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1枚の名刺に詰め込まれた、ものづくり精神。

みなさん、「名刺」って持っていますか?

最近ではオンライン上で、“データ名刺”を交換する、なんてことも当たり前になってきましたが・・・。

紙の名刺には、色や手触り、形、選ぶ書体など、“人となり”を表しているように感じて、やはり魅力があります。

GRAPHは印刷会社として、さまざまな名刺のものづくりに関わってきました。今回はその一例をご紹介します!

印刷というより、もはやプロダクトです


「ロゴを広める」ためのステッカーと、その台紙としての名刺を

ご紹介するのは、Neruのアートディレクター、新井俊樹さんの名刺です。

Neru名刺

▲株式会社Neru(https://ne-ru.com/)はアートディレクションや、各種サービスのUXUIのデザインを手がけています。


新井さんはもともと、「ロゴを広める」という考えのもと、 Neruのロゴを制作。ロゴをステッカーにして配っていたところ、いろんな方がPCに貼ってくれたりしていました。

また、「名刺よりもSNS情報を交換したほうがてっとり早いのでは」ということも実感しており、「もはや名刺はあまり意味をもたないのではないか。配るならステッカーのほうが効果的だ」と考えていたそう。

しかし、せっかくデザイナーとして独立したこともあり、しっかりと印象に残すツールとして仕上げるのもいいかもしれない・・・・・・

そこで考えついたのが、「ステッカー付き名刺」だったのです。

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▲このように、名刺からステッカーを取り外すことができます。


名刺自体がステッカーになってるアイデアもあったそうですが、そうすると剥がした後にロゴが残らなくなるため、このような形になりました。

さて、それではこの名刺がどのようにしてつくられているかを見ていきましょう!


特殊加工で、名刺とステッカーを一体化


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ステッカーをセットするため、名刺の2箇所に、切り込みが入っています。

ステッカーの左上と右下を、この切り込みに差し込んで、名刺に固定するのです。

文字要素を印刷した後、名刺サイズにカットし、そこから1枚1枚に対して加工をしていきます。


まずは、ステッカーの外枠の形にデボス(凹ませる)加工

続いて、ステッカーを外した後もロゴが残るように、ロゴをエンボス(出っ張らせる)加工

初回校正では、その状態で切り込みを入れて、ステッカーをセットしてみました。

しかし!ひとつ問題が。


案件を担当したPM(プロジェクトマネージャー)の高島功さんによると、

高島:「初回校正では、思いのほか、ステッカーが浮いてしまったんです。浮きやすいということは、外れやすいということにもなってしまいます。

やはりぴったりと、名刺と一体化するように平面上に収まってほしかったので、ステッカーの厚みや、切り込みの形を変えるなど、さまざまな方法を検証しました。

Neruさんでステッカーを発注されていた会社にお電話して聞いてみたり、GRAPH本社工場の職人さんと一緒にアイデアを出し合いました」


そして最終的に成功したのが、もうひとつ工程を増やして、切り込み付近にもう一度エンボス加工をする、という方法でした。

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▲こんな風に、「デボス→エンボス→エンボス→切り込み」と、特殊加工てんこ盛りに!


ステッカーを差し込むための切り込み部分を、エンボス加工で少し浮かせてあるのです。こうすると、ステッカーが反らずに、ぴったりと収まるのです。

高島:「2箇所を浮かせたあと、正確な位置に切り込みを入れなければならないので、かなり高い技術が必要です。

GRAPH本社の職人さんも、最初は『切り込みの位置がずれてしまうと思う』と言っていたほどで、難しい加工なのですが、長年の経験を生かして、ずれることなくバシっと決めてくれました」


“主役”のステッカーも、箔押しで存在感をプラス

さて、台紙となる名刺が完成したところで、“主役”であるステッカーにも、さらにひと加工してあります。

印刷面と用紙面の質感の差を出し、ロゴ・マークの印象を強くするため、光沢感のあるグロスの黒箔で、箔押し加工をしています。

さらに、シールを剥がしやすくするため、背割れ加工も行いました。

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▲ステッカーの枠とロゴは箔押し。斜めから光を当てて撮ってみると、ツヤっとしているのがよくわかります。


結果、個人発注の名刺とは思えない豪華仕様に・・・!

オンラインを経由した「データ名刺」の交換も増えてきた今だからこそ、「逆に振り切ってコストをかけ、印象に残るツールにする」というのは素敵な考えだな、と思いました。

こんなステッカー付きの名刺、いただいたら嬉しいですよね。

「すごい名刺ですね〜」「これ、こうやって作ったんですよ〜」なんて、コミュニケーションが生まれるきっかけにもなりそうです。


「こんな名刺がつくりたい!」という希望があれば、GRAPHスタッフがきっとお応えしますので、ご相談をお待ちしております。

(過去には、もっと“エグい”(いい意味で)名刺をつくった経験もあるとかないとか・・・)


<お話を聞いた人>

高島 功(たかしま・いさお)

GRAPH東京オフィス/プロジェクトマネージャー

大学でグラフィックデザインを学び、ウェブ制作会社などを経て、2018年GRAPH入社。プロジェクトマネージャーとして、ものづくりやブランディングのプロジェクトに関わる。犬・猫大好き。学生時代には茶道部に所属していたこともあり、お茶にも興味あり。

高島さんへのインタビューはこちらから!


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