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002 東大へ!

今回の文は、音楽を聴きながら読みましょう!大好きな中国古典風の歌です。


 朝目覚めたら、日本にいる実感がやっと湧いてきた。うわわ!私、本当に日本へ留学に来た!夢の町、未知との出会い、大興奮!元気一杯の一日が始まるぞ!

 朝食の後、ホテルから出発した。今日やるべきことは区役所で手続きを行ってから、入国管理局へ行って名前を漢字併記にしてもらい、最後は大学寮に入居すること。私は運よく、大学付近の追分寮の抽選に当たっていた。以前ネットで寮の写真を見た時、一人部屋で、新築マンションっぽい感じがした。中国の大学は全寮制で、ほとんどが数人で部屋をシェアする形で、居心地はあまりよくなかった。今回やっと一人で住めるし、実家からも独立できる。ワクワク!イェ〜!

 まずは荷物を上野駅のロッカーに預けた。昨日は調べたところによると、上野駅には結構大きいなロッカーがあるらしい。私の大きな荷物が入れられる。私の荷物にはぬいぐるみの熊ちゃんがある。これはお母さんからのプレゼント。前に一時期落ち込んでいた時、気持ちが晴れず笑うことすらできなくなっていた。デパートへ行った時、この熊ちゃんを見て、不意に笑った。中身は白熊で、虎の着ぐるみを着ている。虎のふりをしているらしい。それを見たお母さんがその場で買ってくれた。「猫ちゃんが久しぶりに笑ったよ。この子のおかげで。」お母さんの話に感動して、それ以来この熊ちゃんは私にとって特別な存在となった。留学に出発する前、私は熊ちゃんをお母さんに預けるつもりだった。「私の代わりにお母さんのそばにいるよ」と言ったけど、お母さんは「私はお父さんがいるから寂しくない。猫ちゃんは独り日本にいて、知ってる人もいないから、この子を持って行ってね」と言った。そういうわけで、私は熊ちゃんも日本へ持ってきた。熊ちゃんは少し大きいから、箱の上に置いて持ってきた。ロッカー、ロッカーはどこ?辺りを見回していたら、後ろから女の子の声が聞こえた。「これ、落ちました。」振り返ると、約7、8歳の女の子が私の熊ちゃんを抱いてる。可愛いシーンだった。このシーンに私は心を何となく動かされた。「ありがとうございます。」心からその可愛さに感謝する言葉を言った。

 今は日本で使える携帯がないけれど、路線図は前日にネットで調べてある。北京でも地下鉄に乗り慣れていたから、電車にのるのは楽だった。東京の地下鉄は複雑と言われし、確かに出口も多い。ちょっと古くて設備が全線完備されていない。役所と入国管理局の手続きは順調だった。もちろん全部英語で行った。私にとっては英語の方が楽。役所の方はとても親切で、私が日本語わからないと判明したら、英語で私を幾つかの部門に案内した。やっぱり日本はいい国だね。ここに来てよかった。

 今日最後の目的地は東大。東大へ留学するために日本にきた。いよいよ会えるね。本郷三丁目駅から出たら、道に迷った。東大はどこかな、聞かないと。ちょっと躊躇して、勇気を出して通りすがりの女性に聞いた。その女性見た目は30代、自転車を停めたばかりだった。

「すみませんが、東京大学はどこですか。」

「東京大学はとても広いところです。どこに行きたいですか?」

 彼女の答えはその時の私にとって難しすぎで、何を答えるべきかわからなかった。東大の赤門は有名だよね。じゃ赤門と答えよう。「赤門。」と私は答えた。「赤門はあちらです。」彼女は指差した。お礼をした後、私は早速歩いていった。彼女の答えと表情は、私を少し不快にさせた。その時は道が分からなかったが、後になってみると、私が東大のどこへ行くにしても本郷三丁目からの出発方向は同じとわかった。

 案内状によれば、私は先に文学部の教務へ行ってから、奨学厚生課へ行くべきだ。教務は法文2号館にあるが、法文1号館と2号館はあまりにも似ているし、案内状の地図もひどくわかりにくくて、私はまたしても迷ってしまった。また道を聞かないと。もう日本語でうまく説明できない状態だったので、英語で通りすがり男に聞いた。男は私の英語がわからなかった。ギクシャクしながら、仕方がなく、案内状を彼に見せた。彼は私を法文2号館前まで案内してくれた。その時は日本で道を聞いたら、親切な態度で対応して案内してくれる人が多いとわかったが、私の英語がわからないのは英語ができないからではなく、日中両国の英語の発音がかなり異なっているからだとは、まだわからなかった。

 教務でどうやって手続きを行ったのかはもう思い出せない。スムーズだったことは確かだ。後に、奨学厚生課の係員に寮の位置を確認して、ここから10分ほど歩いた距離にあると教えてくれた。建物から出ると、もう夕方になっていた。これが東大かぁ〜。人生で初めて東大のキャンパスに入った。周りの古い建築も私にとっては新鮮だった。私が22年間生きた場所とは違いすぎて、まるで夢みたい。カバンからipod classic(今はもう生産停止)を取り出して、イヤフォンをつけた。10月はもう秋だよね。この景色に応じて「暁秋月明」という曲を選んだ(今回のバックグランド曲)。馴染みの曲のメロディが耳に流れてきて、なんとなく安堵した。私は本当に東大に入ったんだ!と噛み締めた。

 嬉しい気持ちに浸りながら、寮の方へ向かった。10分で着くはずよね。でも、私のスピードが遅いからかもしれない、15分歩いても着かなかった。うーん、また…聞かなければ…ならないね…今日一日で、これまででかいた恥の記録を軽く更新したと思う。今回は看護師みたいな女性。「この前にある信号を2つ渡って、すぐですよ」と言われて、「信号は何ですか」と思わずに口から出た。向こうの女性は呆れた。中国語できる方はきっと分かるが、中国語の信号は日本語の電波と同じ意味。私は彼女の答えを「電波を渡って」と理解してしまった。後でできた同じ中国人留学生の友人も、電話に出た時、日本人に「ごめん、電波が悪い」と言うつもりだったが、思わず「信号が悪い」を言ってしまったという話があった。閑話休題、女性は2、3秒止まって、「一緒に行きましょう」と言った。本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。その女性のおかげて、寮に辿り着いた。学校から20分もかかってしまった。

 寮に入ってから、管理員さんに英語で案内してもらって、鍵を受け取ってから、ガスを契約してもらった。契約電話は管理員がかけた。私は電話を聴きながら、心の中では私じゃあ絶対無理と叫んでいた。管理員さんへの感謝の気持ちが止まらない。最後は、上野駅に戻って、荷物と熊ちゃんを取ってきた。もう腕が折れそう。

 今日やるべきことを全部終わらせて、寮に帰った時、もう夜になっていた。寮は10数平米で、机とベッド、本棚がついてる、バスルームとIHヒーターも完備。ちょっと狭いけれど、こんな立派な寮だとは思わなかった。これから一年間、ここが私の家だね。熊ちゃんをベッドに座らせて、手を握った。「熊ちゃん、これから一緒にここで暮らすね。よろしく!」と挨拶して、私の留学生活は、いよいよ本格的に始まった。

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