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「栃木戦を前に『アルビについて語るときにアルベルト監督の語ること』をまとめてみた」

【ALB Link Vol.8 -2020.8.2 栃木vs新潟-】

1.はじめに

新型ウィルス禍の影響でさらに過酷になったJ2リーグ、皆さん、2020年のアルビレックス新潟を楽しんでいますか?

突然ですが2019年12月のサポカンにて是永社長より「アルビレックス新潟 2019シーズン総括」と題し、「地域連携」「Football」「toC」「経営基盤」の4つの切り口でクラブの19シーズン総括、今後の中短期的目標・方向性について1時間30分以上の長時間に渡ってプレゼンがありました。そこで掲げられた「Football」の2020年の目標を覚えていますか?

答えは、「J1昇格」と「新潟のクラブフィロソフィーの確立」です。

「J1昇格」はわかります。では「新潟のクラブフィロソフィーの確立」とは?プレゼンで是永社長は「いまメソッド部門含めて『こんなサッカーが新潟なんだ』というのを作り始めている。それをトップチームと一気通貫でつなげていく、その初年度にしたい。」と説明していましたが、素人的に「新潟のサッカースタイルの確立」と受け取り、一番興味がわきました。

2020年2月に京都で行われたアルビレックス新潟後援会関西支部の開幕前決起集会にて、出席された是永社長とたまたま隣席となったため、これ幸いと直接聞いてみました。
「サポカンの目標で新潟のクラブフィロソフィーの確立ってありましたけど、アウトプットは何になるんですか?」
社長は、一瞬、小難しい奴やなっていう表情を示しながら(笑)、きっぱりと一言、
「アウトプットはピッチを見ていたらわかるよ。」

その後、鍋が運ばれてきて大宴会となったので、その話題はそれで終わりましたが、今季、アルビレックス新潟のサッカースタイルが確立されるんだなと確信しました。

では、どんなスタイルが確立されるのか。是永社長は著書にて「チームをどう導くかは、基本的にアルベルト監督にお任せです。」と語っています。

ということで、皆さんも同様と思いますが、私自身、シーズン前からメディアを通してアルベルト監督の語る言葉を注視していました。ここでは、アルベルト監督が何を語ったのかまとめてみました。反町元監督と同様、「右手にロジック、左手にパッション」が似合うアルベルト監督の言葉から、新潟の未来を感じてみましょう。


2.『アルビについて語るときにアルベルト監督の語ること』

①アルベルト監督かく語りき~目指すサッカー~
シーズン開幕前後のインタビュー(※1)ではこのように語っていました。

〇「『ボールを保持する、ボールを大切にするサッカー』をもたらすために、私はここにいると思っている。もちろん対戦相手によってはカウンターアタックを狙うこともあるが、可能であればボールを支配して試合をも支配するという流れを私は求める。うまくいくかはわかりませんが、そこに挑戦したいと考えている。」

〇「いいポジション取りが、いい攻撃、奪われた瞬間の素早い切り替えに直結する。ボールのポゼッションよりも、いいポジションが重要。ポゼッションよりポジション。言葉遊びみたいな感じですがそれが大事です。」

さらに幾何学の補助線的に、玉乃GMの言葉(●)を付け加えると、

●「監督がバルサのダイレクターだったが、バルサ化するのではなく、新潟に合わせたサッカーをしたいと話している。」(※2)

●(アルベルト監督のサッカー観を聞かれて)「やっぱりボールが大好きだということです。まずは保持したい。でも、それだけではない。理想とするサッカーが彼の中であるとは思うんですが、それよりも勝利を大事に考えている。当たり前なんですけどね。勝つためには、試合展開によってはシステムを守備的にしたり、ということも考えています。現実的に。90分間、ボールを支配し続ける、という理想主義者ではないです。」(※3。)

そして是永社長とアルベルト監督の対談(※4)では、

是:チームをどう導くかは、基本的にアルベルト監督にお任せです。ただ事前に一つだけ「新潟のサポーターは、ガンガン走って、激しく戦うようなチームが好きなんですよね。」という話をしました。すると、「マンチェスターシティを見てほしい。最初にグアルディオラが監督になったとき、『フィジカル重視で堅守速攻のプレミアリーグではボールを保持する戦いはできない』と言われたけれど、勝ち始めたら誰も文句を言わなくなったでしょう。勝てばすべてが変わる。」っていうんです(笑)。
ア:私は何か新しいものを持ち込みたいわけではありません。ボールを保持して、全員で攻撃し、全員で守備をする。ただ、これまで以上にボールを持っているときに攻撃を楽しんで、ボールを失ったら素早く奪い返しに行くということをプラスしたいと考えています。

これらの言葉を総合すると、個人的なイメージですが、「最後までひたむきに戦う」「走り負けない」といった新潟のベースは大前提で、そこにアルベルト監督によって質的な向上が施され、速攻も遅攻も何でもござれ、「プレーヤーもサポもワクワクするスペクタクル性、エンタメ性」が加わったサッカーが新潟のサッカースタイルということでしょうかね。「相手がワルツを踊るならワルツを、ジルバを踊るならジルバを」的な…。やっぱり言葉にするのは難しい(苦笑)。宴会時に「ピッチを見てなよ」と言った是永社長の気持ちがわかりました(笑)。ちなみに玉乃GMは就任会見時に目指すサッカーのイメージを「次から次に人がわいて出てくるサッカー」と表現しています(笑)。


②アルベルト監督かく語りき~J2リーグの戦い方~
〇「何度も伝えているように、チームの完成度を高めるには数か月、おそらくリーグ前半戦が終了するくらいまで、時間がかかると思う。完成度は、公式戦で勝負にこだわりつづけることでのみ高められる。」(※1)

〇「大事なのはどのようにゴールにたどり着くかで、どのようにスタートを切るかではない。私が去年、コーチを務めたニューヨーク・シティFCは、開幕から6試合は(5分1敗と)結果が出なかったが、最後はクラブ史上初の優勝ができた。浮き沈みはあると思うが、ジグザクでも右肩上がりに進む。勝負は最後の数か月でつくと考えている。」(※1)

〇マラソンもそうですが、リーグ戦はスタートダッシュだけで優勝できるレースではありません。また、レース序盤でトップに立っていなければ優勝できないというわけではない。今シーズンの特殊なスケジュールだからこそ、できる限り安定した力を発揮して、上位を維持したまま最終局面を迎えたいと思います。特殊なシーズンであるがゆえに、すばらしい内容を見せた試合のあと、とんでもなく酷い試合をしてしまったり、不規則な面も出てくるでしょう。しかしマラソンと同じで、できるだけ良いペースを維持し、最後の10㎞に良いコンディションでたどり着いた走者は、優勝するためにそこからスパートすることができます。その地点にギリギリの状態でたどり着いたら、ラストスパートできず、脱落してしましまいます。そして、一つ一つは小さなものであっても、けがを重ねながらレースを続けていけば、最後に頑張ることができない。わずかなけが、痛みもできる限り防ぎながら、ラスト10㎞を迎えなければならないと考えています。」(※5)

Jユニランナーである筆者にとって、アルベルト監督のマラソン寓話は非常にツボです(笑)。全国のJユニランナー界隈も聞いて納得の「あるある」です。冗談はさておき、第8節を終えて3勝4分1敗で6位の成績は、筆者には上述した監督の言葉通り、想定したロードマップ途上にあると思えます。

監督は、試合後インタビューでは、いまだチームは成長過程であることを再三再四強調し、あわせてもっと伸びることを示唆しています。また変則過密日程を考慮し、新潟サポでさえも予想できないほど、毎試合異なるスタメンと配置で選手のローテーションを実施し、疲労と怪我のリスクを軽減しつつ、実戦で完成度を高めながら勝ち点を稼いでいます。メンバーやシステムが変わっても、全員守備、全員攻撃が徹底され、どこ相手にも遜色ない戦いをするなんて以前の新潟では考えられないことでチーム全体のレベルの向上を実感します。また、ボールを保持して主導権を握る展開を志向しつつも、リーグ再開初戦の甲府戦では前半5バックで相手のサイド攻撃を封じ、直近の東京V戦でもロメロフランクを藤田に徹底マークさせビルドアップを寸断するなど、どの試合でも相手をリスペクトしつつ現実的な戦い方で勝ち点を稼いでいる点も見逃せません。

うーむ、アルベルト監督、すげぇなこりゃ。

第8節終了時点で昇格圏2チームとの差が開いてきてはいますが、幸い直接対決は残されていますし、これからだと思います。唯一の懸念は新型ウィルス感染再拡大でリーグ戦が打ち切りになる可能性があること。フルマラソンのはずがレギュレーション変更により30kやハーフマラソンでレース終了のシナリオ。こればかりはアルベルト監督がコントロールできるものではないのでサポとしては神頼みしかありませんね…。


3.シン・アルビの最終形態ははたして…。


サカマガ元編集長の平澤さんは甲府戦後のサカマガWEB記事で、見違えるような戦いぶりを示した新潟を「シン・アルビ」と評しました。映画「シン・ゴジラ」にかけた言い得て妙の表現です。映画の中でゴジラは、魚類から両生類、最終的にはモンスターにどんどん形態変化して手がつけられなくなっていきます。現在のアルビの形態はどのへんでしょうか。個人的見解ですが、第2形態「蒲田くん」から第3形態「品川くん」の途中で、まだモンスターになり切れず、かわいさを残している段階かな(笑)。

まだまだアルビは形態変化を遂げ、アルベルト監督の言う残り10㎞地点で「シン・アルビ」最終形態で「手がつけられない新潟」になったときこそ、「J1昇格」、「新潟のクラブフィロソフィーの確立」、そして「新潟のおとぎ話の第2章」が見えてきそうで、楽しみとワクワクしかありません♪

さて、明日8/2はアウェイ栃木戦。5戦負けなしをポジティブなものにするには今節は絶対勝たなければいけない試合です。ただし、正直、過去2年のアゥエイ栃木戦には良い思い出はありません(苦笑)。戦術家の田坂監督率いる栃木。2019アウェイ、ボール奪取に優れた中盤のヘニキを前線に配置する田坂采配で新潟のビルドアップを寸断、攻守のハードワークで栃木ペースに持ち込まれ敗戦を喫し、数字上もJ1昇格の可能性が潰えた苦い記憶が蘇ります。そして今季の栃木には、新潟サポならそのモンスターぶり、怖さを知る矢野貴章がいますよね(苦笑)

この難敵相手にどのようなサッカーで臨み勝利を掴み取り、「シン・アルビ」への進化の兆しを魅せてくれるのか。令和の「右手にロジック、左手にパッション」のアルベルト監督の手腕に期待♪さぁ、栃木戦、勝ちましょう!!

(文責:さとやす)


【参考資料】
※1:ラランジャ・アズールvol.41
※2:モバアルZ 2019/12/18配信「玉乃GM就任報道対応」
※3:ニイガタ・フットボール・プレス 2020/01/14配信記事
※4:「つぶやかずにはいられない」(アルビレックス新潟社長戦記 是永大輔)
※5:ニイガタ・フットボール・プレス 2020/7/28配信記事

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