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90年代のスーパー戦隊シリーズ

スーパー戦隊シリーズは、現在にまで46年にわたって放映されている特撮の長寿シリーズである。しかし、90年代はスーパー戦隊シリーズの停滞期でした。

当時は、ポケットモンスターやエヴァンゲリオンといった作品がヒットした時代だったので、子供人気はそっちに流れてしまったのです。さらにこの頃は、仮面ライダーシリーズとウルトラマンシリーズは休止期間中で、放送中だったメタルヒーローシリーズや不思議コメディシリーズも終了するなど全体的に特撮人気が下降しており、存続危機とも言われる時期であった。
唯一、人気を得ていたのが90年代後半から復活した平成ウルトラ三部作くらいでしたね。

この状況の中で戦隊シリーズは視聴者を子供から大人(またはオタク層)をターゲットにするようになり、路線変更や海外進出(パワーレンジャー)を試み試行錯誤しながらシリーズを継続させていました。

◎90年代(1990年~1999年)の戦隊作品

 ★地球戦隊ファイブマン

1990年3月2日から1991年2月8日まで放送

平均視聴率:6.5%
シリーズ初のメンバー全員が兄弟・教師という設定が特徴である。アニメ「らんま1/2」や「勇者エクスカイザー」、メタルヒーローシリーズの「特警ウィンスペクター」といった作品が同時期に放送されていた影響もあり、様々な新機軸が導入された作品であったが、視聴率や玩具売り上げは低く全体的にあまり良い成果は残せなかった。特に「特警ウィンスペクター」は、エクスカイザーとファイブマンを圧倒する視聴率を記録し、らんま1/2にも勝った程だった。クリスマス年末玩具販売量でもウィンスペクターはスーパーファミコンを抜いて1位を占めたほどで、これは地球戦隊ファイブマンの売上にも大きな影響を与えた。

★鳥人戦隊ジェットマン

1991年2月15日から1992年2月14日まで放送

平均視聴率:7.1%  
鳥がモチーフとなっており、タツノコプロの「科学忍者隊ガッチャマン」を参考にした作品である。

1980年代後半から東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件などの影響により、特撮作品やアニメの暴力性に対する指摘が厳しくなり、「高速戦隊ターボレンジャー」や前作「地球戦隊ファイブマン」の人気が期待に大きく及ばなかったため、戦隊シリーズは中断危機を迎えた。そこで制作陣は当時のトレンディドラマ人気を参考にして、これまでのスーパー戦隊シリーズではタブーとされていた恋愛という要素を重点的に掘り下げた。また、喫煙・飲酒・ギャンブルなどの描写や残酷なシーンも出てくるなど全体的に大人向けの作品と言われることも多く、実際に子供よりも年齢層の高い視聴者から人気を集めた。

(左)織田裕二 - 若松俊秀(右)

ブラックコンドルこと結城 凱は当時、多くのトレンディドラマに出演していた織田裕二に似ている。この作品は新しいことを見せようと児童層は考慮しなかったが、子どもでも楽しく見られるよう工夫していたという。子供だけでなく大人にも大きな人気を集め、特に女性視聴者たちから圧倒的な支持を得て「戦うトレンディドラマ」と呼ばれた。

★恐竜戦隊ジュウレンジャー

1992年2月21日から1993年2月12日まで放送

平均視聴率:7.1%
マイケル・クライトンの小説「ジュラシック・パーク」が1993年に映画化されることが発表されたことがきっかけで恐竜がモチーフとなった。前作とは対照的に大人向けではなく子供向けに制作された。本格的なファンタジー世界の構築、6人目の戦士のレギュラー化、海外版の制作開始など、本作品はさまざまな面でシリーズのエポックとなった重要な作品である。当時人気だったRPGゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズの影響も受けており、ファンタジー性やRPGテイストが強く意識されている。

★五星戦隊ダイレンジャー

1993年2月19日から1994年2月11日まで放送

平均視聴率:7.0%
「ストリートファイター」や「バーチャーファイター」といった当時の格闘ゲームの人気を受けて制作された。また「幽幻道士」や「プロジェクトA」などに代表される台湾映画の人気と1993年頃に¨烏龍茶¨が普及するなど、中国文化が日本に浸透してきたことが影響している。自転車に乗って戦うシーンなどは完全にジャッキー・チェンの映画を参考にしていると思われる。恐竜戦隊ジュウレンジャーのコンセプトをそのまま受け継いでいるものの、今作は東洋的なファンタジーを追求した。スーツデザインも中国風で各メンバーたちが拳法の達人と設定された。また放送当時は秘密戦隊ゴレンジャーとジャッカー電撃隊の2作はスーパー戦隊シリーズに含まれておらず、バトルフィーバーJが第1作目の扱いだったため、この作品はバトルフィーバーJから数えて15作品目ということでスーパー戦隊15周年記念作として企画された。その影響もあって本編にもバトルフィーバーJのオマージュが隠れている。
電光剣と大王剣、必殺技を決めるときに鞘から剣を取り出す演出と大連王の全体的なシルエット(デザインが似ている)はバトルフィーバーロボのオマージュである。天幻星・大五が動物好きなのはバトルケニア、天時星・知が美容師の設定なのはバトルフランスと同じで、ダイレンジャーはメンバー1人1人の個性を効果的に描写するために各メンバーの私生活が描かれているが、これもバトルフィーバーJと同様である。

★忍者戦隊カクレンジャー 

1994年2月18日から1995年2月24日まで放送

平均視聴率:5.7%
「忍者」をモチーフとした作品であるが「西遊記」の影響も受けている。主人公たちも西遊記の人物と同様の性向に照らされており、悪の組織も各地に散らばっている妖怪たちであり、後半に入って悪の組織が現れるという珍しい構成をとっている。日本古来の妖怪たちをモデルとした敵怪人など、シリーズとしては初めて本格的な和テイストが取り入れられた。

★超力戦隊オーレンジャー

1995年3月3日から1996年2月23日まで放送

平均視聴率:4.5%
「古代文明」をモチーフとしており、児童層よりも大人向け作品として放送された。秘密戦隊ゴレンジャーから始まったスーパー戦隊シリーズの20周年作品だったため、原点回帰の試みがあった。アオレンジャーや「ジャッカー電撃隊」のビッグワンを演じた宮内 洋を司令官として起用し、脚本を担当した上原正三高久進、監督に東條昭平など初期戦隊シリーズで高評価を受けた俳優とスタッフたちが再び集まっている、また女性戦士のサービスシーンなどもあったため、高年齢層たちから支持を得た。

またメンバーを職業軍人と設定し、メンバーがレッドを「隊長」と呼んだり、追い詰められた世界の状況など、ハードなテイストの作風が指向された。放送開始前後に発生した阪神・淡路大震災地下鉄サリン事件などの社会情勢に影響される形で、当初のシリアスな路線を途中で断念し、中盤からは次作のカーレンジャーのようにコミカル要素の導入を余儀なくされることとなった。当時は既にビデオデッキが普及しており、夕方に子供を塾通いさせる家庭もあり、VHSに録画して視聴する視聴者も多かった。そのためか視聴率は低かったが、ヒーローのデザインが〇、△、▢といった記号で児童層に分かりやすかったことから玩具売り上げは歴代の作品では良い成績を残している。

★激走戦隊カーレンジャー

1996年3月1日から1997年2月7日まで放送

平均視聴率:4.8%
「車」をモチーフにした作品で当時、人気だったレクリエーショナル・ビークル(RV)や第二次ブームの最中であったミニ四駆などの要素が多く取り入れられている。また「おぼっちゃまくん」・「クレヨンしんちゃん」のようなコメディ要素のアニメやSMAPがバラエティ番組などで活躍し、コントなどしていた影響も受けている。司令官(ダップ)が「スター・ウォーズ」に登場するヨーダ、シグナルマンの妻・シグエさんが「サザエさん」のパロディだったり、敵である宇宙暴走族ボーゾックは、実際は悪者ではなくただの暴走族だっただけで最終的に更生して小学校からやり直すとか、芋羊羹で巨大化するとか、かなり滅茶苦茶な設定も多いため、ギャグ戦隊と呼ばれることもある。

それまでは真面目に戦うことがカッコイイというヒーロー像があったが、この作品はそれまでの設定を全部崩した。真面目に戦わない・やる気のないヒーロー、セクシーな悪の女性幹部の登場、コミカル路線、不条理なギャグの連発など表面的には子供向け番組とされているが、実は大人向け・オタク向けの作品である。さらに当時は子供(小学生~中学生)の塾通いが当たり前になった時代であり、戦隊シリーズは平日の夕方に放送していたため番組を見ない児童層も増えたのである。また同時期にはポケットモンスターのゲームがヒットしたため、子供人気はそちらに流れてしまった影響もあり視聴率は伸び悩んだが、子供にもわかりやすい車+ロボットのおもちゃが発売されていたので玩具売り上げはそこそこよかったとされている。 この作品を境に戦隊シリーズは徐々に視聴者のターゲットや作品内容が変化していく。 

★電磁戦隊メガレンジャー

1997年2月14日から1998年2月15日まで

平均視聴率:6.5%
1995年ごろから一般的に急速に普及が進んだインターネットや携帯電話、パソコン、衛星放送など「デジタル」な要素を取り入れた作品である。また{主人公が高校生}、{ビークラッシャー四鎧将}・{暴走戦隊ゾクレンジャー}と{邪電戦隊ネジレンジャー}、{宇宙生物ビーガー}と{コムタン}、{カーレンジャー音頭(第23話)}と{Bomb Dancing メガレンジャー(第21話~30話のED)}など前年に放送された「激走戦隊カーレンジャー」と「ビーファイターカブト」を引き継いでいる点も見られる。
当初はギガバイトレンジャー=ギガレンジャーという名前で企画されたが、当時はメガバイト(MB)が主流だったため、メガバイトレンジャー→メガレンジャーと名付けられた。1MB=1024KB=約100万バイトなので主題歌の歌詞にも「100万倍の好奇心」という部分がありますね。本作の第8話より、放送時間が毎週日曜日 朝7時30分に変更された。これは17時台からの2時間枠に拡大した「スーパーJチャンネル」の新設や視聴者の主でである児童層が平日だと塾通いが多く番組が見られないこと、夕方の時間帯より大人も子供も休日である日曜日に放送することで視聴率向上を狙ったものである。メガレッドこと伊達健太は、韓国料理が好きなキャラクターとして有名である。焼肉が好きでメガレンジャーに入る条件として、特上カルビをおごってもらうよう要求したり、夏休みには焼肉店でバイトしたり、アンコウネジレの弟に¨コムタン¨という名前まで付けて面倒を見るなどかなりマニアだ。作品全体としては前作より視聴率は良かったものの、玩具売り上げは下回った。

★星獣戦隊ギンガマン

1998年2月22日から1999年2月14日まで放送

平均視聴率:7.9% 
「動物」をモチーフとした作品であり、王道路線となっている。恐竜戦隊ジュウレンジャーのコンセプトを受け継いだファンタジー戦隊。当初は各メンバーの乗り物がバイクや自動車ではなく「馬」であったが、馬を指示したり、移動させたりするなど撮影が困難であり、遅れることもあったため、やむを得ず中盤からはオートバイを再利用した。

ヒーロー側だけでなく、悪役であるゼイハブ船長・破王バットバス・銃頭サンバッシュなど宇宙海賊バルバンの出来も非常に良いことで有名。特に女幹部シェリンダはとにかく露出度がかなり高いコスチュームだったことで高年齢層の目を楽しませたが子供たちが見るには不適切だと判断され、この作品以降はシェリンダを凌駕する露出服を着た女幹部は登場しなかった。1997年12月に発生したポケモンショックの影響により、本作品から始めてテレビを見る時は部屋を明るくして離れて見て下さいというテロップが入るようになった。

★救急戦隊ゴーゴーファイブ

1999年2月21日から2000年2月6日まで放送

平均視聴率:6.6%
大戦隊ゴーグルファイブの企画段階で没になった名前が再利用されており、「人命構造・消防士」がモチーフとなっている。メンバー全員が5人兄妹として設定されているが、これは「ひとつ屋根の下」や「有言実行三姉妹シュシュトリアン」を意識したという。また、主人公側のみならず敵側の幹部も4人兄妹として設定され、「主人公側の兄妹」対「悪役側の兄妹」という図式を打ち出している。

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