないの?。」
横で純子の悪口を聞かされていた悠子たち同期はこの上下関係の厳しい研修所内で先輩社員たちに楯突く訳にも行かないので口に出すのはぐっと堪えながら自分たちの純子に対する思いを心の中で呟いていた。
そして時間になったのか舞台の袖から堂園部長と渚主任が大きなどよめきと共に現れた。
「えっ!!・・・・・うそでしょ??・・・・・。」
壇上に現れた堂園部長はサイドも後ろも刈り上げたベリショで、また渚主任はトレードマークのストレートロングをバッサリと切った刈り上げおかっぱと二人共とても短くなった髪形で登場したので会場は大きくどよめいた。
そして渚主任がマイクを持ち、この緊急集会が始まった。
「えー皆さん、もう既に知っていると思いますが研修生の森野純子が昨日の島外研修の際に逃亡を図りました。この件につきましてこれから臨時の社員総会を開催します。」
自慢のストレートロングをバッサリと切り、まるでメイドがするような刈り上げおかっぱになってしまっている渚主任だったがそれについて全く臆することなく淡々と語り、会を進行し始めた。
「昨夜私たちは三浦所長を交えて森野純子の逃亡に関しての処分について議論と検討をしました。そこでまず森野純子の逃亡を防げなかった事に対して責任を取ると云う意味で引率しておりました私、渚と教育指導部トップの堂園部長はこのように断髪をして反省の意思を示す事になりました。」
「・・・・・」
それを聞かされた会場からはより不穏な空気が充満していた。いくら渚や堂園部長が担当部署の幹部社員や当日の責任者とは言え、純子の逃亡を防げなかったというだけでこうも無残に断髪をしなければいけないのかと云う雰囲気になっていたし、またそれなら当事者はもっとひどい仕打ちをこれからされるのだろうと云う事は誰もみな容易に予想がついていた。
そして会場がざわめく中、今度はメイド服姿で手枷・足枷と首輪をされた女性2名が壇上に現れた。
「誰?この子?・・・・・。えっ!!もしかして・・・・・。」
見れば更にざわめくこの会場の壇上に引っ張り出されたのは純子の指導役でもある先輩社員の杏奈と菜美だった。
「この杏奈さんと菜美さんは昨日の島外研修に森野純子の指導役・監視役として随行していたのにも関わらずに責務を充分に果たせず、それどころか逃亡を許してしまいました。その事につきましても協議した結果、この指導役の二人にも責任はあり且つ重大だと云う結論となり、罰として今後1か月間下級社員に降格させ、メイドをさせる事になりました。」
と渚が言うと二人は壇上で深々と頭を下げ「皆さま、この度は私たちの不甲斐なく至らぬ行為が元で森野純子を逃亡させてしまうと云う大変な不祥事を招いてしまい、誠に申し訳ございませんでした・・・・・。」とお詫びの言葉を口にした。
「私たち2名はこれから1カ月、メイドとして皆さまの事を”お姉様”と呼ばせて頂きながら反省の意味を込めてしっかりとお仕えさせて頂きます。」
そう神妙な面持ちで言う杏奈に対し、渚はすこしニヤリとしながらこう言った。
「そう、お前たちは反省してこれから1か月間メイドになってお仕事するのね?。」
「は、はい・・・・・そうさせて頂きます。申し訳ございませんでした。」
「だったらちょっとこれは無いんじゃない?。」
「えっ?・・・・・な、なんでしょうか?・・・・・。」
そしてマイクを持ったまま渚は杏奈と菜美に近づき「お前たちメイドになるって言ったわよね。けどこの島のメイドがしていい髪形って決まってると思うんだけど知らないの?」とわざとらしく言う。
「・・・・・」
そして渚は黙ったままの杏奈と菜美に向って「おまえたち、メイドになるんでしょ?。だったらメイドらしい髪形にしないとね、ふふふっ。」とサディスティックな表情と口ぶりで言うと、壇上にある椅子に二人を座らせた。
椅子に座らされた二人に手早くカット用のケープが掛けられると、今度は身動きできないよう手足はもちろん、身体も固定具で椅子に縛りつけられた。
「さあ、杏奈さん。この島でのメイドがする髪形ってなあに?。答えてごらん。うふふ。」
「は、はい・・・・・か、刈り上げおかっぱで・・・・・す・・・・・。」
「そうよね、メイドは刈り上げおかっぱ以外の髪形はしちゃいけない決まりになってるわよね。でもあなたのこの髪形は全然違う髪形よね、ふふふ。」
そう言われた杏奈は自分の胸まである自慢のロングヘアを恐怖心からか小刻みに震えて揺らしている。
「ねえ、菜美さん。それにあなたもなんだかメイドらしくない髪形だけど・・・・・。」
「も、申し訳ご、ございません・・・・・。」
そして同じように渚から言われた菜美もやはり同じように自慢のロングヘアを椅子の上でブルブル震えながら揺らしている。
「お前たちメイドになるんでしょ?。あたしだってこんな風に反省するって事で髪を短くしてるのにメイドになるお前たちにそのロングヘアは似合わないと思うわ。どうかしら?。」
「は、はい・・・・・も、申し訳ございません・・・・・。」
「え、何??。さっきから申し訳ございませんって言ってばっかりだけどそれ以外の反省の言葉がお前たちから全く無いじゃない!!。」
そう渚から厳しく言われると杏奈は泣きそうな表情で「わたし・・・・・メイドになる自覚が足りてなくてすみません・・・・・。髪形をか、刈り上げ・・・・・お、おかっぱにしたいと思います・・・・・。」と言った。
そして横にいた菜美も「わ、わたしも自覚が足りなくて申し訳ございませんでした・・・・・。メ、メイドとしてわたしも髪形をか、刈り上げ・・・・・お、おかっぱにし、します・・・・・。」と同じく泣きそうな表情で言うのだった。
「あら、そう?。やっと少しはメイドになる自覚が出来てきたようね。じゃあお望み通りお前たちのこのきれいなストレートロングの髪をバッサリと切ってメイドらしい髪形にしてあげるわ、うふふっ。では遠慮なくやりなさい!!。」
「はい!!。」そう返事をし、ハサミを持って舞台に上がってきたのはなんと麗子と遥香だった。
「れ、麗子?、それに遥香?。な、なんで?、美容師さんにあたしの髪を切られるんじゃないの?。」
そう呟きながら驚いた表情をしている杏奈に渚が「こら!!メイドのくせに社員を”お姉様”と呼ばないのはどう言う事かしら?。」と厳しく叱責する。
その渚の言葉を背にお墨付きを得た麗子と遥香は壇上で椅子に縛り付けられている二人の元にゆっくりと歩み寄って行く。
実は杏奈と麗子は研修生の指導役としてそのサディスティックな性格や妥協の無い女子化指導をする事でお互いライバル意識が高く、それもあって研修所内でも麗子と杏奈は強烈なライバルだとして有名だった。
また遥香にとって菜美は自分が研修生だった時の指導役だったのだが、毎日当たり前のようにパワハラ的な指導をされていて、いつも遥香は菜美には泣かされていたのでいい感情は持っていなかった。
その事は渚も知っており、自分に対していい感情や印象を持っていない者に敢えて髪をバッサリと、それも公衆の面前で切らせる事でより罰として恥ずかしい目に合わせようと考えて麗子と遥香に二人の断髪を命じたのだった。
「あーら、杏奈ちゃぁーん。メイド服がよく似合ってるじゃなぁーい。うふふ。」
「あ、ありがとうご、ございます。れ、麗子お、お姉様・・・・・。」
とニヤリとしながら杏奈の髪を撫でながらそう言う麗子の横で遥香も同じように「菜美ちゃんってさあメイドになっちゃうんだー。やだやだ、普段偉そうな事言ってる割には肝心なところでちゃんと指導ができないのねー、あはは!。」とこれまでは自分の指導役や先輩社員だった事もあり、おとなしくしている他無かった菜美に対して上から目線でそう言っている。
「は、遥香お姉様す、すみません・・・・・わたしの不甲斐なさで純子を逃亡させてしまって・・・・・。」
「ほぉーんとそうよねー。菜美ちゃんは今までもあたしにもそうだったし他の女子化研修生たちにもいっつも無理難題ばっかり吹っ掛けて困らせてくれてた割にこの体たらくはなあに?。」
「も、申し訳ございません・・・・・。」
と遥香は今までの菜美に対する鬱憤を晴らす気持ちもあってハサミを目の前でちらつかせながらここぞとばかり言葉責めをしている。
そしてそのやりとりを見ていた渚から「じゃあ麗子さん、遥香さん。そろそろこの不甲斐ない二人の髪をバッサリと切ってメイドらしくしておやりなさい!!。」と声が掛かるとスクリーンに縛られたままの杏奈と菜美が写しだされ、壇上だけでなくスクリーンにも会場の視線が集中する。
「はぁーい、では遠慮なくこのお馬鹿で指導もロクロクできないこの子たちの髪をバッサリといっちゃいまぁーす!。ほら、じっとしてなさい!!。」
と麗子が言うと次の瞬間、杏奈のロングヘアに容赦なくハサミが入った。
「ジョキ、ジョキジョキジョキ・・・・・。」
そして杏奈の髪がケープの上にハラハラと落ちていき、同じように横の菜美の髪にも遥香によってハサミが入り、二人ともロングヘアと云う事もあって大量の髪の毛がケープを伝わるように落ちていく。
「いやん・・・・・やっぱりおかっぱはいや・・・・・。」
そう泣きながらつい正直な気持ちが口をついて出た杏奈だったが、麗子は気にせずそれどころかこの島の社員でも1,2を争う持ち前のサディスティックな性格を前面に出し「え?。杏奈ちゃんって早くメイドらしい髪型のおかっぱにしてほしいんだー。いいわよー。お望み通りこのロングヘアをもっともっと切ってあげるわね。うふふ。」と杏奈が言ったのを聞こえないふりをしてザクザクと髪を切り刻んでいく。
また同じ様に横で遥香も菜美のロングヘアを麗子同様容赦なく切り刻んでいた。
「でも純子ちゃんの逃亡の責任を取らされてるとは言え、ほんとにいい気味ね・・・・・。」
そう心の中で呟きながら髪にハサミを入れ続ける遥香だったが、他にも同じような心境で会場でこの様子を見ている社員は結構居るのだった。
「杏奈っていつも偉そうで高飛車だったからこうしてみんなの前で恥ずかしく髪を切られてメイドになっちゃえばいいクスリになるわ。」
「この二人っていつも”あたしが次世代の小瀬戸島のエースよ”みたいな振る舞いをするんで辟易してたからちょうどいいお仕置きだわ。ふふふっ。」
「菜美って杏奈にいつもくっついてて何かあったらバックに杏奈がいるのよって偉そうにしてたけど、罰でメイドにされちゃうだなんていい感じ!。」
と余計に日頃から杏奈や菜美の事をよく思っていなかった社員たちにとってはこうして二人が罰としてメイドにされてしまう事は女性特有の妬みや嫉妬の感情も手伝っていて痛快なようであり、面白がって見ている者さえいた。
そして二人とも髪を後ろは耳たぶの辺りまで、そして前髪は眉毛が全て見える長さにまでバッサリ切られたところでここからは麗子と遥香に代わって島に常駐の美容師が仕上げに掛かった。
補助として壇上に上がった体育会系の社員に杏奈と菜美はそれぞれ頭を掴まれて前屈みにされ、そして美容師が後頭部にバリカンを当てていく。
「ウィーン、ガリガリガリ・・・・・。」
大きくて無機質な機械音と共にバリカンが杏奈と菜美の後頭部を伝い、どんどん髪の毛が刈り上げられていく。
「あん・・・・・いやん・・・・・もうやめてぇ・・・・・。」
この頃になると杏奈も菜美も髪を切られながら大泣きしていたが、バリカンで刈り上げられる事で更に惨めな気持ちになったのかもっと顔をグシャグシャにしながら泣きわめき、壇上のスクリーンには泣き顔と別のカメラで写しているバリカンでの刈り上げの様子が画面を分割して同時に流れている。
そして断髪が終わり、拘束具を外された杏奈と菜美は命じられるがままに椅子から立ち上がるとそこには先程までの自慢のロングヘアだった頃の面影さえ全くない短く切り刻まれて刈り上げられた無残なおかっぱ頭にされた姿で泣きじゃくったまま壇上に晒されていた。
「くすくす・・・・・やだ、超ダッさぁーい、あはははっ!。」
「うそでしょ?・・・・・ここまでする?・・・・・。」
場内では杏奈と菜美を良く思わない社員からは溜飲を下げるかのように二人の惨めな姿を喜んで見ている者がいる反面、強制的に髪を切られてメイドとしてこれから1カ月間奉仕させられる事実を目の当たりにしてこの研修所の余りのサディスティックさにおののく者もいた。
「ではここで一旦休憩とします。15分後に再開しますのでそれまでに会場に戻ってくるように。」
その渚の声でスクリーンの画像がよく見えるよう証明が消されていた会場には明かりが灯り、何人かがお手洗いや外の空気を吸いに席を立った。
杏奈と菜美は手枷・足枷をされたまま今度は食堂前に連れて行かれ、いつぞや悠子もされたように通称「反省柱」と呼ばれている部屋の前の太い柱に麻縄で縛り付けられている。
そして縛り終えられた二人にやはり悠子がされたようにサンドウィッチマンがするようなプラカード調の看板が付けられ、そこには「私達は研修生の逃亡を許した最低の指導役です」「罰として今日からメイドになります」と書かれていて周りには早くも人だかりがしている。
そんな恥ずかしい姿で晒されている杏奈と菜美を取り囲むようにして見ていた社員のうちからハンドバックに入れて持っていた自分のリップスティックを出すとなんと縛られて身動きできない二人の顔にそれを使って「バカ」「ブス」「ボケ」等と書く者が出始め、またそれを誰も咎めようとしない。
書いているのは日頃から杏奈と菜美をいいように思っていない社員たちだったが、彼女たちのその様子をたまたま通りかかって横目で見ていた悠子と紗絵は罰としてメイドにされ、こうして恥ずかしい姿を晒されなくてはならない事やその恥ずかしい姿の二人に元々気に入らないからと言ってイジったり蔑むような意地悪な事をする人に対しても含め、この小瀬戸島の研修所の真の姿を改めて見たような気がした。
「はあ・・・・・杏奈さんたちもお気の毒だけど、指導役って云う事だけでここまで屈辱的な事をされなくちゃいけないのね・・・・・。」
と休憩時間と云う事で輪になって喋っていた研修生たちだったが、そんな風にため息交じりで穂波が言えば涼子も「ほんとそう。渚主任も堂園部長も責任取るってバッサリ髪を切ってるし、杏奈さんたちでさえあそこまでされるんだったら純子ちゃんは一体どうされるのかしら?・・・・・。」と言う。
「やっぱり・・・・・去勢されちゃうのかしら・・・・・。」
「・・・・・」
そこまで言うと同期4人は沈黙の空気に包まれた。
確かにこの研修所の規則では最大の厳罰は「去勢」と聞かされているが、もう純子に対して情状酌量の余地はないのだろうか?・・・・・。
確かに純子が逃亡を図ったのは良くない事ではあるけれど、でも心を入れ替えてここまで女子化に励んできた純子の頑張りを認めて欲しい・・・・・。
そんな事を同期のみんなで願う様に思っていると「はーい、休憩時間は終わりですー。みんな席に戻りなさーい!。」と渚主任の緊急集会の再開を告げる声が会場に響き渡った。
(つづく)
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