4.12 電気、ガス、水道の最終設営作業

 内装も完了して、素材もできた。

プロの方々が続々と我が家に集まった。電気工事のサトルさんとサポートメンバーの方、大工のイチローさん親子、そして水道工事のジュンさんが到着した。
ジュンさんは、我が家に入るなり、

「うっわー、キレイにできてるわー。」

と褒めてくださったのが、めちゃくちゃ嬉しかった。ミズキさんもそれに続く。
「いやー、よくがんばったねー。どうするんかなとちょっと心配だったんだけど、お見事お見事。トイレは......壁紙貼ったんやね!」

カナメ「そうなんですよ。色々とやってみたんですけど、最終的にやっぱりどうにもならなくなっちゃって。」

私「パテ塗ってサンディングして壁紙を貼ることは貼ったんですが、ちょっとタイルの形が表に出ちゃって。サンディングが足りなかったんですかね。」

ミズキさん「いや、これはプロがやってもどうしても映る。これは仕方がない。いやいや、がんばったねー。」

久しぶりに会ったお父さんに学校で描いた絵を「見て見てー」とねだる子供のように、あれこれとミズキさんに苦労話を展開しながら、大笑いした。

いい日だった。

そこから数日間は、プロの仕事に任せるわけだが、意外と私たちもバタバタと忙しかった。

まず、電気工事については、最終的な電気の配線(位置)についての確認作業をする必要があった。天井をぶち抜いているので、電気の配線は一部、見えるところにある。それをステンレスの化粧パイプで隠すのだが、その経路について確認したり、天井にプロジェクターをつける予定なので、その位置を伝えたり。

電気製品が続々と配送されるので、それを受け取り、プロの手に渡したり、時には足りない備品を買いに、ホームセンターに走ったり。

一旦設置してみたけど、突然思いついて追加をお願いしたり、とバタバタしたこともあった。

バタバタしたものは、キッチンの水栓と洗面所の水栓に浄水器を付けたくなったからである。ミズキさんとの話で、我が家くらいのビルの場合は、屋上に給水タンクが設置されているのだが、特に夏場になると、藻が発生してかなり水質が悪くなると聞いたからだ。高額な据え置きの浄水器を設置することも考えたのだが、最近は、水栓に直接つけるタイプでも、そこそこの浄水効果が得られると聞いて、それを採用することにした。ところが、IKEAのキッチン用に買った水栓には、日本の浄水器は取り付けられないということで、急遽、もう一つの水栓をつけることにしたのだ。

キッチンは、ジュンさんがホールソーでささっと穴を開けて、私がバタバタとホームセンターで買ってきた水栓を取り付けてくださった。

が、我が家のノーリツの洗面台は、陶器製で穴が開けられない。そのため、ジュンさんが後日、洗面台の横から給水パイプを出して、洗面台の横に設置してくださることになった。

ジュンさんには、本当にお世話になったのだが、意外と苦戦されていたのが、IKEAのキッチンの設営。これね。

本体の組み立て自体は私がやっていたので、ジュンさんの作業としては、そこに水栓を設置して、給排水の配管をつなげるだけだと思ったのだが、意外と手強いらしい。この単純な仕組みのキッチンに、トラップがあるとは思えないのだが。

それでも、設営時には、当該製品のマニュアルを読みながら、確認しながら作業を進めるそうだ。

ジュンさんにとって、外国製のキッチンを設営したのは、彼の長いエンジニア人生でも初めてだったらしい。国内のものなら大体、方法は分かるのだが、マニュアルからして違う。

ジュンさんは戸惑いながら言った。

「いや、色々とね、考えながらやってるんやけど、どうもね、勝手がわからんのでね。これでええと思うんやけど。まぁ勝手にやらしてもらうね。」

ジュンさんは、めっちゃくちゃ仕事のクオリティが高い人でご自分に厳しい方だ。そしてそのために引っ張りだこ。忙しいのに手を抜かない。仕事人の鏡の様な方だ。そしてめちゃくちゃ謙虚でらっしゃる。私も見習わねばだ。

カナメが言う。

「あの、まだ決まってないんですけど、ここに食洗機を置こうと思ってるんですよ。その場合は、その時に工事をお願いすればいいんですかね。それとも、今のうちに事前にやっておける部分もあったりします?」

ジュンさん「え、ここに食洗機。なるほどね。それやったらね、今からここに給水の分岐をとっといて、排水をここに取り込めるようにしとったらええかな。やっとくね。」

即決、である。仕事できる人って本当に尊敬する。

私「すみません、ここまで作業してくださっていて。もっと早くに申し上げた方がよかったんですよね。」

ジュンさん「いやいや、そんなん、今やったらなんとでもできるからね。やっとくやっとく。」

まじか。

私自身は、割と段取り重視するタイプなので、クライアントさんから後付けで追加依頼が来ると、「もっと早く言ってくれよー」と思ったりするんだけど。
でもミズキさんによると、現場ってそういうことの連続らしいので、この程度でひるむ方たちではないのだろう。本当にありがたい。

ところで、ミズキさんだが。

ミズキさんは現場監督だから、途中で色々と問題が発生すると、その対応を考えて指示を出す。特に問題がなければ、彼に作業はない。カナメはミズキさんとお話するのが大好きだから、彼に色々と話しかけていた。

ミズキさんは、あちこちに放置していた、IKEAの組み立てマニュアルをのぞき込んで唸っていた。

「やっぱり、あっちのモノは違うね。言葉が書いてなくてイラストだけで、こんなに分かりやすくなるんやね。なるほど、この作業は一人ではしないでください、という意味か。こっちは表と裏を間違えないようにってことか。すごいね。うーん。こういう書き方もあるのか。」

ミズキさん、70歳代なんだけど、本当に感覚がお若いし、常に学ぶ姿勢が見える。そしてIKEAのキッチンにいたくご興味を持たれたようで。

私は熱弁をふるう。

「今回は、ガスコンロをつけなかったじゃないですか。で、私はIH調理機(*7)が一つあればいいので、ポータブルのものを買ったんです。なので、使わない時にはしまっておけるので、この小さな作業台でも十分作業できちゃうんですよね。」

ミズキさん「いや、最初ね。あんまりキッチンは大きくなくていいと言っていて、本当かなぁと。疑っていたわけではないけど、どういうイメージなのか、わからなかったんだよね。なるほど、こういうキッチンがあるんだね。たしかに、必要なものは全部あるし、この家に合ってるね。コンクリートでも違和感ないし。いやぁ、勉強になるわ。」

と言いながら、手元のスマホで写真を撮られた。

ミズキさんにとっても、写真撮りたいくらい珍しいキッチンだったのかな、と思うと嬉しかった。

そして、部屋に6個も散らばっているKALLAXについても、興味をひかれたようだ。

KALLAXってこれね。サイズは色々とある。我が家は全て黒に統一。

こちらはカナメが熱弁。

「これをね、こう重ねて、壁全体に本棚を作る予定なんですよ。で、この四角い枠にちょうど合うオプションもあってですね......」

と、ミズキさんに見せる。ミズキさん、なるほどと言いたげに、めっちゃうなずいてる!!

ちなみに、オプションというのは、こういうの。

DRÖNA ドローナ

FLARRA フラッラ

GNABBAS グナッパス

フレームには後ろの板がついていないので、壁の状態は丸見えになる。コンクリートのままでもいいのだが、これをおくことで、隠れる。壁の状態がよくない部分も多少はあるのだが、これで相当隠れる。カナメは本当によく考えてるわー。

ガスについては、壁紙を貼った後にガスコンセントをつけるだけだった様で、すぐに作業は終わった。

電気工事が一番大変だったように思う。

まず数人がかりでエアコンの設置を行う。これだけで一日仕事。リビングのエアコンは天井から吊るすタイプで、かつ丸見えなので、配管もすべて黒のテープで仕上げてくださった。こういうのも私たちがお願いしたわけではなく、内装に合うように黒をセレクトしてくださったので(っていうか、エアコン自体が黒だからかな)、違和感なく仕上がっていた。

換気扇のチューブもメタリックなシルバーで違和感なし。コンクリートに直接つけるコンセント、見える部分のケーブルなども、ステンレス素材。私たちは何も言ってないけど、完璧にそれっぽく仕上がる。

ちょっとチャラい雰囲気の漂うサトルさんは、いい調子で無駄話しながら作業を進める。チャラいだけあって、イマドキの感覚に合うように、カッコよく仕上げてくださった。みなさん70歳代。うそやろ、って感じである。

私が眉間にしわ寄せてオーダーしたライティングレールも、過不足なくバッチリと調達できていた様で、安心した。

どんどんと出来上がっていく自分たちの部屋を見ながら、胸にぐっとこみ上げてくるものがあった。

私たち自身も、今まで見たことがないような空間が、今ここにある。

残りの作業も気を緩めずに頑張らねば!


(*7)ちなみに買ったのは、このIHコンロ。

TILLREDA ティルレーダ

IKEAじゃなくても、IHコンロなんて各社出しているし、もっと安くて、もっとコンパクトなものもあるんだけどね.......。

これ、意外と大きいのよ。でも、これを買った理由が。

このIHコンロ、吊り下げるための金具がついてるのだ。その金具にコードも巻き付けられる。巻き付けた状態で、吊るせる。これ、めっちゃくちゃポイント高い。ポータブルコンロを買っても、収納場所がなければ邪魔なんだけど、なんといっても我が家のキッチンは、IKEAのSUNNERSTAで、引っ掛ける場所ならたくさんある。つまりキッチンにかけておける。使う時は下ろして、使わない時は吊り下げて、がすぐにできる。これだけで使い勝手がかなり違う。

吊り下げる場所がある方には、超絶おすすめです。


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