肩の痛みに悩むあなたへ
パソコンやスマートフォンを使うのが当たり前になった現代。肩の痛みで悩む人はどんどん増えています。
まず覚えておいて頂きたいこと、それは、「肩が痛い=肩コリではない」ということです。何気なく自覚している肩の痛みの背景に実は病気が隠れているということもあるんです。
今回は、「気をつけて欲しい肩の痛み」についてお話した後、「ただの肩コリである場合に行う対処法」についてお話します。
1, 気をつけて欲しい肩の痛み
恐らくほとんどの方が、肩の痛み=肩コリと認識していると思います。しかし、その肩コリと思い込んだ痛みが実は病気のサインだった、ということはよく経験されます。勿論ほとんどの肩の痛みは肩コリなんですが、危ないサインを知っていることは予防のためにとっても大切です。今回の記事で、「怖い肩の痛み」を覚えて頂けたら幸いです。
大切なポイントは大きく3つです。
a)左右両方の痛みか、片側だけの痛みか
b)他の症状(指先や前腕の痺れや胸の痛み)とリンクしているか
c)突然始まった痛みか、気づいたら痛いな〜という痛みか
あなたはどうでしょうか?結論から言うと、危険なのは、
a')左右片側だけの肩の痛み
b')痺れや胸痛とリンクする肩の痛み
c')突然始まった肩の痛み
です。順に見ていきましょう。
a')左右片側だけの痛み
・右側だけの痛み:胆石症や胆嚢炎の可能性
・左側だけの痛み:心臓の疾患(狭心症など)の可能性
片方だけの肩が時々痛むという場合、内臓の病気が原因で起こる放散痛である可能性が考えられます。特に気をつけて欲しいのは虚血性心疾患(心臓を栄養する血管が動脈硬化で細くなったり、攣縮したりして血流が悪くなり、胸の痛みや左肩の痛みが生じる)というもの。運動後などに左肩が痛むという方は狭心症の可能性があるので、一度病院で検査をオススメします。高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病が危険因子となるため、これらをすでに指摘されていると言う方は特に注意頂けたら幸いです。
b')痺れや胸痛とリンクする肩の痛み
・痺れとリンクする痛み:胸郭出口症候群、頸椎症など
・胸痛とリンクする痛み:狭心症など
他の症状を伴う肩の痛みは、何らかの病気が隠れている可能性を考え検査を推奨します。特に指先や腕の痺れを伴う肩コリや、手を上にあげたときに増悪する肩コリでは、胸郭出口症候群や頸椎症といった解剖学的な異常(構造的に神経や血管が圧迫された状態)を考えます。思い当たる方は一度整形外科に相談してみましょう。
そしてここでもやはり注意して欲しいのは、胸痛とリンクした(左肩の)痛みです。運動後に症状が出て、少し休んでいるとよくなると言う場合は、狭心症の可能性が考えられます。心筋梗塞(心臓を栄養する血管の一部が完全に機能しなくなり、心筋細胞が死んでしまう)になる前に、循環器内科を受診することをオススメします。
c')突然始まった痛み
・動脈解離など重大疾患の可能性
肩コリは一般的に「僧帽筋(肩を中心に存在する筋肉)の張り感や痛み」ですが、首の後ろの痛みまで含めて肩コリと認識する方が多いです。過去に外来で、『突然肩コリがひどくなって・・・』と訪れた30代後半の男性が、だんだん首の後ろの痛みが強くなるとのことでCTを撮ったところ、椎骨動脈解離(脳にいく後方の血管が避けてしまう病気)だったということがありました。
勿論突然の痛みといっても、腱板断裂や石灰沈着性腱板炎(名前は勿論覚える必要ありません!)といった整形外科的疾患やただの酷い肩コリの可能性もあるのですが、だんだん痛くなったり、しびれやめまい・ふらつきといった症状が同時に現れるようであれば一刻も早く病院に行くことをオススメします。
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さて、ここまで怖い話をしてきましたが、これらの病気がなさそうであれば、ほとんどの人は通常の肩コリ(同じ姿勢を持続したり運動不足だったりが原因でなる肩の筋肉の痛み)であると考えます。
続いて、普通の肩コリだった場合にできる対処法をまとめていきます。
2, ただの肩コリである場合に行う対処法
肩コリは様々な生活の原因で起こるため、まずはその原因を取り除いてあげることが最大の治療になります。
・座っている時の姿勢に気をつける(首を反る形にしない)
・適度な運動を心がける(運動不足は肩コリの大きな原因)
・肩を温める(血行をよくして筋肉を和らげる)
・肩を適度にほぐす(肩甲骨を回す運動など)
・筋トレをする(僧帽筋や胸鎖乳突筋といった筋肉を中心に)
こんな感じですね。これに加えて、症状を緩和するために薬や湿布を使うこともあります。NSAIDsといわれる非ステロイド性消炎鎮痛剤(ロキソニンなど)が代表的です。
これに加えて忘れがちなのが、ストレス(メンタルヘルス)のコントロールです。心理的な要因で肩コリや腰痛が起こるということはよくあります。適度にリラックスする時間をとり、適度な睡眠をとり、ストレスマネジメントを心がけることが重要です。
その1つの方法として、マインドフルネスも肩コリの緩和に有効である可能性があります(参考:Zeidanら. Mindfulness meditation-related pain relief: Evidence for unique brain mechanisms in the regulation of pain)。
少し専門的なお話をすると、マインドフルネスの中にもいくつかの種類があります。痛みの緩和に特に有効な可能性があるのは、FA(focussed attention; 呼吸や体の一部に意識を向ける手法)ではなく、OM(open monitoring; 周りの刺激に対して解釈を加えずあるがままに観察する手法)であるといわれています。まさにマインドフルネスの根幹にある思想です。
最近はマインドフルネスがブームになり瞑想の本を書いている人も沢山みるようになりましたが、一部の書籍は一面的なもの(十分な理論を反映していないもの)になってしまっています。マインドフルネスは多くの人が思っている以上に深く、価値のあるものです。ご興味のある方は是非1on1レッスンで学びましょう。
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さて少し脱線しましたが、肩コリは「身体の原因(筋肉の強張り)」「心の原因(ストレス)」で起こり、その根本には「社会的原因(長時間のパソコン作業や職場の人間関係)」があったりします。
肩コリは医学的に明確な対処法があるわけではありません。病院に行っても、「見逃してはいけない肩の痛み」を検査で否定し、対症療法を行うことしかできません。
自分にとってストレスになっている環境や生活習慣がないか、今一度見直してみてくださいね。病院に行くほどじゃないけど・・・という心配なことや相談したいことがあれば、お気軽にウェルネスのケアチームまで。
https://wellness.jp
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