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ボビー吉野×ARATA「令和の少年隊ダンス論」トークイベント全起こし⑤「FUNKY FLUSHIN'」編

④の続きです

ボビーさんとARATAさんが1曲ずつ挙げながら少年隊のダンスを深堀りしていくコーナー、ついにラストは山下達郎ソングのカバーである「FUNKY FLUSHIN'」、1990年七夕発売のシングルです。当時メンバーは24~25歳、すでに円熟した凄みと余裕を感じさせるパフォーマンスはあらためて必見! 黒ベストver.です。レッツメイカファンキナイッ♬

Text by 高岡洋詞
Photograph by 宮田浩史

余裕の楽しさ「FUNKY FLUSHIN'」

高岡 はい、次いきましょう。最後はARATAさんが度肝を抜かれた3曲のラストです。

ARATA ラストは「FUNKY FLUSHIN'」。こちらです。僕がこれがいいなと思うのは、流れ。振りの流れがすごく気持ちいいんですよね。みなさんの余裕な雰囲気と個性をめちゃめちゃ感じられる。(再生)すごく生き生きと楽しそうにやってらっしゃるところで。

ボビー 基本的にディスコじゃないけど、ノリはそういう感じですね。

ARATA そこにジャズの要素が入ってくるんですけど、イントロの「タッタッタッタッタン!」(3連のキメ)で「もう、これは楽しんでいいんだ」って思えるというか。(停止)イントロの最後にみなさんが回るときに両足をダダダッと踏みながらジャンプするんですけど、よほどテンションが高くないとやらないんですよ、これって。だからたぶん本当にうれしくて作ってらっしゃったんだろうなって思って(笑)。これをボビーさんがひとりでやってらしたのを想像すると、かわいいというか。どんな気持ちで作られていたのか、お聞きしたかったんですよね。

ボビー (笑)単純に音ですね。もちろん楽しいっていうか、盛り上がって自然に出てきました。

ARATA ここで単純につかまれた人なんで、僕は。「いいのがこれからくるんだろうな」っていう、予告編みたいな感じがあります。(再生)すばらしい。いやー、いいですね。(停止)Aメロを歌っているときにこれ(上半身を揺らしながらシンプルなステップ)だけっていうところがまた好きだったりします。

ボビー 全体的にちょっと大きめに動いていますね。青山劇場のステージ用っていうのをすごく意識して作ったから、動きがわりと大きいんですよ。

ARATA あー。わかりやすく、見やすく。

ボビー 遠くの人も見えるように。その曲をシングルで出したんで.動き的にはそういった感じです。

ARATA そこが(自分に)刺さっているのかもしれないです。(再生)おーっ。《Rhythmに乗って》。そうか、ライブでステージを見ていると思うとまた変わりますね。(停止)ここですね。《Let's play》のサビのところで、一発めで踊り出さない、動き出すところがまたちょっといいなっていうか。

ボビー お客さんを少し煽る感じのイメージですよね。

ARATA っていう構成で作られてるんですね。「ここは煽って」と。まんまと煽られているわけですね、もう(笑)。(再生)ここにもロックが。

ボビー そうですね。

少年隊の夏恒例のミュージカル『PLAYZONE(プレゾン)』の舞台である青山劇場のステージを意識して“大きめに”作られた振付。今回もボビーさんの名言がポンポンと飛び出ます

相反するジャンルを融合させる

ARATA (停止)もうみなさんロックは覚えましたね。ポップも覚えましたね。キングタットも覚えましたね。ここ(ロックの腕の動き)の部分に脚がきれいに入るのが、ロックジャズっていう言い方はちょっとあれかもしれないですけど……。

ボビー そうですね、融合というか。脚の入れ方と手のロックの使い方を混ぜています。

ARATA 普通にサラッとおっしゃっていますけど、超難しいことをしているんですよ。

ボビー やりにくいですね。すごくやりにくい。

ARATA やりにくいですよね。相反するジャンルじゃないですか。だからすごいんですよ、本当に。

ボビー レッスンのときは、本人たちはおそらく難しいとか何もわからないでやっていると思いますよ。「これはこういうもの」って。違和感を抱くのは僕です。すごい違和感。

ARATA あー、もともとどっちも知っているからこそ。

ボビー そこの混ぜ具合がすごく、自分なりには難しいんですよ。でもそれを練習でやると素直に覚えていくので、意外とすっとやっていますよね。

ARATA なるほどー。じゃあ、なんだかんだボビーさんよりも体感でいうとすごく気持ちよく踊れている。

ボビー そうですね。

ARATA そこはでも不思議ですね。あえて自分で苦しいほうを選択するっていう。

ボビー 僕は現役をめっちゃ早くやめているんですよ。24歳で。そこからは振付師のみで、表にはもう一切出ていない。なので、自分で踊りやすいほうに、っていうのをあまり持っていかないんですよ。もう完全に俯瞰で見て、「これはどういう見え方をするか」とか、そういう感じでやっているんで。

ARATA なるほどそうか。あー。プレイヤー視点じゃないっていう。

ボビー そうですね。もちろんそれまでの経験があるから、そういうところも入らないとは言えないんですけども、なるべくそれを避けて、っていう感じで。

ARATA あくまでも客観的に、何がいいのか、どうしたらかっこよくなるのかっていうところを突き詰めると。突き詰めた結果、ジャズとロックを融合するっていうところに行き着いたわけですね(笑)。

ボビー はい。

ARATA これはすごいですね。ちょっと発明みたいな、ダンスにおけるけっこうな発見だと思いますね。僕はその発想出てこないです、絶対に。混ぜちゃいけないものを混ぜている感じが。

ボビー まぁ、そうですね。でもそういうふうにやることによってかっこよく見えるんです。

ARATA それをかっこよくしている人たちっていうことですね。(再生)ここらへんがすごく好きです。ステップの中にもジャズが入っていますよね。

ボビー 入れていますね。ニュージャックスウィングにジャズを混ぜて。

ARATA (停止)ニュージャックスウィングっていうダンスがあるんですよ。いわゆるヒップホップのジャンルに属するんですけど。だから本当に、いろいろなダンスのジャンルを全部合わせているっていうミラクルがあって。「合わせる」こと自体は簡単なんですよ。「ものにする」っていうところが一番難しいんですけど、(少年隊は)ものにできてしまう方たちであって、その元を(ボビーさんが)築いてこられたっていうことですよね。

ボビー いえいえ(笑)。

ARATA こんなにジャンル幅広く踊れる人たちいないですよね。どうしても偏っちゃいますもん。

ボビー そこはジャニーズの中でやっているからでしょうね。いわゆるジャニーズスタイルじゃないけど、基本的に清潔感がある感じはすごく意識していて。どっちかというとヒップホップ系はもう少し崩したかっこよさじゃないですか。

ARATA 泥くささというか。ストリート、地べたですもんね、もともと。

ボビー それとしっかりスーツを着て品のある感じという相反するもの同士を、いかにいい感じに混ぜて成り立たせるかっていう。

ARATA 化学ですね、もう。調合ですよ。どれぐらいヒップホップを、どれぐらいロックをみたいな、フラスコに入れて。

ボビー 実際に彼らがやってみて、そこでいい混ざり具合をしたら「これはOKか」とか「これはちょっと違うな」とか、そういう感じですね。

ARATA たぶんみなさんが思い描いているヒップホップって、ダボッとした格好で帽子を斜めにかぶって、ネックレス着けて「Yo!」みたいな感じだと思うんですけど、そのかっこいいところを知っているからこそ、取り入れようっていう方向になるっていうことですよね。そこにブロードウェイ的なフィーリングを混ぜ合わせるっていう。

ボビー そうですね。

玄人がハッとする植草克秀のダンス

ARATA そうかぁ……。(再生)ちなみに僕、《Rhythmに》の植草さんの首の動きが好きです。ここのノリが渋いですよね、めちゃくちゃ。脚を上げる高さとかじゃなくて。

ボビー 体の中のノリがね。

ARATA (停止)実は何周か回って「めっちゃうまいな」って思うのは植草さんなんですよ。パッと見たときには気づかれないけど、ダンスをずっとやっている玄人が見たときに「えっ」てなる、「ちょっと来て。そのダンス何?」みたいに(笑)、呼び出されそうなダンスをしているかなって。植草さんからはそういう動きが一瞬出るので、ぜひ見逃さないようにしていただきたいですね。ファンの方はもちろん知っていると思うんですけど。(再生)歌っているみなさんの表情が、素の感じがして僕はすごく好きですね。「タンタンタンタンタン」の植草さんも、(停止)これですね。誰よりも上を向いていて、絶対楽しんでいるじゃん、っていうのが伝わってきて。(再生)きました、ここ!

ボビー 間奏部分ですね。

ARATA めちゃくちゃロックがやっぱ入る。これですね。(停止)これ手を開いているんですよね?

ボビー 開いていますね。

ARATA 間奏のダンスブレイクの部分で、(《Let's》のウィスパーのところ)両腕をクロスさせて右手を開くっていうモーションがあるんですけど、これが僕の中では(指を鳴らして)「いただきました!」みたいな。

ボビー (笑)

右手を開くダンス。『令和の少年隊論』のインタビューでもびっくりしたのですが、「え、そこ!?」と普通は見過ごしてしまう細かいしぐさに着目するARATAさんのおかげで新発見がたくさんありました

ARATA 空間を広く使った大きな動きをするなかで、一回ここ(顔を中心とした数十センチ四方)の内側にとどめて、てのひらだけ開くっていう、大きいところから小さいところへ、マックスからミニマムへ、緩急を楽しんでいただきたいなと思っています。はい。

ボビー フフフフ。

ARATA (再生)決め技ですね。(停止)ここ(《すてきなMusic》のところ)の……。

ボビー うなずきですね。

ARATA ファンキーですよね、本当に。

ボビー はい。

ARATA (再生)ここ、かっこいいですよね。うおー。(停止)錦織さんがカメラに近づいていって……。

ボビー 煽りですね。

ARATA 煽りますよね。これ本当にかっこいいですよね。左目がちょっとこうなる(左右の眉高をダンチにして目をしかめる)感じ。(再生)こういうのを見れたんだ、オンタイムで。

ボビー ニシキはロックダンスのlockじゃないロックンロールのrockが好きなので、煽ったりするのはすごく好きなんですよね。

ARATA (停止)今のK-POPのアーティストの人たちはそれこそカメラの前で独自のアドリブで「ヤッ!」っていうのをやって「キャーッ!」ってなるわけじゃないですか。それがかっこよくなるかどうかって、その前のパフォーマンスやそれまで築いてきたものがあるかどうかだと思うので、そこがものになるっていうのはすごい実力がある証拠だなと思って、これはすごいですね。(再生)すばらしいっすね。……いやもうすごい。この最後のサビのダンス、右向いて、左向いての動きですけど、「もうやっちゃえ!」感すごくないですか。

ボビー そうですね。

ARATA 揃えるとかじゃないというか。

ボビー 最後のエネルギーの放出ですね。

ARATA これもやっぱり望んでいた形というか。

ボビー そうですね。最後に出しきって。

ARATA 三者三様の向きで。僕、こういうのが好きなんですよね。僕もけっこう音楽のロックが好きなので。

ボビー ここでランニングマン。

ARATA だからすごく見ててはまりますね。エンディングの《Dance all night》のみなさんの表情ですよね。ラストのニシキさんのポーズ、もうクイーン(フレディ・マーキュリー)みたいになっています。

フレディ・マーキュリーになっているニッキになる(笑)ARATAさん

ボビー 自分でやっている。

ARATA 今の「自分でやっている」っていう言い方。「やっちゃったんですよ」みたいな(笑)。「これをしろとは言っていないがしかし」ですね。

ボビー まぁ、かっこいいからね。

ARATA なるほどなるほど。こういう方なんですね。ありがとうございます。というところで、たいへん長くなりましたけども、6曲走りきったということでございます(拍手)。すみません、時間がちょっとあれなんですけども(笑)。

≫≫≫⑥に続きます
次回はボビーさんが語る「3人伝説」!!!

サインをしているところを見られるのが苦手と話していたARATAさん。ボビーさんとの貴重なダブルサイン本をゲットできた方、どうぞ大切にしてください☺

【編集部メモ】Travis Japanが新振付で踊った「FUNKY FLUSHIN'」。ボビーさんは川島如恵留さん、宮近海斗さんに注目していると『令和の少年隊論』のなかで話していました。

★増刷記念!第2弾トークイベント開催★

2022/3/26(土)20:00-22:00 @ 本屋B&B
鎌田俊哉×スージー鈴木×矢野利裕
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