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2ミリ位の可愛いやつ。

毎晩僕が一服する為に外へ出ると、僕の玄関の扉にべったりくっついているやつがいる。そして今日もあの子はいた。何食わぬ顔で澄ました表情。何を考えているのか?何が目的でそこにいるのかわからない。でも僕はその子を見るとホッとする。

「今日もここにいたのかい?」

いくら声をかけた所で僕の声など聞こえていないようだ。
小さくくりっとした目。薄緑色にニョキッと生えた小さな手足。一生懸命扉に張り付いて離れない。

僕は玄関前にしゃがんでライターで火を灯す。
最近もっぱらメンソールが美味しく感じる。というかメンソール以外はクラッと来てしまう。赤マルなんて吸えなくなっちゃった。昔はメンソールなんて絶対に吸わないと思っていたのに、年々値上がりするせいで安いものに手を出したのがきっかけだった。

そもそも禁煙をすればいいのに、中々出来ないでいるんだよね。こればっかりは無理だ…。
一口タバコの煙をフーっと頭上に吹き上げると「ストン」という音と共に僕の肩に何かが触れた。
別に虫は割と平気な方なのだが、流石に急に肩に触れれば驚いてしまう。「ひゃあ」と声が出て、むせ込んでしまった。ゴホゴホしながら肩を擦るが何もいない…。

「なんだよ一体…」なんか嫌な気分になりふとズボンの膝部分に目をやると、いました…。

可愛いあいつが僕の膝に乗っかっていた。
何食わぬ顔をしながら、暫く目をしょぼしょぼさせている。身体を一切動かさず一点を見つめる小さな目。
僕の顔を懸命に覗きながら、まるで何かを語りかけているようだった。

「不意に乗ってくるから、危うく潰してしまうところだったんだぞ」

と背中をコツンと触ると、元気よく飛んで行ってまだ定位置に張り付いてしまった。

「相変わらず可愛いやつだ」なんだかほっこりして暫く見つめていると、玄関にうごめく影が…。

今日はお友達を連れて来たのかな?それとも家族を紹介しに来たのかな?

小さい体でちょこちょこ動いては、時折飛び跳ねる。

あああああ可愛い…。
なんとも愛おしい生き物なんだろう…。
梅雨も明けて、本格的な猛暑がやって来るという報道を見たばかり。そうか…。今年も一際暑い夏がやって来るんだな。夏の初めはいつも彼らが教えてくれる。

僕の家の周りの田んぼ。放置された様に佇む自動販売機。そして家の玄関前。彼らを眺めては夏の訪れを感じる。

毎年毎年来る年来る年、彼らは不思議な見た目と声で僕に教えてくれるのだ。

愛くるしいおめめと小さな身体で、一生懸命夏の訪れを伝えにやって来る。

今年もご苦労さん。背中に触れるとすっと何処かへ行ってしまった。

そして今日はなんと僕の家の中までお邪魔に来た。随分と大胆な行動に出たものだ、そして急に僕の枕元にうごめくアイツがいた。ひょっこりと目の前に姿を現したと思ったら、すっと目を閉じ始めた。「まさかお前もここで寝るわけ?」そんな言葉ももはや聞こえてないかのように、スースー寝息を立て始めた。

薄緑色の身体はよく見ると透き通って綺麗だった。
黒と赤の次に好きなライムグリーン色。色鮮やかな小さな生物に僕は「ライム」と名付けた。

そのまま僕もいつの間にか眠りについていた。
ライムの朝は早いのだろう?僕が目を覚ます頃には何処かへ消えてしまっていた。外へ出たのか?家の中に彷徨っているのか?カエルの行動パターンは一切読めない。
だけど決まって夜になると目の前にひょこっと現れる。もはやライムは家の家族の一員なのだ…。


ああなんとも愛おしいライム。時折僕の上に乗って甘えて来る。手のひらに乗せると顎を動かして目を細める。
普段は何を食べているのかな?何処で何をしているのかな?こんな小さな身体で大胆にあちこち出て回る。インドアな僕とは大違いだ。まぁお陰でライムの遊び相手になってやれるんだけどね。


ほんの2ミリ位の小さなアイツは、僕の心をいとも簡単に奪ってゆきました。時折ライムの行方を追っている自分に気がつく。どう頑張っても見つかりやしないのに、まるで飼い主に構って欲しい飼い犬の様に甘えようとしているのかも?アマガエルだけに!?


今度カエルの好物を置いて誘ってみてみようか?
まんまと現れて捕まるライム。想像するだけでキュンとしてしまった…。


もしもっとテクノロジーが進んで、ゆくゆくは動物や爬虫類と会話が出来る時代が来ればいいのに。

そしたらライムにこの名前気に入っているのか聞いてみたいなぁ…。何が食べたいのか聞いてみたい。そもそも人間をどう思っているのかもね?



あっ…。でもその時まで生きてるかなぁライム…。
オマケに生物が長生き出来る薬でも発明して欲しい位だな



あっ微かにゲコって声が聞こえた気がする…。
今の声は賛成?それとも反対?




あーあ先ずはカエル語を頑張って勉強するしかないか…。
グーグルに乗ってるかな?


ははは何を言ってるんだろう僕は…🐸🐸🐸🐸🐸

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