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『イカはしゃべるし、空も飛ぶ』 (私的読了記11)

 <肴は炙ったイカでいい~♬>とは、演歌の一節だけど、イカを好んで食べる民族って、日本人くらいで、他の国では食べない人が多いみたい。
 日本人は無類のイカ大好き民族ですね。そんな「イカ」好きな諸氏、世界にイカはどれくらいの種類があるかご存知でしょうか。

 世界にイカは、知られているだけで、およそ33科450種あるそうです。
そのうち、日本人は約30種ほどを食しているそうです。
  いまはもうちょっと増えたりしているのかもしれません。

『イカはしゃべるし、空も飛ぶ~面白いイカ学入門~<新装版>』
 奥谷喬司 著(2009 ブルーバックス 講談社)

 タイトルの秀逸さに惹かれて読んだのですが、なんともイカのことについてこんなに勉強できる本も少ないでしょう。というのが読了した感想です。古さはあまり感じません。

・そもそも「イカ」の語源は「食べ物そのもの」である
・ヤリイカは集団結婚をする
・”おしゃべり”なイカもいる
・イカには心臓が3つもある
などなど、帯だけでも惹かれます。「イカのイカした話が満載!」というダジャレさえ許せます。

 本書の構成ではまず、「イカと日本人」という章。日本人とイカの関わりについて、いろんな角度の話で、これでもか、これでもかと話題を用意してくれます。
 そういえば、イカやタコといった日本人にはお馴染みの生き物も外国にいけば、「悪魔」扱いされて忌み嫌われているという話をよく耳にしますが、
タコなんて、よくアフリカ西部のモーリタニア産が出回っていますが、現地の人たちは食べないそうですね。こんなに美味しいのにね。
あの独特のぬめりのとり方を知らないからでしょうか。

 タコはともかく(タコごめんね)、イカ料理といえば、イカリング、いかそうめん、イカと里芋の煮ころがし、塩辛、するめ、いかめし、刺身、酢の物と沢山ありますよね。どれも涎がおちそうです。それほど、日本人の生活には根付いたものです。

 考察では、そんな「イカ」料理にまつわる話から、漢字でなぜ「烏賊」と書くのかなど、「イカ」のアラカルトあれこれという感じで蘊蓄責めにあうこと請け合いです。途中からは、日本人にお馴染みのイカの種類のそれぞれについてマニアックに説明してくれます。 
 例えば、「アカイカ」。回るお寿司でも見かけるようになったアレですね。もともと、大味で、「ばかいか」といわれ顧みられなかった種ですが、スルメイカが獲れなくなってきたことと相まって獲られ出した種のようです。これは、ほかの文献でみたことですが、「紋甲イカ」の代用に使われたり、今は正確に「アカイカ」と名乗っていたり、当初は「さきいか」など加工用途で使われることがおおかったようですが、最近は寿司ネタに堂々と出ていたりするのですね。巨大なイカで、一匹から1,000貫分もとれるそうです(すごい)。それにしても、こんなに「イカ」のこと考えることなんてないですからね、日常で…。

 第2章は、「イカの設計図」ということで、イカの体の構造や器官などの機能などのお話です。
 「イカは主婦と仲がいい?」ともいってます。なるほど、イカを捌く場合、頭をもって引っ張れば、ずるずると内臓もとれて意外と簡単で、鱗も落とさなくていいし、ほとんど捨てるところもないので、台所にはやさしいということなのでしょう(墨袋破らないようにしないといけませんが)。
 また、イカの祖先は、オウムガイやアンモナイトのようですね。なんとなくわかるような気もしますが…。
 ともかく、この章もイカの身体機能について、結構詳しく説明してくれます。イカの嘴”からす・とんび”と「竜涎香(りゅうぜんこう)」の関係、イカとタコの吸盤は似て非なるもの、etc…。なるほどの連続です。う~む。

 第3章は、「イカの超能力」…エスパー?って話ですね。いや、巨大イカの話に始まって、イカ墨のこと、例えば、黒でなく、光の墨を吐くイカの話であったり、墨を吐くことで死んでしまうイカもあることなど、これも面白い。ホタルイカがなんのために発光しているのか、空を飛ぶイカの話、また、おしゃべりなイカもいれば、寡黙なのもいるなど、興味のつきない話ばかり。
 わたしも釣りをときどきするのですが、サヨリを釣っていると、餌によってくるサヨリによって性格がちがうのか、警戒心の強いやつは、見向きもせずに颯爽といってしまうのですが、なかには一度通り過ぎたあと、おやっといった感じで、後ろ髪ひかれたようにわざわざ戻って来て、くんくん嗅ぎ寄りながらバクっといくのもいて、なんだか人間味あるやつだなぁ、鈍くさいなぁ~とおもわず逃がしてやったことがあります。サヨリもイカも性格いろいろなんですね。

「空飛ぶイカ」姿映る、YouTube動画(「The Cosmos News」さん)より引用。残念ながら、動画ではなかったですが、貴重な写真ですね~。 

 そして、第4章は、「イカの愛と性」。なんだかポッとなっちゃいますが、その1が(華麗なるイカのセックス)とくるものですから、ますますイカみたく色が変化しそうです。
 ちなみにイカは腕でセックスするそうですが、ヤリイカとスルメイカの体位は女性上位だそうです(誰に話すネタやねん、しかもヤリイカってあなたw)。
 おもしろかったのは、コブシメというイカの雄がみせる顔色です。
 雌が産卵しているときには、体の半分を静寂の色という、安心色にして、雌を安心させる一方で、ライバルの雄がいる方に向かっている身体は威嚇色にしているという二面性です。人間でいえば、左手はやさしくパートナーに触れながら、右手はナイフをもって恋敵を寄せ付けないようなものでしょうか。それから、「イカの集団結婚」の話、死の「恋の乱舞」と、これも切なくも荘厳な話です。

 第5章は、「イカの暮らし」。デイリーのことですね。最初に(イカの親は薄情)とこれもいきなりパンチが効いてます。これは「タコ」にくらべて薄情ということですが、生態や進化過程において、子どもの保護の仕方が異なるのは興味深いところです。
  ほか、イカの寿命についての話や、スルメイカの「大旅行」といわれる回遊の話、イカの捕食の話。
 「アオリイカ釣り」などしていると、イワシやアジを餌にしたときに、頭の下あたりの背中上部部分だけが食べられているのをみると、「アオリイカやな」って友人やそばにいた釣りしてる「おっちゃん」がいっていたのを思い出しました。硬い部分は嫌いだなんて美食家なのかしらん。
 ほかにも、イカの天敵の話、イカは自然界の貴重なタンパク源であることの話に言及しています。

 最終章の第6章は、「イカの現在・過去・未来」と今にもつながる話です。イカ漁の変遷、漁獲対象となってきたイカ種の変容についてなど、イカ漁の歴史と展望といったほうがいいのかもしれません。
 日本人はイカを求めて、ヨーロッパの海、東南アジアの海、アラビア海、北米沖、オセアニア海など、イカのいるところに日本の漁船ありという感じで、世界の海をまわっていますね。これはそうだろうなとは思いつつ、遠洋漁業船はすごいなぁとあらためて感じてもしまいました。
 漁獲量の対日割り当ての話もそうですが、経済水域の話など、政治の話し合い部分がとても漁獲量に影響するといえばそりゃぁそうですが、輸入産物に多くを依存する日本にとって、これはとても重要すぎる話ですね。なんせ、世界中のイカの半分は日本で消費されるらしいのですから、もうイカなしではイカない国民なのでしょう(失礼しました)。
 ほかにも、「イカ」と「液晶」との関係、「イカ」の神経モデルとコンピュータの関係など、こんなところにも「イカ」が?という話も刺激的だ。

 世界の食糧問題にも、「イカ」には熱視線が注がれている。
 FAO(国連食糧農業機関)も、「イカ」に注目しており、食用資源としてのイカの潜在資源について、調査をおこなっていたとのことだ。
 
  著書でも、たとえば、南極は最後の「イカ資源」の宝庫かもしれないことなど、各海域での有望な「イカ」資源について解説があるが、10年経っている今、状況はどう変わっているのかがとても気になった。

 著書を読んでいると、俄か「イカ」マニアのように、誰かにしゃべりたくなりますが、これで入門書ですから、もっともっと奥が深いのでしょうね。

 祖父母のいた秋田では、冬場になると、「ハタハタ」が接岸して、冬の貴重な栄養源として重宝されてきました。
 わたしも、「ハタハタ鮨」が大好きで時期がくると頼んだりするのですが、最近は、毎年のように不漁がつづいて、購入できるかどうか微妙なことがおおくなっています。
 ハタハタの個体数が年々減少して、産卵数も減ってきているのでしょうか。ひとつには漁獲量をコントロールするのは難しいという事情があるのでしょう。漁業の場合、稚魚を放流したり、漁獲量制限しても、海は結局、つながっていることもあり、魚は回遊するものなので、ひとところの地域だけで頑張っても、他の地域や外国船が獲れば、それは遠い海域のことであっても影響は出るのでしょう。それであれば、もうそんな努力などせずに獲れるだけ獲ろうという気にもなるのかもしれません。
 後継者不足の問題も、そういった次世代へつないでいこうという気持ちをもしかしたら萎えさせているのかもしれません。
   いずれにしても、一地域だけ、日本だけでどうにかなるような問題ではなくなって、全世界で話し合ってルールを決めていかなければ埒があかないラウンドに移っているのは間違いないでしょう。
 これからも、お寿司やお刺身、お魚そのものが口にできるのかどうか、もしかすれば、将来は一部のお金持ちしか、魚料理は食べられない時代が到来しても、それは、ありえるシナリオかもしれませんね。
  その場合は、代替となる今まで見向きもしなかった「イカ」のようなものも食べているのかもしれませんね。いや、「イカ」に限らずとも。

 われらが島国、緑生い茂る山々があって、また、四方を海に囲まれていても、やはり食糧のことは大きな問題であって、いろんなものを食べる努力をしてこなければならなかったのでしょうか。
 日本人って、なまこを食べたり、糠漬けして毒気を抜く石川県の「ふぐ卵巣の糠漬け」なんてのもありますが、すごい発想で感心してしまいます。
 そもそも、毒があるのに、きれいに捌いて、トラフグも食べちゃうようなことがすごいなぁと。
 先述の、「ふぐ卵巣の糠漬け」なんて、なんとかして食べてやろうという情熱の賜物なのでしょうか。あの猛毒テトロドトキシンを数十種の微生物が分解しちゃって無害化しちゃうなんて、さすが漬物大国ニッポンの智慧なのでしょうか、経験なのでしょうか。ついでに、わたしの心中の毒気も抜いてくれないかしら。

 これからは、このような今までは食べ物として認識さえしていなかったものを食べてしまうという知恵や技術が、あらためて必要となる世の中かもしれません。
 必要は発明の母ですから、欠乏はそれすべて、悪いものではないかもしれません。「オイルショック」が自由経済システムと計画経済システムの性能差を結果的に如実にしてしまったように、困窮が新たな改良を生むということはあるかもしれませんし、日本は少子高齢の人口減社会へという流れですが、世界でみれば人口増トレンドですから、一説には、地球の人口支持力は120億人といわれているので、人口爆発が起これば、食糧問題、エネルギー問題、環境問題も一気に難問を人類に突きつけることになるかもしれません。

 そんなときに、「イカ」や、今まで日本人が得意としてきた、「食べちゃうのそれ?」という発想が活きて来るかも。

 「イカ」だけの話でなく、世界の食糧事業問題の解決糸口も提示しているんじゃないかこれってなど、おもったりしましたが、

 さてさて、イカがなものでしょうか……。


 トップ画像引用元:<a href="https://www.ac-illust.com/main/profile.php?id=dYbZWWJ0&amp;area=1">まるねこ</a>さんによる<a href="https://www.ac-illust.com/">イラストAC</a>からのイラスト



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感涙( ;∀;)
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読書やコラム、記事、見聞したものに対して徒然に書いてきたいです🙂。omnivore(雑食動物、乱読、広く興味を持つ)なるままに。現代詩好き。茨木のり子、吉野弘、石垣りん、高橋順子、馬場あき子、河野裕子等。歌は洋楽AOR系が好き、青春はMTV、渡辺美里、大江千里。
コメント (7)
はじめまして。大のいか好きです。
面白いですね~。
この本を読んでみたくなります。
ちぃ坊様、はじめまして。いか好きなんですね。私も大好きですが、私の場合はいかもの食い扱いされる場合が多いですw。本書は面白いですよ。本書にないことも投稿では書いてますが、ほとんどこの本の引用です。ブルーバックス自体が学術系なのでややお堅いところもありますが、イカに関してはよくもまぁこんなにネタあるよねって感じです。少なくとも読めばイカ語りは出来そうな本ですよ。
この記事読んだだけでもイカ博士です😆!
最近 イカの塩辛にハマっています…🦑
塩分摂りすぎ、イカん イカん…🙇‍♀️
ふわり様こんばんは〜。イカの塩辛🦑いいですねー。なんだかお酒🍶したくなりました。コメントありがとうございまーす😊
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